大学院でのITの社会実装研究が、自然とNTTデータへの道に
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森田
佐藤さんはファーストキャリアとしてNTTデータを選ばれたわけですが、当時を振り返ってみて、何が一番の決め手だったと思いますか。
Google 佐藤
私は学生時代、販売管理や在庫管理・受注システムのウェブアプリをハードウェアの選定・調達からアプリケーションの設計・開発まで手がけて、世の中に実装していくという産学連携の研究に取り組んでいました。
この経験を通して、技術だけを追求するアカデミックな研究よりも、技術とビジネスをどう組み合わせていくかという点に面白さを感じて、漠然と「このような活動を仕事にしたい」と考えるようになったことがきっかけです。
森田
学生時代から研究を通して「ミニNTTデータ」のような活動をされていたのですね。
Google 佐藤
そうですね。ただ実際に”研究室での活動”と”NTTデータ”が結びついたのは、NTTデータに就職した研究室の先輩に、就職活動の一環でお話を伺う機会をいただいてからなんです。
その時、先輩に「NTTデータでは、研究室でやっていることを、もっと大きなスコープでやれるよ」と言われたことを今でも覚えています。先輩に紹介いただいた、社員の方々がイキイキと働いていたことも印象的でした。
森田
まさに”技術でビジネスを変えていく”という点がNTTデータでできることと一致したわけですね。
お話を伺っていると、技術者でありながらビジネス志向の強さを感じますが、あえて技術とビジネスに分けると、当時はどちらの志向性が強かったのですか?
Google 佐藤
研究室での取り組みがビジネス寄りだったとはいえ、やはり当時の一番の関心は技術でした。学生時代はプログラミングという創造的な行為にどっぷりのめり込んでいて、夜な夜なコードを書いていましたね。ですが、技術を追求しても使いみちがなければ意味がないとも考えていました。
森田
NTTデータに入社される前からユーザ視点を意識されていたのですね。入社後は、研究室の先輩がいた基盤システム事業本部への配属を希望されたと伺いました。
Google 佐藤
はい。当時は技術を追求するキャリアを歩みたいと考えていたことと、尊敬する先輩のいる部署に行きたいという思いがあり、希望の部署に配属していただきました。
ちなみに就活中は、NTTデータを含め、いくつかの会社から「君は営業も向いているのでは」と言われました(笑)。希望を出さなければ違う配属になっていたかもしれませんね。
ゼロスタートのチャレンジを重ねた10年間
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森田
佐藤さんがNTTデータに所属していたのは約10年間。その間のご経歴についても教えていただけますか。
Google 佐藤
NTTデータでのキャリアを振り返ると、本当に会社として前例のない新しい取り組みにたくさん挑戦する機会をいただいたな、と感じています。
最初に配属されたのは、専門的な技術と知見でプロジェクトのトラブルシューティングに特化する「まかせいのう(※)」というプロジェクトでした。当時は立ち上げ期でメンバーが1、2名しかいませんでしたが、「誰もやっていないことを成し遂げたい」「コンピュータの仕組みを深く理解したい」と考えて、自分で希望したことを覚えています。
(※)まかせいのう
NTTデータが担当するプロジェクトに留まらず、発生した性能問題を迅速に解決するチーム。抜きんでた技術力を持つ一流のスペシャリスト集団が現場に駆け付けトラブルシューティングを行う。NTTデータが誇るワールドワイドなサービスとして提供。
森田
トラブルに対処する「まかせいのう」のチームは、いわば当社の「最終兵器」です。当時の私の目から見ても、「まかせいのう」のチームはプレッシャーの強い状況でありながら必ず結果を出す、特別な人たちだという印象でした。
Google 佐藤
NTTデータの優秀な人たちの手に負えない問題が飛び込んでくるわけですから、確かにシビアな環境でしたね(笑)。約1年半という短い期間の間に20プロジェクトほどに携わりましたが、今思えば、追い詰められながらも、優秀な方々に囲まれてストレッチできた本当に良い経験だったと感じています。
例えば、クラウドもコンピュータの上で動いているので、コンピュータやソフトウェアが動作する仕組みを広く、かつ、細かく知れたこと は、クラウドの仕事に関わる今でも役に立っています。また、トラブルの発生している環境でどうすればお客様に安心していただけるかについて、実体験を通して学べたのも大きな糧になっています。
