もっと人々に価値を届けたい。法人営業の壁を前に、芽生えた想い
今ではITの知見を活かして、金融機関への営業活動や新規事業開発のプロジェクトリーダーを担う堀田ですが、大学時代はIT業界で働く自分をイメージできていなかったと言います。経営学を通じてさまざまな問題を分析する中で視野を広げていた分、特定の業界で働きたいという考えがありませんでした。
そんな堀田のキャリアは、総合印刷会社から始まりました。当時は電子帳簿保存法の改正でペーパーレス化に乗り出す企業が増えていた時期で、会社が大きな変革期を迎えていたことから、色々なことにチャレンジできそうと感じたのが入社の決め手だったようです。
新卒入社後の2年間で、複数の業界のお客様を担当するキャリアプランがあったのも良かったですね。業界が変わると顧客属性も変わるので、幅広い分野の知識を吸収しながら、自分に何が合っているのかを確かめられたのは良い経験になりました。
2年間で地方銀行へのWeb制作・デザイン提案や、食品メーカーに対するパッケージ製造サービスの提案を経験し、3年目から金融機関向けの営業組織に異動。メガバンクの営業担当として業務効率化の提案、新規ビジネスの開拓にチャレンジしました。
堀田にキャリアの転換期が訪れたのは、営業活動を続けるうちに芽生えた想いがきっかけでした。
BPRやBPOなどでお客様の課題解決を支援する中で、「この仕事はエンドユーザーに価値を届けられているのか」と徐々に疑問を感じるようになりました。しかし、自分がイメージしている価値を提供するには、エンドユーザーとのタッチポイントになるフロントエンドと基幹システムなどのバックエンドをつないで更なる顧客価値を創出する必要があったのですが、事業領域的に実践が難しくて。それから今後のキャリアを考えるようになりました。
自身の営業活動に疑問を感じるようになった背景には、金融機関の保有するパーソナルデータの存在があります。近年では決済、ローン、保険などをシームレスに提供できるエンベデッド・ファイナンス(Embedded Finance)が普及していますが、金融機関が保有するパーソナルデータにも大きな価値があると考えました。
金融機関にあるパーソナルデータをもっと上手く使えれば、今より快適な社会が実現できるんじゃないかと思いました。金融をベースに実現するためには、日本を変えられるレベルの会社じゃないと難しいと考え、多くの金融機関の勘定系システムを提供しており、データ活用にも精通しているNTTデータへの転職を決めました。
金融機関とともに日本を変える。そんな想いを胸に秘め、新しいチャレンジが始まりました。
カード決済を通じヘルスケア課題に切り込む、新たな事業の立ち上げへ
NTTデータに入社後は小売系クレジットカード会社の営業担当として、情報系システムの開発やデータ活用などの提案に注力していました。その中で新規事業に関わるようになったのは、自身の所属する金融グローバルITサービス事業部で組織変革が始まった頃でした。
当時は従来の御用聞きのビジネススタイルから、共創パートナーとしてお客様と一緒にエンドユーザーが求めているものを提供できる組織になるために、組織変革が進んでいました。そのうえでクレジットカード会社の加盟店や、その先のエンドユーザーに対してカード決済を通じて新しい価値を届けることを目的に「CxC(シーバイシー)プロジェクト」という活動が立ち上がり、さまざまなテーマの新規事業プロジェクトが走るようになって。その中で、私もプロジェクトリーダーとして1つのテーマを担当できることになったんです。
Customer eXperience across Clientsの頭文字を取って名付けられたCxCプロジェクトで、担当することになったのはヘルスケア領域でした。健康診断データやバイタルデータを用いて健康状態を可視化し、ストレス値が高い方にはストレス緩和につながる機能性表示食品を提案するなど、悩みの解決につながる商品をレコメンドするサービスの事業化に取り組んでいます。
