大手損保企業に「データの民主化」を通した事業変革を
データ活用分野における専門組織としてコンサルティングからソリューション提供、データ分析と管理業務代行、運用までをトータルに支援するD&I事業部。いわゆるIT下請けではなく、先端技術の調査や検証、何より顧客への提言を行いながら、デジタルサクセス®を提供することを命題としています。
「お客様の目指す全社データ分析基盤の構想が実現すれば、新しい仕組みの保険商品を作ることが可能になります。
例えば、『安全運転連動型保険』。これは自動車の急ブレーキや急ハンドルのデータを収集してAIモデルを作ることで、運転内容によって保険料を変動させるものです。
こういった保険商品を通して、安全運転という行動の変化を促すことにもつながります。
データマネジメントツールの導入によって「データの民主化」を推進し、データ加工やAI/BIでの分析がセルフサービス化されれば、分析がより活発になり、新商品開発をはじめとするビジネス活用への可能性も広がります」
顧客にとっては今後の損保事業そのものを左右するプロジェクトですが、一言でデータ活用といっても、業界大手の顧客が蓄積してきたデータは膨大。さまざまなシステムに格納されたあらゆるデータを統合し、活用できるデータ分析基盤を作るのは生半可なことではありません。
前例のない規模のプロジェクトにあたって顧客が求めたのは、リリースされたばかりで日本での導入実績がなかったインフォマティカ社のデータマネジメントソリューションの導入でした。もともと最先端のテクノロジーは海外を中心に動いていると感じていた齋藤は、入社2年目にInformatica製品の研修を受講済。先端技術であるデータ分析基盤構築の価値の高まりを肌で感じていたこともあって、同社製品をはじめデータマネジメントに関する知見を深めており、第一人者として社内で一目置かれる存在だったのです。
Informaticaとは
エンタープライズデータ管理のグローバルリーダーであるインフォマティカ社のデータ統合ソリューション。定常的にデータを収集・加工し供給するデータマネジメントを実現し、データサイエンティストへのデータ提供スピードとガバナンスを高めることが可能。NTTデータはインフォマティカの販売パートナーとして、あらゆるデータの管理・統合・利活用を実現する情報連携基盤ソリューションを提供しています。
海外のトライ&エラー文化を乗り越え、大手企業へ導入
「お客様が目指していたのは、全社が蓄積してきたあらゆるデータを集め、社員が誰でもアクセスできるデータ分析基盤を作るという大規模な構想です。金融機関のデータを扱う以上、セキュリティ要件を満たしガバナンスを立てていくことができるデータマネジメント製品が求められました。
また、対象となるのは顧客・契約データや事故のデータ、自然災害の記録などの構造化データだけでなく、自動車のセンサーデータやドライブレコーダーの動画など非構造化データも含まれ、総量は数PB(ペタバイト)にも上ります。
これらを探しやすく、活用しやすい状態にするためには、豊富な機能を持つインフォマティカ社のデータカタログ(EDC)やデータプレパレーション(EDP)の機能が必須でした」
当時、Infomatica EDC/EDPは日本に有識者がおらず「海外にいる開発者しかインストールできない」とも言われていました。齋藤は彼らと密に連携をとることでインストールに成功したものの、想定外のエラーが発生し、それらのトラブル解消に追われることもあったといいます。
「Informaticaの品質は問題ないものの、一般的な海外ベンダー、特にユニコーン企業はトライ&エラーの文化です。しかし、それをそのまま今回のプロジェクトに当てはめるのは正しい判断ではないと考えました。
我々がベンダーとの折衝と技術検証を行い、不具合に対してはオンサイトに駆け付けるなどの素早い対応や明確な状況説明などを心がけていました」
きわめてスムーズな導入とはならなかったものの、実際にベンダーとやり取りを行う齋藤のアクションを見た顧客からは、事後対応も含めた評価と信頼を得ることにつながりました。
「私たちは顧客に言われたことを進める下請けではなく、お客様の目標に向かって技術面でサポートを行うパートナーです。海外ベンダーも日本国内でのシェアを伸ばしたいと考えていますが、大手企業への導入には大きなハードルがあり、常にフィードバックを求めています。私たちが間に立つことでシステム導入を成功させたことは、まさにシステムインテグレーターとしての本来の役割を果たせたと感じています」
このようなベンダーとの取り組みはインフォマティカだけではありません。アマゾン ウェブ サービス(AWS)社とは、Amazon AthenaやAmazon EMRなどのアナリティクスサービスを中心に、AWSと定期的な製品改善に向けたディスカッションを行い、現場の生の声をフィードバックしています。日本企業が求める機能を提案し、実装にもつなげることで、ベンダーとWin-Winの関係を築き続けています。