私たちは技術の専門家として火事場に駆けつけていましたが、感じたのはNTTデータの現場の皆さんに対するお客様の信頼です。当然、トラブルが起きているので神経質にならざるを得ない場面ではありますが、営業を始めとするプロジェクトのメンバーがお客様としっかり向き合ってくれたおかげで、私たちは原因の追究に専念できた印象があります。
森田
営業出身の私から見ても、たしかにプロジェクトのメンバーもトラブル対応を「まかせいのう」のチームに丸投げするのではなく、一体感を持って問題解決に取り組んでいた印象がありますね。
また、「まかせいのう」のメンバーに対する営業側からのリスペクトも大きかったと思います。とはいえ、佐藤さんのように新卒でいきなり「まかせいのう」に配属になるのもすごいことですね。
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森田
さて、佐藤さんはその後、システム開発の総合ソリューションである「TERASOLUNA(テラソルナ)」のプロジェクトに異動されたと伺っています。当時の基盤システム事業本部における花形といえるプロジェクトですが、どのような経緯でプロジェクトを移られたのでしょうか。
Google 佐藤
「まかせいのう」のチームが組織再編で別組織に移管されることがきっかけでした。火事場対応にも、ある程度自信が持てるようになったし、何よりも”次の新しいことに挑戦したい”という思いで異動を希望しました。
異動してから最初の大きなプロジェクトは、ITアーキテクトとしてお客様企業に常駐し、フレームワークを導入するプロジェクトでした。すでに数十名が動いているプロジェクトに、当時入社3年目だった私がITアーキテクトとして参加して、お客様の声を間近で聞きながら社内外のさまざまな関係者と調整していくわけです。
当時の統括部長は「大丈夫だ」と送り出してくれましたが(笑)、不安がなかったわけではありませんでした。
森田
佐藤さんらしいエピソードですね。プレッシャーのかかる状況だったと思いますが、どのようにプロジェクトを進められたのですか。
Google 佐藤
お客様の上層部の方や、国内外の複数ベンダーが関わる大規模プロジェクトで、決して簡単ではありませんでした。ただ「お客様のためにも、君のためにもこうした方がいい」といったように、NTTデータの事業組織側の部長をはじめ、様々な方が部門を超えて力を貸してくれたことで乗り越えていくことができました。今振り返ってもNTTデータらしい文化だな、と感じます。
森田
それはNTTデータらしい体験をされていますね。当社が大切にする「Clients First」「Foresight」「Teamwork」の3つのvaluesと呼ばれる価値観がありますが、部門を問わず助け合いながらプロジェクトを進めて行くことは、「Teamwork」そのものだと思います。
その後はNTTデータの生産性向上を目指した、ソフトウェア開発を標準化する「SDワークベンチ」の開発に参画されたと聞いています。
Google 佐藤
はい。”開発の生産性を高めるために何かできないか”という発想を持った少人数のメンバーで立ち上げたプロジェクトでした。
SDワークベンチはOSS(オープンソース・ソフトウェア)を基本としているのですが、当時はまだ国内での情報があまり豊富ではありませんでした。ですから、会社の枠を超えたコミュニティに参加して社外の方と情報交換をしたり、プロダクトをリリースして社内からフィードバックをもらったり、といった活動に取り組んでいました。
森田
コミュニティ活動は、営業活動とはもまったく違う異なるエンジニアらしい世界ですよね。
Google 佐藤
そうですね。OSSという共通点で技術について自由に話せますし、バグを報告したり、修正したりすれば、世の中の多くの人にメリットがあります。コミュニティを通じて世の中が良くなっていくことに、個人的にもやりがいを感じていました。
森田
SDワークベンチは社内向けのプロジェクトであることから、それまでの業務とは少し毛色が違いますが、佐藤さんの志向に合っていたのでしょうか?
Google 佐藤
はい。私は自分が「良い」と思えるものを提供・紹介して、一人でも多くの人が共感してプロアクティブに使ってみようと思ってもらえることに喜びを感じるタイプです。それは今でも変わりませんし、書籍の執筆や講演といった活動にもつながっていると思います。
森田
こうしたゼロスタートの経験を続けてきた結果が、次のプロジェクトでのクラウドとの出会いにつながっていくのですね。
クラウドとの出会い。良いものを広げたいという純粋な想い
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森田
その後はNTTデータ社内において、ソフトウェア開発でクラウドを活用する取り組みを始めたそうですね。佐藤さんとクラウドの本格的な出会いとも言えると思いますが、どのようなことに取り組んでいたのですか?
