地図を“作る”経験を生かし、地図からサービスを“創る”仕事に
思えば昔から旅行が好きで、旅先では地図を眺めていました。行政地図に観光地図、歴史地図などさまざまな種類の地図を持って、知らない場所へ行くことが楽しかったんです。
子どものころから旅行や地図が好きで、「いったいこの地図はどうやってできているのか」とどんどん関心を深めていった藤谷。大学では地理学を専攻し、測量や地理情報システムについて学びました。
ちょうど私が大学へ進学する2010年ごろから、地図上に複数の情報を重ね合わせる地理情報システム、いわゆるGISが普及し始めました。これを学べるところはどこだろうという基準で大学を選んだんです。
大学卒業後は測量・建設のコンサルタント会社へ入社。GISを使った地図の営業を担当しました。仕事を通じて地図整備や測量の知識など地図づくりに関する基礎を習得すると、より先進的な技術を学びたいと考えるようになり、海外の測量機器メーカーと日本企業の合弁会社に転職します。
日本の地図づくりの現場では、たくさんの海外メーカーの機材が活躍しています。そうした状況に対して、この業界を世界的な視野で捉えられるようになりたいと思ったことが転職のきっかけです。転職先では、海外の測量・計測機器を国内市場に導入していくことがミッションでしたので、マーケティングや営業企画に関する知識を深めることができました。
海外メーカーが親会社ということもあり、藤谷は海外の技術展示会へ何度も参加し、地図への理解をあらためていきました。
展示会では世界の地図ビジネスというものを目の当たりにしました。自分も機器を販売するだけじゃなくて、もっと広い視野で、地図をつかった大きなビジネスを手がけたいと思いましたね。
新たな夢を持った藤谷の目に止まったのが、地図を使った公共事業を多く手がけるNTTデータだったのです。
専門知識を活かした地図プラットフォームの開発
2020年4月、藤谷はソーシャルイノベーション事業部のデジタルソリューション統括部にプロデューサーとして入社。さまざまなインフラを管理するためのプラットフォーム開発を担当します。
2022年11月現在は、グループ会社とともに、インフラを管理するプラットフォームを開発しています。NTTデータだけでなく、そのほかのインフラ事業者にも価値提供できるサービスなんです。
NTTデータが管理する通信設備には、地下に存在するものも多く、マンホールなどを通じて人が入り設備点検を行っています。しかし、地下にあるのは通信設備だけではありません。水道やガス、電力などそのほかのインフラ設備も並存していて、互いに影響を与えないよう連携をとりながら管理されています。
これまではそれぞれのインフラを所有する各社が別々に管理システムを構築していました。しかし、これではスムーズな連携が図れません。ひとつのプラットフォームに統合して、各社のデータを一元的に閲覧できるようになると、たとえば工事の度に「ここには御社の設備は埋まっていませんか?」と確認を取っていた手間が省かれるんです。
もちろん、多様な業界の利害を一致させてひとつのプラットフォームを構築していく作業は簡単ではありません。
やはりどのインフラ会社と話をしても、こうしたい、ああしたいという希望がどんどん出てくるんです。仕事に対する情熱が反映された結果だと理解していますが、すべての要望を受け入れていては仕様書もまとまらず、開発そのものを遅らせかねません。互いに納得しながら着実にプロジェクトを前に進めるため大事にしたのが、最初から「できない」と突っぱねないことです。
藤谷は要望を受けた場合、納得いくまで考えて内容を検討し、メリットやデメリットを明らかにしたうえで再度説明の機会を設けています。検討素材を並べたうえで納得して判断してもらえるようにしようと、チームメンバーと意識を合わせていました。
結果としてインフラ会社とのあいだに信頼感を醸成することにもつながったと思います。個人としても、地図づくりの現場で得た経験をもとに話をすることで、「この話なら藤谷さんに相談してみよう」と想起してもらえるように。価値がある仕事ができていると感じますね。
プラットフォームはすでに運用段階にあり、藤谷の仕事はその継続開発と保守に移行しています。