顧客の事業変革に寄り添い、「ユニコーン」も連れてくる
そうして得られた信用を背景に、齋藤は同プロジェクトのプロジェクトリーダーに抜擢。AWSなどのインフラ領域や分析領域も担当するようになり、蓄積データの拡充やリソースの拡張、分析環境の高度化、システムの規模拡大などを通して、さらなるデータ分析基盤の整備と顧客の事業変革に尽力しています。
「データ活用にはゴールはなく、また正解もありません。データ分析基盤は常に規模を拡張し、どんなデータでも扱うことができるよう、より柔軟で使いやすいものにしていく必要があります」
さらに現在進めているのは、世界的な評価が高まる「ユニコーン企業」であるDatabricks、Snowflakeの最先端技術を用いた、データ分析基盤の次期アーキテクチャの顧客提案です。
Databricksとは
データブリックス社が提供する、機械学習をはじめとしたビッグデータを扱うための統合データ分析基盤であるレイクハウス・プラットフォーム。データレイクとデータウェアハウスの利点を組み合わせた機能を持ち、分析、データサイエンス、機械学習を統合するSaaSです。
Snowflakeとは
スノーフレーク社が提供するクラウド型の次世代データウェアハウスサービス。データをクラウド上で一元管理することで、スケーラビリティやパフォーマンスに長け、誰もがどこからでもアクセスと意思決定を行えるデータ分析基盤の構築を実現します。
特に2021年にNTTデータがパートナー契約を結んだデータブリックス社は、齋藤が以前から注目してきた企業であり、組織長に進言してベンダーへの調査とやり取り、技術検証を重ねてきました。個人としてもDatabricksのChampions programを修了し、日本に4人しかいない認定を取得しています。
「これまでのデータ分析基盤はAWS上にIaaSで構築していました。Databricksのような専門的なSaaSを利用することで、より高度な機能提供やコスト軽量化ができるメリットがあります。機械学習機能を活用したモデルのトレーニングとデプロイ、モデル管理などのMLOpsの導入が可能になり、かつサーバーレスなので、データの大小や構造化・非構造化に関わらず処理ができるのも利点です」
データは手段でしかない。新しいビジネスを作る力を磨いていく
最先端の技術についても常に検証を行い、導入にあたってのメリットを調査、顧客の構想実現に向けて提案を行うことができるのが、D&I事業部の魅力だと齋藤は話します。
社内にはAWSに触れられる自習環境が提供されるなど、盤石なソリューションを武器とする一方、さまざまなテクノロジーパートナーの可能性を検証し、顧客に最適な提案を行うことができるのが強みです。
「今後も先端技術を扱うさまざまな企業が台頭してくる中で、SIの立場で検証を行い、最適なソリューションをお客様に提案するのが、私たちの強みでありミッションです。
D&I事業部の高い技術力があるからこそ、最先端の技術を目利きし、お客様への最適な提案が実現できていると思います」
現在、齋藤は最先端技術の検証と顧客への提案を行いながら、さらにデータサイエンスやコンサルティングの知見も身に付けようとしています。社内のスペシャリストの力も借りながら目指しているのは、技術検証に留まらず顧客の事業変革に向けた本質的な提案をしていくことです。
「ITは、問題を解決しお客様のビジネスをより良くするための手段でしかありません。データ分析基盤も同じで、それを活用するデータサイエンスとビジネスを通してこそお客様の課題解決につながります。
そのためにITストラテジストやディープラーニング検定の資格を取得してきましたが、会社が学習環境や業務に活かす機会を提供してくれるので、モチベーションにつながっていますね。ITやデータ基盤という源泉を身に付けた上で、新しいビジネスを作る力を磨いていきたいと思っています」
【参考】Data&Intelligence事業部とは
“データサイエンティスト300名体制”で顧客へのAI・データ活用の支援を行ってきたAI&IoT事業部を前身とし、2021年にData&Intelligence事業部に名称を変更しました。顧客へデータを活用したデジタルサクセス®を提供することを命題に、企業のデータ活用分野におけるコンサルティングからソリューション提供、データ分析/管理業務代行、運用までをトータルに支援しています。
※Amazon Web Services、AWSは、米国その他の諸国における、Amazon.com, Inc.またはその関連会社の商標です