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テクノロジードリブンのコンサルティングとサービスデザインの融合で、これまでにない価値提供を目指す

デジタルテクノロジー推進室は2018年の設立以来、あらゆる企業・機関・団体のDXを支援してきました。事業課題とDXニーズをコンサルティングし、その実現に貢献する「デジタルテクノロジーディレクター®」と、働き方改革をリードする「WorkStyle Invention®」というサービスラインに、2022年からはデザイン思考を活用してサービス創出を可能にするデザインブランド「Tangity®(タンジティ)」が新たに加わりました。テクノロジー起点のコンサルタントとサービスデザインの専門家が共創する独自の環境について、デジタルテクノロジー推進室の部長とTangity®のマネージャーに語ってもらいました。

目次

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顧客と社会の「未来仮説」をもとに、バックキャストの支援を実践

――今、社会はVUCA(ブーカ)と言われる不確実性の高い時代を迎えています。DXパートナーとしてお客様に向き合う中で、ニーズや課題にどのような変化が生まれていますか?

田島

この2~3年で、お客様がIT技術やデジタルテクノロジーに期待することが顕著に変わってきたなと感じています。大きな転機となったのは、やはりコロナ禍の経験でしょう。先の読めない時代になり、多くの企業が「今までの延長で事業を運営するだけではダメだ」と気づきました。そして、「テクノロジーを活用して、ビジネスのあり方そのものを変革したい」という声が高まり、顧客体験の向上や働き方改革などDXニーズの多様化・複雑化が進んできた印象です。

さらにこうした潮流を受けて、お客様の体制にも変化が生まれてきました。以前はビジネス部門が事業プランを検討し、情報システム部門はその後に控えて、リクエストをもとに必要なITシステムを形にするという流れでした。しかし、現在では多くの大手企業がDXを推進する専門部署を立ち上げ、最新のデジタルテクノロジーを起点に新たなビジネスプランを創出するマインドセットへと変わってきています。

――正解がない中で、多くの企業がテクノロジーの活用に可能性を見出しているのですね。では、こうした中でデジタルテクノロジー推進室はどのようなミッションに取り組んでいるのでしょうか?

田島

今年度、私たちの組織では「未来仮説の構想と実現」というミッションを掲げています。昨今、テクノロジーは猛烈な勢いで進化し続けており、企業もそのスピードに対応できなければ時代に置いて行かれてしまいます。しかし、どの技術を活用すべきかの判断は、「どのような未来を目指すのか」というビジョン次第で大きく変わるもの。そこで、未来仮説の構想では現状の課題からフォーキャストでの発想ではなく、お客様と社会の将来を見据えたフォーサイトコンサルティングを重視します。

具体的には、まずお客様が5年10年先にありたい姿をコンサルティングします。そして今の技術だけに縛られず、メタバースやデジタルツイン、センシングなど将来スタンダードとなりうる発展途上のテクノロジーや顧客体験を変える可能性を秘めた先進技術を積極的に活用。顧客の未来像の実現を目指しながら社会実装に取り組んでいきます。このフォーサイト起点のコンサルティング強化は、NTTデータ全体の重要テーマのひとつでもあり、我々はそのロールモデルを築き、全社に広めていくミッションも担っています。

堀江

未来仮説というミッションを実現するためのキーワードが、テクノロジーとデザインの融合だと思っています。私は現在、デザインチーム「Tangity®」のマネージャーを務めていますが、以前はデジタルテクノロジーディレクターとしてコンサルティングに注力し、「いかにDXでビジネス価値を出すのか」に取り組んできました。その中で、テクノロジー起点のアイデアやエンジニアの知識だけではどうしても限界があると感じていました。

特に難しいのが、「有益なテクノロジーをどう活用するか」と、「消費者やユーザーが本当に求めているサービスは何か」という顧客視点の発想とを有機的に繋ぐこと。そこで、大きな効果を発揮するのがサービスデザインのプロセスであり、デザイナーの視点なのです。

