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生の経営課題に触れる手応え。コンサル視点で事業戦略とサステナビリティの融合を加速

NTTデータは2021年からの中期経営計画において「Realizing a Sustainable Future」をスローガンに掲げ、サステナビリティ経営の推進を策定しています。しかし、サステナビリティ経営は世界中の企業が模索を続けている段階で、事業戦略へのサステナビリティの組み込み方に明確な正解はありません。事業戦略とサステナビリティの融合に取り組む鈴木は、建設コンサルタントや外資系戦略コンサルティングファームでの経験を経て、NTTデータに転職してきたキャリアの持ち主です。鈴木の姿からは、サステナビリティ経営推進の意義や難しさだけでなく、NTT データの風土の特徴も浮かび上がってきました。

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もっともモチベーションを保てるテーマが、サステナビリティだった

自分がもっとも高いモチベーションを保てるテーマは何なのか――。外資系の戦略コンサルティングファームからNTTデータに転職した鈴木にとって、それがサステナビリティというテーマでした。鈴木がサステナビリティに関心を持つようになった源流をたどると、大学時代に携わった災害支援の取り組みがあったそうです。

鈴木は大学で建築の意匠設計を専攻していましたが、2008年の中国・四川大地震の際に支援のため現地を訪れ、災害復興の大変さとやりがいを同時に実感。また、所属していた研究室がマサチューセッツ工科大学(以下、MIT)と共同研究を行っていた経緯から、卒業後はMITにて災害復興支援に関するリサーチ職に就きます。

建築自体は好きでしたが、震災支援を経験したことで、建築家にできることには限りがあると感じるようになりました。より良い復興計画を作るにはもっと上流に行く必要があると考え、MITの後には建設コンサルタント業界に移りました。

建設コンサルタント業界において、鈴木は津波がもたらす被害の大きさから水災害に注目し、河川分野のコンサルティングに従事します。鈴木は技術士として業務にあたりますが、技術分野の仕様の中だけでは解決できない課題があることに気づき、より川上に位置する戦略コンサルティングの世界に飛び込むことを決断します。

戦略コンサルに転職してからは、汎用性の高い問題解決のアプローチ、社会や企業の内実など、期待していた通りのスキルや知識が得られました。それまでは建築・建設業界、かつ技術がメインだったので、視野の広がりは大きかったですね。

ただし、短期間のうちに高速で経験を積む戦略コンサルでは、数年での転職が当たり前。鈴木自身も一定の経験を積み、この先、どのようなキャリアを歩んでいくべきかを真剣に考えました。

「もっと能力を高めたい」という選択軸も大切ですが、私はそれよりも「自分にとってモチベーションを保てるテーマは何か」を考えていました。その答えがサステナビリティだったんです。振り返ると、災害支援や建設コンサルティングに携わっている時から、サステナブルなまちづくりには高い関心を持っていたと思います。

鈴木は事業戦略のポジションで採用を行っている会社を探し、複数の事業会社や商社を検討する中でNTTデータと出会います。最終的に鈴木がNTTデータを選んだ理由は大きくふたつありました。

ひとつは、どんな人と働くかということです。選考時には、後に上司になる人と何度も時間をかけて話をする機会がありました。私がこれまでに働いてきた環境はNTTデータとまったく違うので馴染めるか不安だったのですが、それを伝えると、「どんなことがあっても守ります」と言ってくれて。面接でそんなことを言ってくれる人は他にいないのでビックリしましたね。組織を率いる価値観にも共鳴して、この人たちと一緒に働きたいと思いました。

もうひとつの決め手は、NTTデータが変革のタイミングにあったということ。大規模な企業でありながら、サステナビリティ経営という点では途上にあり、鈴木の目にはまだまだ課題が多いと映りました。

それは逆に言えば、これからの発展性や活躍の余地が大いにあるということ。コンサルティングファームでも同様のプロジェクトに携わってきた鈴木にとっては、自分の経験を生かしながら新しい挑戦ができる、やりがいのある世界だと思えました。

対話を通じて、事業戦略とサステナビリティの更なる融合を目指す

NTTデータの中期経営計画では「Realizing a Sustainable Future」というスローガンを掲げ、サステナブルな社会の実現を目指しています。

鈴木が所属するコーポレート統括本部 サステナビリティ経営推進部では、経営のサステナビリティ化を進める上で必要なマテリアリティ(サステナビリティ経営観点での重要課題)(※)に関する目標設定や進捗管理、開示対応、サステナビリティのマインドセットの社内浸透、プロモーションなどを幅広く担っています。

(※NTTデータでは企業理念「情報技術で新しいしくみや価値を創造し、より豊かで調和のとれた社会の実現に貢献」することを踏まえて、「Clients’ Growth サステナブルな社会を支える企業の成長」を通じて「Regenerating Ecosystems 未来に向けた地球環境の保全」「Inclusive Society 誰もが健康で幸福に暮らせる社会の実現」を図るという3つの軸の配下に、9つのマテリアリティを設定しています。)

長年、お客様や社会インフラを支えてきたNTTデータの社員にとって、企業理念に根差したサステナビリティ経営の考え方は受け入れやすいものでした。一方で、お客様ごとに多様なシステム・サービスを提供しており、意識すべきマテリアリティもビジネスごとに異なります。また、サステナビリティは中長期の姿を対象としているため、3~6年程度を意識する事業戦略と結びつけて理解するには、更なる議論が必要でした。