地図をつくる仕事に長年携わってきましたが、「地図にはこんな使い方もあるんだ」と気づかされることが本当に多いです。サービス提供という視点でエンドユーザーのことを考え、システムに取り入れることで、地図という分野をより突き詰められる気がしています。地図好きの個人としても仕事が本当に楽しいし、開発という新たな経験を積めていることにやりがいも感じますね。
個性を受け入れ、埋没させない文化がある
これまで積み上げてきた経験を活かして活躍する藤谷ですが、入社前はシステム周りの知識の乏しさから、NTTデータでは経験が通用しないのではないかと心配していました。
今でこそ開発担当としてSEのような仕事もしていますが、私のバックボーンはまったく異なるものです。NTTデータでは、高いレベルでプログラミングの知識が求められるのではないかと不安がありました。
しかし、面接官の方が「いろいろな背景を持った方がいる会社で、入ってから学んでいける風土もある。知識を活かしつつ、学ぶ姿勢を忘れずにいてもらえれば問題ない」と言ってくれたのです。とても心強く感じましたね。
実際、藤谷が配属されたチームには多様な人材がそろっています。
SI(システムインテグレーション)の分野一本でやってきて、システム開発の専門性が高い方もいますし、海外で測量コンサルタントを経験していて計測機器などに詳しい方もいます。
そもそもNTTデータのなかにはいろんな部署があり、コンサルだったり保守だったりと、異なる経験をして来た方が多いんです。業務内容もほとんど被りません。いろんな経験を持った個性豊かな人材の集まりなので、自分も予期してなかったような意見だったり、考え方を聞けたりするのが学びになります。
こうしたチームだからこそ、業務における自身の介在価値を実感できるシーンも少なくありません。
入社したときこそコロナ渦でテレワークに慣れていなかったため、メンバーと打ち解けるのに少し時間はかかりました。しかし、技術面や経験面で特異性を持った人間が入ってきたとしても、個性として尊重してくれる風土が背中を後押ししてくれたんです。個性を埋没させることなく、フルに活かせる環境がある。プロジェクトや業務の多様性に富んだ大きな会社だからこそ、そうした風土が育っているのでしょう。
藤谷は現在、インフラを管理するプラットフォームの開発や運用に加え、地図を用いた新規ビジネスの検討や技術検証など幅広い領域の業務に携わり、これまでの経験や強みを存分に発揮しています。
地図×デジタルの可能性
NTTデータに入社して会話の仕方が少し変わってきたと感じています。前職までは、小さなコミュニティのなかで少人数の方と親密な関係を築き仕事を進めることを意識していました。どちらかというと個人対個人のコミュニケーションが重視されるイメージです。しかし、NTTはとても大きな組織であり、向き合うお客様も幅広い。個人的な信頼関係は醸成しつつも、会社という組織の顔として話すことを意識するようになりました。
また、地図を使ってどんなサービスをつくるか、どうすればお客さんが喜んでくれるかと、ビジネス的な視点で物事を考えることも増えたように思います。
地図を使ったより大きなビジネスへの挑戦を夢見て、NTTデータで一歩を踏み出した藤谷。成長の実感を得るからこそ、その目はさらに先を見始めています。
誰もがスマホで地理情報を入手し扱える時代です。私たちの生活のなかでずっと身近な存在になりました。そうした中で、どんなサービスが世のなかに求められているのか、どんなサービスがあれば、仕事や生活がもっと楽になり効率化されるのかというのは、これからも考え続けていきたいです。
たとえばデジタルツインと地図を掛け合わせることで、そうしたことも可能ではないかと考え、まさに企画立案やコンテンツの整備に着手しているところ。社会のニーズに合うようなサービスの創出に向けて、必要な知識や経験を蓄えていけるような仕事をしていきたいと思います。
NTTデータが向き合う社会課題は山のようにあります。デジタルというキーワードが共通していても、一つひとつの課題に向き合っていくには、それぞれの領域で培われた知識・経験が不可欠です。
地図×デジタルという領域ではじまった藤谷の挑戦。NTTデータという新天地で未来への想いはより形作られました。これからも藤谷は世の中の課題に真摯に向き合い、ビジネスの拡大に向けて尽力していくことでしょう。
出典:talentbook「株式会社NTTデータ」(2022年12月22日公開)より転載