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“SIという家業”を拡張し、お客様のビジネス変革を支えるパートナーへ

交通観光統括部、エンターテイメント統括部、メディア統括部という3つの部署で構成されているスマートライフシステム事業部は、システム開発を通して幅広い業界のお客様と深い信頼関係を育み、数多くの実績を築いてきました。コロナ禍においてお客様が大きな変化にさらされるなか、当事業部でも、新たな進化を目指した変革が始まっています。キーワードは「拡張」と「実行」。この成長戦略について、事業部長の西田淳が語ります。

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SIという家業をただ守るのではなく、持続可能なビジネスモデルに変革する

スマートライフシステム事業部の最大の特徴は、BtoC領域の多種多様なマーケットを舞台にしている点です。実際、交通観光分野の主要顧客は鉄道会社や旅行代理店エンターテイメント分野アミューズメント企業や公営競技を運営する地方公共団体メディア分野テレビ局や広告代理店と向き合う業界・業種は大きく異なります。一見するとバラバラにも感じられますが、西田は「2つの共通点がある」と言います。

ひとつは、すべてのお客様がリアルな場所・空間・体験といった『リアルアセット』を軸にビジネスを展開されていること。そしてもうひとつが、事業の主軸がSI(=システムインテグレーション)であることです。

SIはいわばNTTデータの家業です。数多のプロジェクトを通して、各業界を代表する大手企業と長期的かつ深い関係を構築してきた実績があります。その中で培ってきた開発力やQCDを担保する底力、あるいはお客様に対してのコミットメントの高さや顧客理解の深さというものは、私たちの大きな強みだと考えています。

しかし大事な家業と言えど、守り続けるだけではこの先ビジネスは難しくなっていくでしょう。私はむしろ、SIを中軸に据えながらも、いかに持続可能で成長性に富んだビジネスモデルへと革新するかが重要だと考えています。

スマートライフシステム事業部は、コロナ禍ではあるもののお客様から高い評価をいただき、売上も好調に推移しています。しかし業務フローの見直しや生産効率の改善を進めながらも、従来型の”人に依存するSI”には少なからず労働集約型ビジネスの側面があり、大規模プロジェクトが重なれば現場の社員が疲弊してしまうリスクをはらんでいます。

お客様の事業やサービスの構想段階から参画し、システム構築・運用後の事業オペレーションの領域までエンドツーエンドで手掛けることでビジネス領域を拡張すること。そして、自社サービスの磨き上げによって人だけに依存しないサービスのポートフォリオを育てていくことも重要な戦略の一つだと西田は言います。

お客様が向き合うマーケットは常に変化し続けています。私たちはその変化を追随するだけでなく、半歩先、一歩先を先導する存在であるべきだ思っています。

従来のシステム開発では重要要件の多くがお客様によって決定されます。しかし、これからは私たちがお客様のビジネスの未来を構想するところからご支援し、プロジェクトを主導できるようになることが求められています。

一方で、当社のいちメンバーに対して「お客様に未来のビジネス構想を提言しなさい」と言うだけでは、日本を代表する企業群の主力事業を変革することは難しいでしょう。そこで私が各団体・企業のトップの方と直接お会いして構想をお話しする機会をつくるなど、現場のメンバーに対してこのような機会をできるだけたくさん提供し、ビジネスパーソンとして成長を促すことを私自身の重要なテーマにしています。

コロナ禍が生んだ社会変化が、お客様の事業変革のヒントに

新型コロナウィルスの流行によって、社会全体が変化を余儀なくされる中、各マーケット・お客様は様々な形で影響を受けています。

例えばエンターテイメント領域の公営競技は、コロナ禍の影響を受けオンライン投票が活況になりました。ITへの投資意欲も高く、次なる一手として「若年層のファン拡大」を目指した取り組みも始まっています。

公営競技やパチンコは、もともとファンの高齢化が大きな課題です。そこで、若年層の取り込みをコンセプトに、私たちNTTデータの強みである決済技術を活用したキャッシュレス化事業の新規立ち上げや、DXによるファンマーケティング施策の協同実施を提案しています。

またメディア領域では、自社サービスの拡充に取り組んでいます。当事業部のなかのメディア統括部では以前から、NTT研究所が開発したRMS技術(※1)やFingerPrint技術(※2)を活用し、放送局やコンテンツ配信事業者向けに「MediaSearch+™」という楽曲権利の自動処理ソリューションを展開していました。

(※1)RMS技術
RMS(Robust Media Search)と呼ばれる映像・音・画像・物体などのメディア情報を対象として、信号の歪みや雑音に左右されずにメディアコンテンツを高速に探索・特定する技術