鈴木の立場では同じコーポレート統括本部内にある経営戦略策定・実行を担う事業戦略室との連携が多かったものの、サステナビリティ経営は中長期のシナリオ・社会への影響を意識しながら、近い将来の事業につなげていくマインドセットが求められます。そのため、まずは改めてサステナビリティと事業の関連性を理解してもらう必要がありました。

これまでのコンサルタント経験からいっても、人の意識や気持ちを変えるのは一番難しいことです。サステナビリティを経営戦略に組み込むといっても、みな自分の仕事があり、それがサステナビリティと具体的にどう関わってくるのかはなかなかイメージできません。

そこで鈴木が取った手段が“対話”です。鈴木は事業戦略室との定期的な会議の場を設定し、次期中期経営計画に向けて何を行うのか、サステナビリティと事業戦略のどこに接点があるのか、話し合いを重ねました。この時の“対話”を通じて、サステナビリティに対する理解が事業戦略室の中で深まっていくのを実感。鈴木としても、さまざまな事業を行うNTTデータの風土やマネジメントスタイルなどを知ることができたと言います。

「サステナビリティは、事業戦略において思っていたよりも重要かもしれない」という言葉が、担当レベルの会話の中で出てきた時には嬉しかったですね。その後、少し時間を置いてから、上層部の方でもサステナビリティと事業戦略をアラインする動きが強まっていきました。当社代表の佐々木さんからの働きかけもありますが、“対話”によりボトムアップでも伝わっていた面も少なからずあると思います。

また、一連の業務を通じて鈴木が感じていたのは、仕事の“リアリティ” だったそうです。

戦略コンサルの時からクライアントの経営課題には数多く触れてきており、さまざまな課題が頭の中にマッピングされていました。ですが、それを自分ゴトとして捉えるには多少の距離感があったのは事実です。いまの環境では、すぐ近くに執行役員が座っており、経営に関する幹部の議論を目にする機会も多くあります。頭の中にあった経営課題がリアルなものとして、すぐそこに存在していることには新鮮な感覚を覚えましたね。また、それらの課題に取り組んでいる人たちが身近にいることで、気持ちの入り方も違ってきます。

戦略コンサルから事業会社への転職をした鈴木ならではのエピソードです。コンサルティングファームではなかなか触れにくかった課題やケースが、具体的なものとして立ち上がってくるまでのプロセスを間近で目にできたことは、鈴木の視野を大きく広げることになりました。

自分たちの会社を信じ、情熱を持って取り組む仲間たちがいる

鈴木がこれまでキャリアを歩んできた環境とNTTデータでは、事業内容だけでなくカルチャーや風土も違います。

鈴木自身、若干の不安を抱きながらNTTデータに入社し、これまでの環境との違いに戸惑うこともありました。ですが、サステナビリティ経営推進部には鈴木と近しい土木業界出身の部長がおり、カルチャーギャップなどの疑問や違和感に対する消化をこまめに支援し、入社後の立ち上がりを大きくサポートしてくれました。一方で、執行役員から一般社員までの上下関係がフラットである点は、むしろ外資系企業のように感じたそうです。何か課題があった時には、社員自身でスコープを捉え、執行役員に直接提案させてくれる雰囲気もあります。

NTTデータの人の特徴は “真摯”であること、鈴木はそう語ります。少なくとも鈴木が関わってきた人々に関しては、誰もが与えられたミッションに対して真摯に取り組んでいたそうです。それを証明するような出来事もありました。

私がこの業務に取り組み始めたばかりの頃、事業戦略とサステナビリティの分離が大きく、本当に融合できるだろうかと先行きが見えなかった時のことです。会議の中で、事業戦略室の部長から、「これまでの先輩方や、10年後の後輩たちが誇りに思えるような会社にしたい」という言葉が出てきたんです。部長という職位の社員が、まだあまり関係性もなかった私に対してそんなことを言えるなんて、と驚きました。

鈴木はこれまでのキャリアの中で、いろいろなクライアント企業に出会ってきましたが、必ずしも自分たちの会社のことをポジティブに語る人ばかりではありませんでした。しかし、NTTデータの社員は多くの人が自分たちの会社に対して愛着を持ち、より良くしたいと考えている。そのことが鈴木にとっては驚きだったのです。

また別の場では、「ワクワクできる北極星のような目標がほしい」と室長が語っていました。自分たちの会社が好きで、こんなに熱い言葉で語れる人が室長レイヤーにいるということも、すごいことだと思いました。

鈴木の目には、誰もが自分たちの会社に対して感謝の気持ちを持ち、会社のことを信じているように映ったと言います。そのような人たちと一緒に働くことで、鈴木自身の思いも少しずつ変わってきました。

「自分の会社なんだ」という意識が芽生えてきました。当たり前のことだと思われるかもしれませんが、私はNTTデータに入社するまで“クライアントがどうしたいのか”にフォーカスして生きてきました。それがいまでは、 “自分がどうしたいのか” に焦点が移ってきています。自分のいる場所を自分の力で変えていきたい、良い方向に向かわせたいと考えるようになりました。

この先の鈴木の目標は、サステナビリティ経営を追求すること。サステナビリティ経営については世界中の企業が模索中で、まだ答えというものはありません。だからこそ鈴木はサステナビリティ経営を追求しながら、究極的には、“経営とは何なのか”“真の意味での課題解決とは何か”といった本質にも踏み込んでいきたいと考えているそうです。

これまで立ち止まることなくキャリアを歩み、常に次なる目標を掲げ続けてきた鈴木にとって、挑戦に終わりはなさそうです。

※掲載記事の内容は、取材当時のものです