Google 佐藤
クラウドという言葉を耳にすることが多くなってきた2011年から、クラウドをテーマとしたR&Dのチームに初期メンバーとして参加しました。また、キャリアリセットし、新しい技術分野でのゼロスタートでした(笑)
具体的には2つの軸があり、ひとつはNTTデータ内部で開発時に利用するクラウド環境の構築です。当時は、今よりも数多くのクラウドベンダーがひしめき合っており、NTTデータが自社で環境を構築できるのではないかという議論を発端に活動を開始しました。
もうひとつの取り組みが、世界のクラウドベンダーやソリューションをどうやって使っていくのかをリサーチすることでした。当時はまだクラウドの黎明期で、構築と調査の2つを半分ずつ行っていた形ですね。
その中でも、クラウドを一から作ることは良い経験となりました。リモートで海外のデータセンターを構築し、最終的には現地へ行き、環境構築しました。これはグローバルフットプリントを持っているNTTデータだからこそ、できた経験だったと思います。
森田
佐藤さんのキャリアを伺っていると、改めて自社ながら、いろいろなチャレンジの機会がある会社だなと感じますね(笑)
佐藤さんはNTTデータを卒業後、クラウドベンダーに転職されています。やはり、この時の経験がきっかけになったのでしょうか。
Google 佐藤
もちろん、きっかけのひとつにはなっています。このプロジェクトを通じて、NTTデータでのクラウド活用が進み、複数の国の開発者がそれぞれの国から共同で開発をより進めやすくなり、やがてクラウドは大きなトレンドになるという確信を持ちました。ただ、当時の日本では、まだまだクラウドの利用が広がっていなかったので、これを日本に広げることには大きな意義があると思いました。
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森田
クラウドとの出会い以外でも、NTTデータ在籍時に佐藤さんのキャリア観を決定づけるようなターニングポイントがあれば教えていただけますか?
Google 佐藤
日本で初めてのJenkinsの書籍(『Jenkins実践入門』)を執筆した時です。SDワークベンチでは自動的かつ継続的にシステムを統合してリリースするためにJenkinsを提供していました。Jenkinsというソフトウェアについてだけではなく、初めてJenkinsを使うNTTデータのエンジニアのみなさんがスムーズに利用を開始できるようにドキュメントも提供していました。Jenkinsのファウンダー(創設者)の方がユーザの声として、私達の話を聞きに来てくれました。そこで当時の取り組みを紹介したら、ぜひこのドキュメントを本にしてみませんかというお話をいただいたのです。
出版後はJenkinsのコミュニティも盛り上がって、大きな波になりました。それ以降も、本はいくつか執筆しているのですが、Jenkinsの書籍は3回の改定を経て、10年以上経つ今でも読んでくれている人がいます。
森田
書籍をきっかけに外とのつながりもさらに広がったのですね。
Google 佐藤
はい。私はJenkinsの他にもアジャイル開発やJava、バグトラッキングなどのコミュニティに参加していたのですが、書籍の出版以降はアジャイル開発のコミュニティも活性化しました。そこから NTTデータ社内の別のチームに呼ばれてアジャイル開発の研修を作ったり、クラウドを導入したり。いろいろなことをやって楽しかったですね。
ちなみにJenkinsのコミュニティではイベントのオーガナイザーも務めまして、1000人以上のイベントを私含めて数人で運営したことも想い出に残っています。素晴らしいものを多くの人に知ってほしいという、それだけの気持ちで取り組んでいました。
森田
クラウドとの出会いにも共通するように”自分が良いと思えるものを多くの人に広める”という喜びを知ったこともキャリアの大きな転機になったのですね。
NTTデータで得た経験が、次のチャレンジにつながった
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森田
さて、ここまで佐藤さんのキャリアを振り返ってきましたが、本当にゼロスタートの挑戦ばかりだったように思います。佐藤さんが何度もゼロスタートの挑戦を続けるモチベーションの源泉は、何だと捉えていますか。
Google 佐藤
好奇心の強さと、ひとつのことを長くやっていると飽きる性格が影響しているのかもしれません(笑)。NTTデータは業界をリードする立場だからこそ、先端の技術領域で毎年新しいプロジェクトがいくつも生まれ、私にとっては飽きる暇のない素晴らしい環境でした。
