5Gネットワーク設計用の3D地図「AW3D®テレコム for 5G」の販売開始 ~グローバルに展開、正確かつ効率的な5G無線ネットワーク設計が可能に~

ニュースリリース/NTTデータ

2019年2月21日

株式会社NTTデータ

株式会社NTTデータ(以下:NTTデータ)は、衛星画像を活用した世界最高精度の「AW3D®全世界デジタル3D地図」注1について、第5世代移動通信システム(以下:5G)の無線ネットワーク設計用に最適化された3D地図「AW3Dテレコム for 5G」の販売を2月21日から開始します。

大容量通信を実現するために高周波数帯が用いられる5Gでは、建物・樹木等による伝搬損失や遮蔽の影響が大きくなることから、無線ネットワーク設計用に従来よりも詳細に構造物の形状や樹木の種類などを表現した高精細な3D地図が求められます。こうした需要に応え、5Gの設計用に最適化した「AW3Dテレコム for 5G」を開発しました。より正確な無線ネットワーク設計を実現することで、現地調査やチューニング作業を削減し、無線ネットワーク整備の促進に貢献します。

今後、NTTデータは国内・海外の通信業界向けに販売を開始し、2022年度末までに50億円の売り上げを目指します。

背景

近年、コンテンツの多様化やIoTの進化等により、移動通信にはさらなる高度化が求められ、5Gの検討が世界的に進められています。2018年には、アメリカで固定網を利用した5Gの商用サービスが、2019年には日本・韓国・イギリス・オーストラリアなどでサービス開始が予定されています。5Gの高周波数帯は、建物、樹木等による伝搬損失や遮蔽の影響が大きくなることから、基地局やアンテナなどの無線ネットワークの設計において、従来よりも詳細に構造物の形状や樹木の種類などを表現した高精細な3D地図が求められます。

NTTデータは、これまで通信業界向けに3G/4Gなどの無線ネットワーク設計する際のシミュレーション用3D地図を広く提供してきた知見を生かし、今回5G向けの製品を開発することにしました。

概要

「AW3Dテレコム for 5G」は、携帯キャリア、ネットワーク機器ベンダー、IoT機器ベンダーなど、5Gの無線ネットワーク設計者向けに最適化した製品です。

本製品は、建物・人工構造物、森林・樹木などの植生、橋梁などの情報をベクター形式注2で表現した3Dポリゴンデータ、および1~2m解像度のラスター形式注3の3D地形データ(数値標高モデル)注4からなる3D地図パッケージで、標準的な無線ネットワークシミュレーションソフトに読み込ませて使用することが可能です。

同一地点で数十枚以上の衛星画像を同時に処理する「マルチビュー画像処理」、人工知能(AI)を活用した画像解析などの衛星画像処理技術を駆使し、従来よりも細かな建物や植生の抽出を実現しました。これにより、ビル屋上にある構造物を詳細に表現したり、街路樹を一本単位で表現したりすることが可能になり、より正確な無線ネットワークシミュレーションを行うことが可能になります。

「AW3Dテレコム for 5G」に含まれるデータ

3Dポリゴンデータ建物/植生/橋梁物体の形状・高さをベクター形式で表現したもの
3D地形データ
(数値標高モデル)
Digital Land Use (DLU)土地利用分類図。シミュレーションの際、電波の伝搬/吸収などの解析のために使われる
Digital Height Model (DHM)建物などの高さの情報をラスター形式で表現したもの
Digital Terrain Model (DTM)建物などを含まない地面の高さを表す数値標高モデル

 

図:AW3Dテレコム for 5Gのイメージ

「AW3Dテレコム for 5G」の仕様

コンテンツ解像度水平精度
(RMSE)
高さ精度
(RMSE)
データ形式提供エリア最小購入面積
3Dポリゴンデータ-2m1-2mTAB、SHP全世界(5Gが展開される全エリア。都市部以外も含む)25km2
3D地形データ1m/2mBIL、MRR、BIN
背景用デジタル地図-2.5m~-SHP形式など

