5年目にようやくついた自信──大規模システムに関わる難しさとそこから得られる学び
2014年にNTTデータに入社した佐伯は、これまでのキャリアでは一貫して国の会計業務に関わるシステムに従事しています。入社2年目からお客様の窓口を任されることになり、そこから少しずつ担当する案件規模は拡大していきました。
そしてポジションも業務グループの一担当者からグループリーダーを経て、現在は総括グループのリーダーを任されています。着々と実績を重ね、順風満帆なキャリアを歩んでいるように見える佐伯ですが、その歩みは決して易しいものではありませんでした。
学生時代にプログラミングをしていたこともあり、入社当初のプログラミング研修は楽勝だと感じたのですが、実際の大規模系のシステムを扱うようになってからその難しさを痛感しました。
今まで触れてきたのは小さなプログラムで、実際のシステムは、設計書のもと複雑に複数のプログラムが積み重なって動くものです。その一部分を担うにあたっては、扱ったことのない言語を習得したり、大規模システムの全体像を把握した上で、一部分をミクロな視点で見直したりと、さまざまな難点を乗り越えなければなりませんでした。
いま振り返れば、1年目は右も左もわからない状態でした。そこから自分が案件の担当者になって、要件定義、設計、製造、テストと一連の流れを経験していくことで、自身の業務に対する理解が深まっていったと思います。ようやく一人前になれたと感じたのは、入社から5年経ったころですね。
大規模かつミッションクリティカルなシステムに携わり、その機能追加やシステム維持を担うことで着実にスキルと経験値を重ねていった佐伯。
自身が担う役割や品質担保の本質について理解したという自信を胸に、2019年、佐伯は翌年に施行される民法改正に起因するシステム改修案件を担うことになりました。この改正は民法制定以来120年ぶりとなる大規模な法改正で、それに伴うシステム改修の難度は極めて高いものとなります。
100%の正解はない、けれども案件を成功に導くために地道な対話を重ねた
今回の法改正の大きな変更の1つは法定利率に関わるものだったのですが、金融状況を見つつ利率が変動していくという特性が開発の難度を上げる要因になりました。それを実際の具体的なユースケースで考えた際、特殊なケースでは利率が何%になるのか、判断に迷うものが多くあったのです。弁護士の間ですら解釈が割れる可能性がある内容を、私たちはシステムの仕様に落とし込む必要がありました。
この案件の難しさは、特殊なシチュエーションにおける法解釈を明確にしていく必要があったことです。お客様も私たちも法律の専門家ではありませんから、仕様への落とし込みは困難を極めました。特殊なケース一つひとつに対して想定される解釈を場合によっては複数整理して、お客様の法規系の部署にも照会してもらいながら、一歩ずつ前進していきました。
この案件を通じて、法改正の意図や一般論も含めて自分なりの考えをしっかり持ち、仕様の確認点を整理したうえでお客様にアプローチすることの重要性を学べたと感じています。私たちの仕事には100%の正解が1つだけ用意されているわけではなく、最適解をなんとか出していく仕事です。システムの実現方法に対してもメリット・デメリットをしっかり示しながら、お客様と折衝する能力がかなりついたと思います。
お客様の合意を得るために、国の動きを俯瞰しつつ、システム開発という業務に対する理解を促したり、各所の調整をしたりと、さまざまな視点からアプローチし続けた佐伯。ときには言葉だけでなく、図解なども示しながらシステムの仕様に齟齬がないようにコミュニケーションを深めていきました。
その努力が実り、案件を終えたときには感謝の言葉が贈られたと振り返ります。その成功は、佐伯がこれまで業務グループで培ってきた経験が存分に活かされました。
2020年のサービス開始を迎えた後、佐伯は総括グループに異動し、同システムのシステム更改案件を担当することとなりました。総括グループは、それまで担っていた業務とは異なる役割が求められる経験が多々ありました。
総括グループは、業務グループや基盤グループといったさまざまなグループのメンバーが何をやっているのか理解していなければなりません。その上で、今までよりも幅広い視点を持ち、システム開発の全体像を把握する必要があるのだと感じました。
業務グループにいたころは、基本的に自分たちが任される案件に集中していれば良かったのですが、総括グループではメンバーそれぞれが滞りなく開発できるように案件全体のスケジュールを引いたり、開発に必要な機材を調達したりと、開発周辺にあるさまざまな業務も担うようになります。システムそのものに関する業務だけではなく多岐にわたることから、プロジェクトを遂行する上で気を配るべき領域の幅広さは難しいポイントでもあります。