(※2)FingerPrint技術
指紋による人物の特定と同様に、音声や映像から抽出した特徴データ同士を高速に照合することで、音声や映像を特定する技術

近年では、アンチパイラシー技術を用いた海賊版コンテンツの検知サービスの提供も始まりました。このサービスは動画投稿サイト等に不正投稿されたIP(知的財産)コンテンツを自動照合・削除するものです。コロナ禍で大きく成長する動画コンテンツ領域において、IPコンテンツの保護と不正防止によって放送局やクリエイターに貢献しています。

人財交流の取り組みにより、メディア統括部にはNTT研究所からその分野で最先端の知見を持つ技術者が参加しています。RMS技術の応用でどんなサービスが実現可能か、営業メンバーと膝を突き合わせて話し合うなかで、『次は映像制作の手作業プロセスの自動化ソリューションを実現できないか?』など、テクノロジードリブンで新しい発想が生まれつつあります。

コロナ禍によって大打撃を受けた交通観光領域では、抜本的な事業転換の支援を目指しています。

例えば鉄道各社はこれまで、駅周辺や沿線の土地・建物などの資産を活用して事業の多角化を図ってきました。しかし、人流抑制が人々のライフスタイルに変化を与えたことで、「土地」起点から「人」起点の発想へ、事業転換が求められていると西田は語ります。

『グループ全体収益とLTV(ライフタイムバリュー)の最大化』というテーマを設定し、縦割りの事業に横ぐしを通すという事業提案を進めています。簡単に言うと、それぞれの事業でバラバラに管理してきたユーザーデータやポイントサービスを一つのIDで統合し、究極的には事業を横断した経済圏を確立する、という構想です。

こうした経営課題は、例えコロナ禍が存在しなかったとしても、昨今の少子高齢化を思えばいつかはぶつかる壁だったでしょう。統括部のメンバーは、「鉄道業界の将来のためにも、今こそ実現すべき事業」だと捉え、一丸となって取り組んでいます。

社員の成長があって初めて、お客様のビジネスの成長、NTTデータの成長につながる

NTTデータは昔からプロジェクトマネジメント能力の高さを強みにしてきました。しかし、ともすれば”描く戦略の完成度にこだわりすぎて、物事がなかなか前に進まない“と思われる方がいるのではないかと思っています。しかし、私は”実行”こそが重要だと思っています。たとえ60点、70点のアイデアだとしてもまずはお客様と会話をしてみる。その結果が思ったものでなければ、改善すればよいのです。

実行へのモチベーションを高めるために、組織文化の変革も進めています。評価は減点主義から加点主義へとシフトし、年2回開催される事業部キックオフでは、高成果をあげたプロジェクトに加えて結果を問わず新しいチャレンジや良い取り組みを行った社員・チームも事業部長表彰の対象にしました。成功・失敗ではなく、「挑戦」と「実行」そのものを称えるカルチャーを育てていこうとしています。

実は私自身、現・当社社長が本部長の時代に約1.5億円を投資してもらい、自社サービスを立ち上げた経験があるんです。

膨大な顧客データを分析して、お客様のビジネスに活かす、というビッグデータの先駆けようなソリューションだったのですが、お客様に価値あるインサイトを提供できませんでした。そこでリリースから3年で自ら頭を下げて事業を撤退することを決めました。当時、本部長からは『もう少し続けてみないか』と止められましたが、それでも私は撤退の決断を変えませんでした。

何が言いたいかというと、それくらい大きな失敗をしても事業部長になった人間がいるんだと、メンバーにも、これから入社される方にも知っていて欲しいんですよね。

さらに組織改革の一環として、プロジェクトの保守・運用体制の刷新も始まっています。これまでのフローではプロジェクトごとに開発チームから体制縮小し、保守管理チームを構築してきたためサイロ化が課題でした。そこで、今後は複数プロジェクトで維持管理体制を統合し、人財の流動性向上や業務効率化を図っていきます。

個別最適の発想では、システムに精通した人間が保守チームに残るケースが大半です。しかし、そうした人財にこそ、私は次の戦いで活躍して欲しいと考えています。事業やサービスを創出するところで、一緒に戦う社員を増やしたいのです。

もちろん、守りにも攻めにも得手不得手がありますので、適材適所の配置が基本です。その上で、”眠っている攻めの人財のスキル転換”を図っていきたいと思います。

現在、スマートライフシステム事業部では240名以上のメンバーが活躍をしています。西田は、ここに集う240通り以上の個性が成長すれば、自ずと提供価値も進化し、お客様のビジネスの成長、そして当社の成長につながると考えています。そして成長を加速する鍵は、今後迎える新たな仲間にこそある、とも感じています。

私たちは、どのマーケットでもチャレンジしがいのあるお客様基盤を有しています。実績や開発力、それに投資をする体力もあります。私たちにまだ足りないものは、SIの領域を飛び出す柔軟な発想と実行力です。事業部長としてメンバーの成長にはしっかりコミットしますので、テクノロジーで世の中にインパクトをもたらしたいと思っている方と一緒に、新しい挑戦をしていきたいですね。

※掲載記事の内容は、取材当時のものです