※主な対応ソフト、Atoll(Forsk社)、Planet(InfoVista社)、ASSET(TEOCO社)

今後について

今後、IoT、自動運転、ドローン、VR等、5Gが活用される分野に提供を拡大していく予定です。また、各分野の業務アプリケーションと連携したサービス提供を進め、地理空間情報の利用拡大、市場創出に寄与していきます。

注釈

  • 注1デジタル3D地図:地表の3次元座標値(水平位置と高さ)が記録されたデータのことです。高さを示す数値標高モデル(Digital Elevation Model, DEM)と、水平位置を示す正射投影(オルソ補正)画像の2種類のデータから構成されます。正射投影画像とは上空から撮影された画像の地形に伴うゆがみを除去し、正しい位置情報を付与した画像です。
  • 注2ベクター形式:コンピュータグラフィックスや地図の分野において、物体を「図形データ」を用いて表現した形式です。
  • 注3ラスター形式:コンピュータグラフィックスや地図の分野において、物体を「画像データ」を用いて表現した形式です。
  • 注4数値標高モデル(Digital Elevation Model, DEM):地表面の地形のデジタル表現で、ある格子点間隔ごとの高さの値をデジタル化したものです。解像度はデータの精細さの尺度です。5m解像度は5mの格子間隔で高さの値を記録していることを意味します。なお、これまで全世界規模で整備された地図には、米国が2000年にスペースシャトルを用いて観測したデータによる90mおよび30m解像度の数値標高モデル(2003年に第一版公開)、米国と日本が共同で2000年から観測した衛星画像による30m解像度の数値標高モデル(2009年に第一版公開)があります。
  • 「AW3D」は、株式会社NTTデータと一般財団法人リモート・センシング技術センターの登録商標です。
  • その他の商品名、会社名、団体名は、各社の商標または登録商標です。

本件に関するお問い合わせ先

報道関係のお問い合わせ先

株式会社NTTデータ
広報部
黒澤
TEL:03-5546-8051

製品・サービスに関するお問い合わせ先

株式会社NTTデータ
社会基盤ソリューション事業本部
ソーシャルイノベーション事業部
第一営業担当
篠原、白石、エルフィ
TEL:050-5546-2507

参考

AW3Dについて

「AW3D全世界デジタル3D地図」は、NTTデータとRESTECにより、世界で初めて5m解像度の数値標高モデル(DEM)で世界中の陸地の起伏を表現する3D地図として2014年2月にサービス提供を開始しました。JAXAの陸域観測技術衛星「だいち(ALOS:エイロス)」によって撮影された約300万枚の衛星画像を用いて、RESTECと共同で開発・販売しています。2015年5月からは、都市計画等の分野において利用を広げるために米国の民間衛星会社DigitalGlobeの衛星画像を活用した高精細版3D地図の提供を開始しました。

これにより最高0.5m解像度を実現し、都市エリアを中心とした「建築物」レベルの細かな起伏の表現が可能となりました。

これまでにAW3Dは、世界115の国と地域に導入され、社会および経済へ貢献しています。

イベント出展のお知らせ

2019年2月25日(月)から2月28日(木)まで、スペイン、バルセロナで行われる「MWC2019」に「AW3Dテレコム for 5G」を出展します。

NTTグループがグローバルに展開するAI、IoTなどを活用したデジタルトランスフォーメーションの代表的・先端的な事例の1つとして、Hall3のブース(3D31)で紹介・説明を行います。

注釈

  • 陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS, エイロス):2006年1月から2011年5月まで運用された日本の地球観測衛星で、高精細な全世界観測を実施し、地図作成・更新、災害状況把握、地域環境観測等に貢献しました。本事業では運用期間中に撮影された約650万枚の画像のうち、パンクロマチック立体視センサー(PRISM, プリズム)が撮影した被雲が少ない約300万枚を活用しています。