当時の心境について「正直なところ、ヘルスケアに関心があったわけじゃなかった」と語る堀田ですが、プロジェクトを進めるうちに考えが変わったと言います。
コロナ禍で新しい生活様式が根付いてから、健康に関する人々の意識は高まっています。そんな時代だからこそ、科学的根拠に基づいた日本の保健機能食品をはじめとする多種多様な商品を、健康状態に応じて適切に提示できるようになれば、健康寿命などの国際的なヘルスケア課題にも切り込めます。そうやって視野を広げていった結果、世界に大きなインパクトを残せるほどの仕事にチャレンジしているんだと感じられるようになってから、仕事のやりがいも大きくなりました。
現在、取り組みを進めているヘルスケア領域の新規サービスは、実現可能性を確かめるための実証実験の真っ最中です。ゆくゆくはクレジットカード会社のアプリに組み込み、人々が何気なく健康を意識するきっかけを作りながら、健康増進につなげることを計画しています。
実績と知見を活かしながら、前例のないチャレンジができるフィールド
ヘルスケア領域の新規サービスの事業化を進める中、堀田は並行してクレジットカード会社向けのAIエージェントの新規事業企画にもチャレンジしています。生成AIによって高度なタスクを自動化できる本プロジェクトについて、「AIビジネスを日本が主導するチャンス」と捉えています。
スマートフォンやクラウドなど、これまでの革新的なイノベーションの多くは海外企業が起こしてきました。AIビジネスも今のタイミングで注力しないと、海外企業に先を越されてしまうのではないかと危機感を抱いています。職人芸などの言葉にも表れているように、日本はものづくりに対する標準レベルも品質や精度を高めることへの意識も高いです。だからこそ、AIエージェントで日本がイノベーションを起こせば、AIビジネスの覇権を握ることもできると思っていて、それをNTTデータで実現したいです。
日本で新たなデジタル・ディスラプションを起こすという野望を胸に秘め、新規事業開発に勤しむ堀田ですが、前例のない挑戦には思わぬ落とし穴がありました。
多くの企業は営利を目的に活動しているため、どれだけ画期的なビジネスであっても収益性とのバランスが大切です。しかし、ヘルスケア領域の新規サービスやAIエージェントはNTTデータとしても新たな試みだったことから、お客様に実証実験に協力いただくことのハードルが想像以上に高くなっていました。
ヘルスケア領域の新規サービスであれば、「商品をレコメンドしたときに本当に買うのか?」という疑問をお客様が感じていて、理論と現実が上手く噛み合わないこともありました。問題の意識レベルや第一想起する商品によってはエンドユーザーの行動が変わるなど、購入のきっかけがシステムに細かく落とし込めてなくて、なかなか実証実験に進めませんでした。
前例のないプロジェクトであれば、実証実験の壁に突き当たることが多く、取り組みを進める2つの新規事業も同様の課題に苦戦しています。しかし、新規事業のブレイクダウンなどの調整に追われる中でも、プロジェクトをポジティブに捉えていました。
新規事業はローンチまでの時間が長くなるほど、経営資源に余力がなければ続けられません。余力がなく実証実験の期間に制限が出てしまうと、サービスの内容が限られるため、社会に与えるインパクトが小さくなってしまうこともあるんです。その観点において、NTTデータは挑戦的な新規事業の実証実験を十分に行えるだけのリソースと環境があり、トライ&エラーを繰り返しながらより良い新規サービスを追求していけます。解決すべき課題は沢山あって大変ではありますが、これだけやりがいのあるプロジェクトに入社2年目でリーダーとして関われるのは、NTTデータ以外にはないと感じています。
新規事業の険しい壁に苦戦する中でも頑張れるのは、逆境に立たされても粘り強く挑戦していく組織風土が関係しています。自身の考え方とマッチした組織風土のもとに集まった仲間たちの存在が、挑戦を後押ししているのです。優れた日本製のサービスを世界に広げ、人々の生活を豊かにするために、堀田の挑戦は続いていきます。