田島

Tangity®のデザイナーの一番の特徴は、顧客視点に徹底的にこだわる姿勢。お客様が抱えている本質的なペイン(悩みや不満)やゲイン(目指す付加価値)であるとか、あるいはお客様の先にいるエンドユーザーの体験をどう変えていくかにひたすらフォーカスした上で、解決策をデザインしていきます。

もちろん、デジタルテクノロジーディレクターもお客様に真摯に寄り添うことを第一にしてきましたが、それでもデザイン思考や人間中心設計に関する専門的な知見やノウハウについては、やはりその道のスペシャリストには敵いません。ですから、サービスデザイナーと技術に精通したコンサルタントがひとつの部署に集結したのは非常に大きいですね。

前例がない、だから面白い。社会にインパクトを与える仕事に挑める

――サービスデザイナーの強みとは何なのでしょうか?

田島

一番は技術に縛られないというか、 ITであろうと何であろうと、解決策の手段を問わないところじゃないでしょうか。

堀江

そうですね。実際、サービスデザインのゴールがIT以外に帰結することは珍しくありません。例えば「動画制作会社と協業して映像コンテンツを作りましょう」といった提案に至ったこともあれば、もっとアナログな成果物に辿り着いた経験もあります。自由度が高いおかげで、より広く、深くお客様のビジネス環境を見ることができますし、コンサルタントとデザイナーが連携すればNTTデータが提供するビジネス価値の幅をさらに押し広げることができるのではないかと期待しています。

田島

これまでNTTデータは、お客様をITパートナーとしてご支援してきましたが、昨今では「事業パートナー」としての期待値が非常に高まっています。お客様の事業変革に伴走していくためには、堀江さんが言うようにIT以外の選択肢が増えることは重要だと思いますね。

――すでに実際のプロジェクトでは、テクノロジーとデザインの融合や化学反応は起こっているのでしょうか?

田島

現在の組織体制になってまだ数カ月ですが、現場レベルではコラボレーションが着々と始まっています。例えば、ある公共関連のプロジェクトではTangity®のメンバーとデジタルテクノロジーディレクターの部隊が構想段階から一緒に参画し、アイデア出しに取り組んでいます。デザイン的なアプローチに技術視点が掛け合わさることで、これまでにない発想が生まれるんじゃないかとすごく期待していますし、実際にそういう兆しを感じてもいます。そのあたり、デザイナーサイドとしてはどう捉えていますか?

堀江

それは私も強く感じています。従来のデザイン案件では、いわゆるテクノロジードリブンの発想はほぼなかったので、そこで面白い融合ができるんじゃないかと期待しています。

――それぞれの専門性やノウハウを持ち寄ることで、斬新なアイデアが生み出されるわけですね。

田島

アイデアのその後も大事です。理想を追求して“絵に描いた餅”で終わるのではなく、テクノロジー部隊とデザイナー部隊が連携し、活用する技術の選定や活用方法の整理など、実現性の裏付けがあるロードマップをしっかり設定する。そうしてコンセプトを形にして世の中に実装していくことも、デジタルテクノロジー推進室だからこそできる挑戦だと思いますね。

堀江

アイデアを形にするという点で言いますと、ある金融系の大手企業からお声がけをいただき、今まさに新規ビジネスの開発に取り組んでいます。我々はデザイン思考を活かしてビジネスアイデアの創出に伴走しているんですが、今後コンセプトができあがった後は、プロトタイプ開発や実際にシステムローンチが発生してきます。こうした構想・開発・運用の一連の流れを、ひとつの部署の仲間が一体感を持って進められること、デザインから技術へとバトンを繋いでいけることは非常にやりがいがあります。

田島

デジタルテクノロジーディレクターは、サービスデザインのアプローチ方法をデータ分析に活かせないかと挑戦しています。一例を挙げると、ショッピングセンターの決済データを分析し、効果的なキャンペーン企画を考えるための新たな視座を提供する、という新サービスの企画開発。ここで課題となるのが、データによる定量調査だけではリアルなエンドユーザーの動きを捉えきれないこと。そこでデザイナーに参画してもらい、デザイン思考をもとに、実際にショッピングセンターでユーザーの定性調査を実施しています。データから見える世界と、人間を観察して見える世界の双方からアプローチすることで、データ分析手法の改善に励んでいます。

異なる経験を持った人財が、同じ想いのもとに集う組織に

――他にもデジタルテクノロジー推進室の特徴や強みはありますか?

