お客様の懐で“内”を知りつつ、常に視点は“外”に置く
デザイン&テクノロジーコンサルティング事業本部のデジタルサクセスコンサルティングユニットは、お客様の課題に合わせてさまざまな先進デジタルツールの選定や導入、運用支援などを一気通貫で担う部署です。固有の業界にスコープするのではなく、ユニット内の各グループが特定のツールやソリューションに特化し、業界横断で価値創出を図ります。この組織で渡辺は現在、Salesforce製品の推進を担うグループに所属しています。
渡辺は2020年から、大手メーカーのお客様に対しSalesforceを用いて社内システムを統合・刷新する案件に参画。ITディレクターとしてお客様の情報システム部門に常駐し、従来のシステムで発生している課題抽出や最適なSalesforce製品の選定、新システムの企画・構想などを進めてきました。
システムの構想段階ではお客様からの要望を必ずしも鵜呑みにせず、先方の業務を客観的に見られる立場から議論することもあります。根本的な課題解決のためには、お客様もまだお気づきでない課題を指摘し、客観的なデータや他社事例などを示したうえで、違う切り口から提案することも大切です。
この案件で渡辺はまず、営業社員が日常的に利用するシステムに改善の余地を感じました。既存のシステムでは各取引先への営業実績と売上状況を組み合わせた可視化がされておらず、営業すべき取引先の優先順位をつけにくい状態だったのです。
直感的に思った課題意識を起点に、まずは現行システムから取得できるあらゆるログデータを解析して改善箇所の仮説を立てました。同時にSalesforce製品で何をどう変えられるかをわかりやすく整理しながら、有効性をファクトベースで示す提案に落とし込みます。必要に応じてモックを作成し、お客様と完成イメージの共有を図ることも多いです。
結果、渡辺の提案はプロジェクト化し「顧客ごとの取引情報や営業の優先順位の可視化」「タブレット端末だけで完結できる営業システム」「社員-上長間に閉じない組織内のコミュニケーションツール」といった機能・ツールの実装を、Salesforceをベースに進めることとなりました。渡辺ひとりがお客様社内に入ることで始まったこの案件も、システムの要件定義・開発の工程に移り今では数十名規模のビジネスに拡大しています。
「知らない、やったことがない」ことこそが絶好の成長機会
先進的なテクノロジーやデジタルツールは技術進歩が激しく、導入に際してはお客様が最初から明確な答えをお持ちであるとは限りません。まずはお客様からITで叶えたいビジョンを伺い、意見交換を重ね、伴走する形でシステムのあり方を探っていきます。そんなデジタルサクセスコンサルティングユニットでの仕事に、渡辺は2つの側面からモチベーションを感じていると話します。
1つは、お客様の既存の業務や慣習を大胆に変革できる面白さです。提言にはトレンドや他社事例の紹介だけでない、「そのお客様」にそれを導入すべき裏付けも求められますし、提出した草案が受け入れられないことも珍しくありません。それでもITディレクターとして行うさまざまな切り口からの情報提供は、お客様の経営判断や会社全体の業務効率化に大きな影響を与えます。
もう1つは、周囲に詳しい者がいない最先端技術やソリューションに挑戦できる、技術者としての面白さです。今参画している大手メーカー様の案件では、Salesforce製品の中でも新しく、当時は日本国内での導入事例が存在しなかったConsumer Goods Cloudをソリューションのひとつに据えました。最新のソリューションの導入は、知らない、わからないからのスタートが当たり前です。しかし社内外の誰より早くPoCによる検証を行い、その時点で最も適したソリューションをお客様にお届けしていくことが価値の源泉になると考えています。
これまでの専門性に閉じることなく、まだ見たことのない知見や技術に向かって染み出していく。積極的なインプットと、それに基づくお客様へのアウトプットの積み重ねが「新しいものを生み出せている」実感につながっていると話します。
そんな渡辺がスペシャリストとして歩み始めたきっかけは、若手のころあるMicrosoft Dynamics CRM(MicrosoftのCRMパッケージ)の導入案件でリードエンジニアを任されたことでした。
社内でMicrosoft社のツールを自由に試用できることから興味を持ち、業務の合間にセミナーへ参加していたので、周囲より比較的詳しかったのは確かかもしれません。ですが、それはあくまで知識だけの話です。実務としてプロジェクトを完遂させた経験はありませんでした。
チームで成長しながら、「初めて」に挑戦するしかない状況に追い込まれたと振り返る渡辺。プロジェクトを推進するため、まずは高度な技術を要する部分を自らが率先し、その結果を後進に展開してチームを育てていく手法を学んでいったと言います。
この案件を経てから過去にやったことのない業務や技術を扱うことになっても、それほど気にならなくなりました。もしわからないことがあればメンバと一緒に勉強し、知識に換えて臨めばいいだけです。何より、そういった仕事のほうが自分の成長を肌で感じられるとわかりました。
意思決定を支えられる、技術のスペシャリスト
渡辺は2023年4月から、特定分野に高い専門性を持つ社員が対象となるテクニカル・グレード(TG)制度の適用を受け、担当案件の牽引はもちろん、同領域の他プロジェクトに対する技術的な助言や支援も担っています。加えて社内外のセミナーなどに登壇し、Salesforceソリューションの有用性を説くエバンジェリストとしても活躍しています。
社内TeamsにSalesforceのコミュニティがあって、そこにはNTTデータグループ全体からSalesforceプラットフォームに関わるメンバが集まっています。面識のない方も多数いらっしゃるのですが、質問が投稿されると積極的に答えるようにしています。
同様のコミュニティは他のソリューションでも存在していて、質問を書くとほぼ必ず有識者がリアクションしてくれます。一人ひとりの社員に得意領域があって、必要なときには部署や組織の壁を越えてそれを共有し、補い合う風土があります。私はそこにNTTデータの組織力やIT企業としての総合力を感じます。
渡辺には、専門的な知見や技術に特化したうえでお客様に直接貢献するエキスパート人財を、自身がロールモデルとなって育成していきたいという思いがあります。TG制度は、そうした人財をこれまで以上に多く輩出していける可能性を感じると言います。
エンジニアのキャリアアップに対する世間の認識は、PMとして大型案件を推進できるようになることという限定的なイメージがいまだに強いかもしれません。私たちの組織ではプロジェクトメンバを束ねられることと同様に、多様なクラウドサービスの技術要素を束ねられることも重要視されています。
技術革新が激しい昨今、多方面のクラウドサービスに標準以上の知見を持ち、お客様の課題に合わせて適切に組み合わせていける人財が求められていると渡辺は強調します。デジタルサクセスコンサルティングユニットではこうしたスキルを身につけたメンバを「クロスクラウド人財」と呼び、育成の重点に据えています。
ひとつの課題に対して選択肢となりうるサービスが多様化するなかで、意思決定に迷われるお客様は少なくありません。そうしたニーズに応えるには、単一のサービスの知識に長けているだけでは時として不十分。幅広いサービスに対し深い知見を携えたうえで議論を重ね、課題解決に向かって伴走するパートナーのような存在が強く求められていると言います。
過去に経験してきた事例やノウハウを後進に伝えつつも、自身でもさらなる専門性の磨き込みや新しい技術の開拓を進め、お客様の期待にスペシャリストとして応え続けていく。TG制度でのキャリア形成にはそんな魅力があると思っています。