省庁支払い手続きのキャッシュレス化実現に向け、グローバルにコミュニケーションを進めていく
現在、佐伯は中央省庁における支払い手続きのキャッシュレス化案件に携わり、それに関連するシステム開発に従事しています。これまで国が統括する手続きの支払い手段は、現金や収入印紙などが一般的でした。
今後はクレジットカードなど、より利便性が高い決済方法としてキャッシュレス決済を選択できるよう、各府省の職員様、自社以外の事業者や自社内の他事業部とも連携しつつ、それを実現する連携システムの開発に挑んでいます。
申請画面は各府省が作成しているのですが、支払い手続きに必要となる情報の払い出しを行うシステムに情報を連携するためには、個別システムそれぞれから直接接続するのではなく、各府省で個別システムを取りまとめ、接続する仕組みの構築が必要です。そのため、私たちは各府省が共通して使える、Web APIを活用した新サービスを開発・提供しました。
ゴールはあるものの、そこに至るための細かな機能や要件については新規で作らねばならない本案件。お客様が納得してもらえる提案を心がけ、開発工程におけるバグ発生率といった品質管理の考え方なども説明しながら、佐伯はその推進に全力を注いでいます。
また、本システムにはクラウドサービスが活用されています。その都合上、海外のパートナーともコミュニケーションをとることも多い佐伯は、用いる言語や文化の差がもたらすやりとりに大変さを感じつつもプロジェクト推進のために尽力しています。
クラウド活用では、海外のクラウドベンダーとの連携が必要になってきます。しかし私たちと海外ベンダーでは、仕事に対する感覚や考え方が大きく異なるケースがあります。
たとえば、99.99%の稼働率とうたうシステムが停止してしまった場合、私たちは「絶対止めてはいけないものを止めてしまった」という感覚なのですが、「0.01%以内の停止時間であれば約束した範囲内ですよね」という考え方もあるわけです。クラウドサービスを活用するということは、こうした考え方をもとにシステムを作るということなので、そこをお客様にご理解いただくことが大切です。
オフショア開発やクラウドベンダーとの連携を通じ、中国やインド、シンガポールなどさまざまな国の現地メンバーとやりとりがあるという佐伯。英語でも正しくニュアンスを把握する難しさや文化の違いを痛感しつつ、時間をかけて信頼関係を築いている最中です。
人々の生活をもっと便利に──やりきる力と学ぶ意欲が次世代のシステムをつくる
入社以来、佐伯は国の会計業務におけるシステム開発や維持を担当し、その発展に貢献してきました。その経験を振り返り、佐伯は自身の仕事が生活に直結しているということを実感しています。
普段生活をしていて、こう変わったらもっと便利なのに……と想像することは誰でも一度はありますよね。しかし多くの場合、思うことはあっても、自分で形にすることはできません。いま携わっている省庁手続きのキャッシュレス化案件もそうですが、NTTデータは「便利になったらいいな」を自ら実現できる職場です。そこが私にとってのやりがいですし、NTTデータの一番の魅力だと感じています。
佐伯が扱うシステムは、まさに国民全員に大きなインパクトを与えうるものばかりです。大規模かつ難度の高い案件を取りまとめてきた佐伯を支えてきたのは、その責任の重さゆえに湧き上がる「絶対にやるんだ」という気持ちです。
私たちが作り上げるシステムは、いずれも社会課題の解決のためになるものです。そのゴールを理解していると、どんなトラブルがあろうとも乗り越えていけます。大規模で影響力があるシステムなのだとわかっているからこそ、大変なことでもやりきろうと思えるんです。
そんな佐伯の熱い思いに拍車をかけるように、昨今テクノロジーの進化のスピードはますます加速しています。キャッシュレス化案件で扱っているクラウド領域のほかにも、技術的な側面から見た挑戦の可能性は広がっているのです。
AIやChatGPTなど、最近注目されている新たな技術領域を活用することで、私たちの生活はより便利になると信じています。私は業務系出身ということもありますので、そうした新しく出てきた技術には自ら触れて、どんどん活用していきたいです。最適な提案をするためには、まず自分が技術の土台を知らなければなりませんから。
私の所属する組織では新しい技術領域について学ぶため定期的にセミナーが開催されているので、私も積極的に参加するようにしています。
国の会計業務をシステム開発の観点から支え続けてきた佐伯は、NTTデータの環境や案件を通じ、「便利になったらいいな」を形にすることの喜びを実体験として知っています。その想いを糧に、今後さらなる新たな技術領域を学んでいくことで、佐伯はより便利で暮らしやすい人々の生活に貢献していくでしょう。
出典:talentbook「株式会社NTTデータ」(2023年8月23日公開)より転載