興味があるプロジェクトがあれば自分から加わっていきましたし、SDワークベンチやクラウドのように、在籍時の後半は自分から新しいものを作っていく仕事をしていました。
森田
まさに佐藤さんの取り組みそのものが、NTTデータの新しい方向性を探る取り組みであったと言えると思います。新しい領域に挑む際には、どのようなことを大切にされていたのですか。
Google 佐藤
すべての人の意見や要望を受け入れていては破綻してしまいます。システムインテグレーションにも言えることですが、何が最適な状態かを考えることが大切です。どこで線引きをするか、お客様や社内に対してどのように納得感のある説明をするか。やれることが無限にある状態で、最適な状態から逆算する視点は、NTTデータで養えたと思います。
森田
まさに、NTTデータの強みである”プロジェクトマネジメント”のスキルですね。
Google 佐藤
その通りです。私はNTTデータを卒業して実感しましたが、NTTデータのプロジェクトマネジメント力は本当に突出していると感じます。事前準備やマイルストーンの設定など、私自身も意識していないうちに叩き込まれていたこの能力があったからこそ、前例のないゼロスタートのプロジェクトを力強く前に進めることができたのだと思いますね。
森田
NTTデータに在籍されていた10年間だけでも本当に濃厚なご経験をされていますが、当時はどのようなキャリアを歩みたいとお考えでしたか。
Google 佐藤
実は、それほど明確な軸があったわけではありません。漠然と”やがてはNTTデータ社内で管理職になっていくのだろうな”と思っていました。
一方で私個人としては、書籍の執筆やコミュニティ活動のように、素晴らしいものを世に広める仕事がしたいなと考えてもいました。当時はまだ日本であまり知られていなかったクラウドベンダーから声をかけていただいたこともあり、これを世の中に広めていきたい、外の世界を見てみたいと思い、キャリアチェンジをしました。
森田
佐藤さんがNTTデータを卒業される時、まわりの反応はどうでしたか。
Google 佐藤
みなさん、あたたかく送り出してくれました。当時の本部長 からは「世界で活躍できるエンジニアになってください」という声をかけてもらったのを今でも覚えています。「いつでも戻っておいで」という言葉も後押しになりました(笑)。
だからというわけではありませんが、退職前にやるべき仕事は責任を持って済ませ、来年度の活動提案と承認を頂き、最終出社日までしっかりと仕事をしていきました。
森田
人とのつながりを大事にする佐藤さんらしいエピソードですね。会社を卒業したからといって、つながりがなくなるわけではありませんからね。
Google 佐藤
はい。当時の上司とは今でもお会いする機会があるのですが「あの後は大変だったんだぞ」と茶化されたりもします(笑)。人間関係を大切にすることは、IT業界ではとても大切なことだと思います。狭い世界ですし、会社を卒業しても人生は続いていくわけですから。
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技術を追求したいという想いを持ちながらNTTデータにジョインし、知見や技術を広く世界に発信することの面白さに惹かれていった佐藤氏。後半では、NTTデータを卒業した佐藤氏がどのようなことに取り組んでいるのか、IT業界でキャリアを歩む上でのアドバイスなどについても語っていただく予定です。佐藤氏と森田の対談、後編もぜひご期待ください。
(撮影協力:コンサルティング&ソリューション事業本部)
(書籍紹介)
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[改訂第3版]Jenkins実践入門 ――ビルド・テスト・デプロイを自動化する技術(技術評論社)
和田 貴久(著)、新井 雄介(著)、米沢 弘樹(著)、山岸 啓(著)、岩成 祐樹(著)、川口 耕介(監修)、佐藤 聖規 (著・監修)
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Java逆引きレシピ 第2版(翔泳社)
佐藤 聖規(著)、竹添 直樹(著)、高橋 和也(著)、島本 多可子(著)
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エンタープライズのためのGoogle Cloud クラウドを活用したシステムの構築と運用(翔泳社)
遠山 雄二 (著・監修)、矢口 悟志(著)、小野 友也(著)、渡邊 誠(著)、岩成 祐樹(著)、久保 智夫(著)、村上 大河(著)、星 美鈴(著)、中井 悦司(監修)、佐藤 聖規(監修)