真の変化を迎えるペイメント事業、日本で戦略遂行のカギを握るのは“組織”
――15年ぶりに戻ったNTTデータでどのような役割を担っているのか、改めて教えてください。
法人分野のストラテジーオフィサーと、カード&ペイメント事業部の戦略ビジネス企画統括部長を兼任しています。それぞれ法人分野全体、ペイメント事業の戦略を考える役割です。
ペイメント事業では数年前からFintechベンチャーがフロンティアを求めて数多く参入しましたが、昨今では優勝劣敗が明らかになり市場から退場していく人たちも多く出ています。Fintechブームは既存のサプライチェーンのフロント部分(消費者などの市場接点)が変わっただけ。これまでは上辺の変化ばかりでした。今後、本当の変化がサプライチェーン全体に波及しながら進んでいきます。カード会社や銀行など決済を提供する企業が大きく変化していく中で、真価が問われるのはこれからです。
そうした変化の中で私たちは戦略を立て、サービスを構築・提供していく必要があります。輸入語である「戦略=ストラテジー」の定義は「具体的な競争優位性を通じて、具体的で競争目的が規定された総合的な施策群」。とても広い意味を持つと同時に、具体的な施策でなければなりません。以前のコンサルティング会社においても実効性を踏まえたプランニングを心がけてきましたが、いまはそれに加えてトップマネジメントだけでなくメンバーをエンカレッジしながら進めていくことを心がけています。
――戦略を立てて終わりではなく、メンバーレベルの落とし込みにも目を向けているのですね。
それだけ“組織”という存在は会社によってポイントも異なり、難しいということでもあります。コンサルティングの発祥の地である欧米では、トップマネジメントさえ説得できれば企業は大きく舵を切れるため、そこに注力するスタイルが主流です。しかし、日本では組織をレバレッジさせるために中間マネジメントの意識改革の必要があるという特徴があります。日本企業にはジョブ・ディスクリプション(※1)が敷かれておらず、ミドルマネジメントが業務を双補完しており、結果的に全体最適になっているというケースも多いのです。だからこそ、戦略遂行においても組織に働きかけることが重要な意味を持ちます。
※1・・・職務記述書。担当する業務内容や範囲、難易度、必要なスキルなどがまとめられた資料で、欧米では広く活用されている。
考えを形にできるNTTデータの強み。その魅力をもっと発揮できる場所にしたい
――カムバック社員として、NTTデータという組織にはどのような強みを感じているでしょうか?
外部にいたからこそ痛感しますが、なによりもNTTデータというポジションを持っていること、アセットがあることが圧倒的な強さですね。誰もが名前を知ってくれているからこそ、話したいというリクエストを投げれば、多くの企業が応じてくださります。加えて、公共・金融をはじめとしたインフラを担っているために、誰もがつながっていて、巻き込むことができる。制約条件を取っ払って、他では考えられないレベルの打ち手を考えられるのはとても楽しいですよね。
だからこそ、戦略を担う立場としては、そうした強みを活かし十分に戦っていかなければならない、という感覚もあります。ペイメント事業における売上高は市場価値以上に伸びていますが、世界を見渡せばもっと大きな変化もある。そうしたチャンスを拾い切らなければならないし、拾い切ることができるはずです。
――転職前と比較して、NTTデータの変化を感じますか?
15年間での変化は大きいですね。私が離れる前は、ペイメント事業部門は100人未満の人数で、多くの人が複数の役割を兼ねていました。いまは400人以上となり、それぞれの持つプロフェッショナルとしての役割に集中し、より深く取り組むことができるようになったと思います。
役割としても解決できる範囲が広がり、ビジネス課題に食い込める機会が増えている一方で、「まだまだNTTデータのポテンシャルはこんなものではない」というのが正直な感想です。重要度の高いミッションクリティカルなシステムを手掛けてきたNTTデータは、ミスを防ぐシステムデザインに力点を置いてきました。難易度の高いオペレーションをそつなくこなす優秀な社員がそろっていますが、新しいことを始めるときにはリスク回避のために指摘するだけではなく、オプティミスティックに取り組むことも必要です。NTTデータには豊富な機会があり、能力がある人財もいます。もっと楽しいことを、どんどん進められる場所にできたら良いと思っています。
外部へ目を向けて、つながることがNTTデータの価値になる
――ご自身のキャリアの中で、NTTデータの存在は大きなものだったのでしょうか。
いまも続く多くのつながりを得られたことは重要でした。こうしてカムバックできたことももちろんですが、これまでビジネスで関わった人脈や関係性はいまでも大きな財産です。ペイメント事業は当初からデジタル化が進んでいた領域であるとともに、エコシステムが重要な意味を持ち企業や業界の枠を超えたワイドなつながりが重要になる分野です。他事業でも、工業とテクノロジーが融合し、国同士のデータベースが連携した相互運用や分散型意思決定といった設計思想を持つ、ドイツ発のインダストリー4.0(※2)をはじめ、単体の企業ではなく、協調することで大きな価値が生まれることに多くの人が気付いています。
これは、私のように外部に出た人財ともつながり、貢献を拡大しながら変革を進めていくNTTデータという企業そのものの価値と言えるかもしれません。
※2…第4次産業革命の意味を持ち、スマート工場を中心としたエコシステムの構築を主眼に置き、工業製造業におけるオートメーション化やデータ化、コンピュータ化を目指す技術的コンセプト。
――最後に、転職を含めたキャリアに悩む後輩メンバーに、ご自身の経験を踏まえたアドバイスはありますか?
私の立場としては、「NTTデータの外に出てみたい」という方の気持ちはとてもよくわかります。転職をするかどうかに限らず、内向的にならず「外」に目を向けることは人脈や情報を得るためにも大切な姿勢です。キャリア形成においては、NTTデータという環境が事業のリアリティに考えたアイデアを結びつけることができる場だというメリットもぜひ知ってほしいですね。私の元同僚も、NTTデータ社内でさまざまなビジネスを創り、現在は関連会社の社長として自由に活躍をしています。それだけ懐が広く、チャレンジができる会社なのだと思います。だからこそ、一人ひとりが自分の楽しめることに目を向けてほしい。私自身、これまでのキャリアを歩む基準となってきたのは、「自分が楽しいと思うかどうか」という尺度でした。とにかく動いた方が面白いですし、自身の付加価値も高まっていくということは、皆さんに伝え続けていきたいです。
面白くて価値のある仕事をするために大切なのは、市場の課題が何なのか、我々がどのような価値を提供できるのか、そしてそれが人々にとって意味があるのかを考え続けることです。NTTデータという場の強みを活かして、自分の考える面白さ・楽しさについてとことん向き合ってもらいたいですね。
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NTTデータのシステム開発からスタートし、コンサルティングのプロフェッショナルとしての活躍を経て、いま再びNTTデータで未来を先読みした戦略の策定・実行を担っている渡邊。そのキャリアを形作ってきたのは、自分の付加価値を向上し続ける意志と、常に面白いことを選ぶという基準でした。外部を知ったからこそ、NTTデータの強みを理解し、まだまだポテンシャルが発揮できると信じる渡邊は、業界や事業の変化を楽しみながら、価値ある施策の実行をけん引していきます。