田島

NTTデータは長年をかけて公共、金融、法人など幅広い領域で信頼と実績を積み重ねてきました。こうした独自の顧客基盤とアセットを有するからこそ、行政と産業界をまたぐようなプロジェクトですとか、「社会を変える」「世の中を変革していく」といったレベルの大規模な支援に携わる機会があります。

さらに自社内にR&D機能を完備している点や、NTTグループ全体で研究開発している先進技術を活用できる点も、テクノロジーサイドとしては大きな魅力ではないでしょうか。例えば最先端の光技術を使って、豊かな社会を創るための構想である「IOWN(アイオン)」など、未来的な技術の価値を社会に届けることや、世の中に実装することも我々が取り組むべきことの一つだと言えますね。

堀江

R&Dもそうですが、他の事業部を見渡せば各領域に特化したスペシャリストがいくらでもいますからね。そうした各事業部の専門家と連携すればビジネスサイドの思考により深く寄り添うことや、新しい価値提供を目指すこともできます。

田島

もともと我々は、デジタルテクノロジー推進室だけですべてを完結しようという発想がまったくないんです。社内外を問わず、「あらゆる分野の人財と共創するためのハブでありたい」というのがこの部署の理念。ビジネス・技術・デザインの専門家を俯瞰してつなぎ合わせ、一緒に世界観を創り上げていくことが重要だと考えていますし、その結果できる世界があると思っています。

――では逆に、現時点で感じている組織課題などはありますか?

堀江

デザイナー側のお話をすると、「未来仮説」というテーマそのものが大きな挑戦になっています。もともとデザインは今の課題に着目し、フォーキャストで考えていくのが一般的です。未来を見定めてバックキャストでデザインをするためには、シナリオプランニングやスペキュラティブデザインといった新しいデザインプロセスの導入が不可欠ですので、そこは今まさに取り組んでいるところです。

田島

私が特に重視しているもので言うと、今のデジタルテクノロジー推進室にない経験だったり、ノウハウを持った人財との出会いが絶対的に必要だと思っています。やはり今までにない経験や視点が組織に加われば加わるほど、全く新しい価値が出てくると思うんですね。

例えば事業会社で働いてきた方ですとか、SIerではない立場でテクノロジーに携わってきた方、あるいはベンチャー企業でキャリアを磨いた方など、多種多様なバックボーンを持った人財が集まり、同じマインドを持ってプロジェクトに取り組むからこそできる可能性というものを追求していきたいです。

――新しい人財とともに、今後挑戦していきたいことは何でしょうか?

田島

先程、共創のハブを目指したいという話をしましたが、今後は「お客様とお客様をつなぐ」ことにもチャレンジしていきたいと考えています。目の前のお客様の事業変革を支援することこそ我々の責務ですが、それだけに留まらず、様々な社会課題をお客様と一緒に解決していきたいからです。そのためにもお客様1社だけでなく、我々デジタルテクノロジー推進室がハブとなって複数社をつなぐことで、日本全体にインパクトを与えられればと思っています。

堀江

Tangity®としても、世の中を変えていく仕事に取り組んでいきたいと思っています。ただし、大事なのはデザイナー一人ひとりが自分の想いを持って取り組むこと。デザイン業務ではお客様やエンドユーザーに集中するあまり、「自分」が消えてしまうことがあります。しかしデザイナー自身が納得できないコンセプトでは、例え世の中に出たとしても、多くの方に受け入れられることはありません。

ですから、今後出会う新しい人財の方々にもぜひ自分なりの想いを持って世の中を変える仕事に挑戦してほしいです。そして、そういう方と一緒にIT技術の会社であるNTTデータの中で、デザインチームの存在やサービスデザインの価値をメジャーにしていければうれしいです。何も特別なスキルやノウハウがなくても構いません。想いに共感してくれる方にこそぜひ入社してもらいたいですね。

※掲載記事の内容は、取材当時のものです