保険会社からの転職。自分が働く会社を“好き”になれるか
損害保険会社の営業という前職のバックグラウンドからは少々意外ながら、大学では理工学部に所属し、人工心臓の研究に携わっていたという畑中。高校時代に数学の面白さを知り、理工学部に進学しますが、大学で学ぶうちに徐々に志向性が変わっていき、“人と関わる仕事”の方に関心が移っていきました。
保険業界で働いていた父の影響もあったのかもしれませんが、人との関わりの中で自分の価値を発揮できる仕事がしたいと考えるようになりました。形のある商材を売る業種よりも、無形の商材を売る営業を希望して、新卒で損害保険会社に就職しました。
そして畑中はカーディーラー営業として配属され、北陸広域のカーディーラー本社数社を担当。自社の自動車保険をディーラースタッフに取り扱ってもらえるように働きかける代理店営業に携わりました。自らお客様に商品を提案するのでなく、カーディーラーに“売ってもらう”という点に難しさがありました。
当時、畑中が学んだことは、カーディーラーやお客様の立場に寄り添うことの重要性です。どれだけ保険商品について勉強しても、相手の立場に立った提案をしなければ、すべて机上の空論に終始してしまいます。この時の学びは、畑中がいまでも重視している考え方です。
そして約2年半、畑中はカーディーラー営業として勤務しましたが、自動車業界が大きな変革期にあり、将来が予測できない点に危機感を覚えるようになります。このままカーディーラー営業として専門性を磨くことが自分のキャリアにとって正解なのかーー。もやもやとした想いを抱えたままではモチベーションを維持することはできないと畑中は考え、転職を決意します。
そこでIT業界を希望したのは、いまやあらゆる企業にIT部門があり、キャリアの選択肢という点では間違いのない業界だと考えたからです。学生時代にITベンチャーでインターンシップの経験があったことも後押しになりました。
大手企業を中心に検討していたため、NTTデータという選択肢自体はすぐに浮上してきました。しかし、畑中にとって一番重要だったことは、自分がその会社を“好き”になれるかどうかでした。
熱意を持って取り組み続けられることが何かを考えた時に、自分がその会社を好きになれるかが大きな要因だと気づきました。
個別の条件としては、社会的なブランド力、事業の幅広さ、社員を大切にしているか、独自の強みがあるか、転職者に活躍機会があるか、などの観点がありましたが、畑中がNTTデータを選んだ最終的な決め手は直感。NTTデータの社員との出会いが最大の理由だったそうです。
知人を頼り、NTTデータの公共分野に在籍する2名の社員にインタビューする機会を持ちました。その時の話から、2人がNTTデータという会社のことを“好き”だという気持ちがありありと伝わってきたんです。2人は会社のために働き、会社も2人のことを尊重している。まさしく会社と人財がWin-winな関係性であることを知りました。私が重視していたすべての観点においても納得できる会社であったことから、NTTデータへの入社を決めました。
突如立つことになった最前線で、自分が納得できる“正解”を貫く
畑中が所属するデジタルソサエティ事業部では、マイナンバー関連の情報連携の仕組みや各種申請手続きに関するシステムを手掛けています。
畑中が担当しているシステムもその一つ。地方自治体がそれぞれの手順で進めている業務プロセスを全国で統一するために、マイナンバーを用いた標準システムを構築することがミッションです。
システムの受託時、営業担当としては課長、課長代理、畑中の3名が携わり、畑中は主に事務周りの対応を行っていました。しかし数カ月後、課長と課長代理が異動によりプロジェクトを離れることに。
すぐに後任の課長と課長代理が赴任してきたものの、歴が長かったゆえに、それまでメイン担当ではなかった畑中が“そのシステムにもっとも詳しい営業担当”という立場になりました。膨大なシステムの開発状況やお客様のことを十分に理解できているわけではなかった畑中にとって、非常に大きな壁でした。
突然、第一人者という扱いになって本当に焦りました。最初の1カ月ほどはキャッチアップが追いつかず、ただただ自分の無力さを実感しました。新しい課長や課長代理にフォローしてもらうばかりで情けなかったですね。
しかし、そこで膝をつく畑中ではありませんでした。改めてシステムの仕様や開発資料を読み込むところから始め、それまで以上に積極的にお客様との接点を持つように心掛けます。幸いにしてお客様の担当者が知識豊富な方だったため、お客様とのコミュニケーションを通じて畑中自身も必要な知識を獲得していきます。
もちろんお客様に頼ってばかりではなく、お客様が何に関心があるのか、何を自分たちに求めているのか、私が理解しておかねばならないことをしっかりと整理して準備した上でお客様とコミュニケーションを取ることを意識していました。最初は電話一本かける前にも入念に準備していましたね。
顧客調整において営業担当が何を重視するのか、1つの正解があるわけではありません。当時、畑中と新しい課長代理の間には顧客調整のアプローチにおける考え方の違いがありましたが、畑中は上司に追従するのではなく、「自分のやり方で調整を進めさせてほしい」と進言。それは、これまでの畑中にとっては考えられない行動でした。
それまでの私は無難に仕事を進めようとする傾向がありました。ですが、そのままのやり方では自分が置かれていた厳しい状況を打破できません。周りに追従するのではなく、自分にとって“正解”だと思える行動を貫こうと思い、思い切って上司に自分の意見をぶつけました。
その時の課長代理からの反応も、畑中にとっては印象深いものでした。否定するどころか、「ぶつかりあうのは本気でプロジェクトのことを考えている証。上下関係なく、今後も意見があったら言ってほしい」という前向きな言葉が返ってきたのです。
この時のやりとりで、上司からの指示であっても、考えずにYesと言うことは必ずしも正しくはないのだと気づきました。ぶつかったとしても自分の意見があれば発言し、納得いくまで議論してプロジェクトをより良い方向に持って行くことが担当者としての責任だと考えるようになりました。
忌憚なく意見を交わし合える風土があったからこそ、畑中は前職から引きずっていた自分の殻を破ることができたのです。壁にぶつかりながらも本来の自分の姿を表現できるようになったという点で、まさしく畑中にとって転機と言える出来事でした。
平均点でまとまらず、多様な長所を持った人たちが集まっている
自分が納得いくまで考え抜いた意見を臆さずに発信するようになった畑中は、気づけば自分の人生における仕事の意義も変わっていることに気がつきました。以前の畑中は、自分が興味を持ったことに対しては積極的に熱意を向けるタイプであったものの、それ以外のことは少々他人事のように見てしまう傾向があったのだと言います。
昔は仕事というものが自分の熱意の“外側”にありました。いまと比べると、自分の仕事は自分のものだという意識が薄かったように感じます。大きな組織の中の一部であることや、自分の代わりがいるということに慣れてしまっていました。
しかし畑中は、マイナンバーを関連システムにもっとも詳しい営業担当としてのアクションや、本気でプロジェクトに取り組む仲間同士のオープンな意見の交わし合いを経て、“自分の仕事”に対する意識が変わっていきました。自分の担当分野については、自分自身が誰にも負けないくらい考え抜いているという自負やプライドを抱けるようになっていたのです。
その背景には少数精鋭のチーム体制があります。NTTデータは大規模なシステムを手掛けていますが、営業担当はわずか数名。必然的に自分の発揮している価値を突き詰めて考えることになります。その“当事者意識”が大きな要因だと思います。
思い返せば、会社が“好き”だと語る社員の姿に惹かれてNTTデータへの入社を決めた畑中。いつしか自分自身も、NTTデータが“好き”だと断言できるようになっていました。NTTデータのどんなところが“好き”なのか、畑中に尋ねてみました。
やはり人を大切にしてくれるところです。NTTデータは一人ひとりを加点評価で見てくれます。私自身、偏ったところのある人間で、まだまだ足りないところも多いと思っていますが、NTTデータには私の長所にスポットライトを当てて評価してくれる風土があります。実際、私の周りの社員も全部が平均点でまとまっているというよりは、何か一つ光るものや尖った長所を持った人が多い印象ですね。
畑中が自己分析している自身の長所とは、疑問点をおざなりにせず、仮にお客様がそこまで求めていないことでも、自分自身が納得いくまで考え抜くという姿勢。その時には必要ではなくても、後になってから点と点がつながった経験が過去に何度もあるそうです。
妥協せずに考え抜く姿勢という前職から変わらない長所は、NTTデータに飛び込んだことによって本当の輝きを見せるようになったのです。
もやもやとした想いを抱えながら働くことはなくなりましたね。自分の発揮できる本当の価値を認めてくれる会社で働くということは精神的にも健全なことだと感じています。
清々しい笑顔でいまの心境を明かしてくれた畑中。多様性という言葉は本来、畑中が語ってくれたようなことを指すのかもしれません。多種多様な光を持つ人たちが集まった時にこそ、社会をより良くできるような大きな価値が生まれるはずです。