あるべき姿を描き、経営課題を解決しうるITインフラを模索する
2024年7月、TC&S分野は10年に一度というレベルの大規模な組織再編を実施しました。ソリューションごとに分かれていた組織体制を「営業・コンサル部門」と「デリバリ・マネージドサービス部門」という機能別の組織に再編。ソリューション軸から機能軸の組織に切り替わった背景について、ITインフラサービスの企画・開発を行うセキュリティ&ネットワーク事業部の統括部長の水野はこう語ります。
従来の組織ではセキュリティやクラウドなどのソリューションごとに事業部が構成されていましたが、いまやITインフラには境界線がなくなり、異なるソリューション同士が連動する部分も増えてきています。ITインフラを通じてお客様の経営課題に応えるためには、我々も広い視野に立ち、ITインフラの構成要素を柔軟に組み合わせて最適なあり方を考える必要が出てきているのです。
お客様が直面する経営課題として分かりやすい例の一つが働き方改革です。コロナ禍が一気に後押しした部分もありますが、多様な人々がいつでも・どこでも働けるようになることは、特に労働人口の減少が顕著な日本において重要なアジェンダと言えるでしょう。
そして、その新しい働き方を実現する基盤こそがITインフラです。水野が語るように境界線がなくなっているいま、ソリューション起点で何ができるかをボトムアップ的に考えるだけではなく、あるべき姿から逆算して最適なITインフラを取捨選択するアプローチが求められるようになっています。
こうした社会の動きに伴い、NTTデータが置かれている事業環境も大きく変わりつつあります。セキュリティ&ネットワーク事業部がお客様の抱える経営課題解決という上流に向かう一方で、逆に戦略的な領域をメインフィールドにしていたコンサルティングファームが下流の実行部分に進出。それぞれ異なる方向からITインフラにアプローチしている状況です。
激変する事業環境の中で、NTTデータはお客様に対してどのような価値発揮ができるのか、水野は次のように語ります。
これまでに社会インフラのようなミッションクリティカルなシステムを数多く手掛けてきたことによるお客様との信頼関係は、NTTデータの大きな価値です。その中でもNTTデータの強みと言えるのは、構想するだけでなく、責任を持って構築し、運用するところまで含めてお客様に向き合えること。何があっても逃げない誠実さというのは、私個人がNTTデータで働き続けている理由でもあります。
また、従来のITインフラには“守り”の印象が強かったものの、現在は“攻め”のITインフラへの変化も起きているそうです。その大きな要因の一つはデータです。収集したデータを分析することで人々のインサイトを可視化し、それらを経営課題や事業発展に活用することも可能になりました。
ITインフラは、かつてのように「安くて使いやすければいい」というコストに相当するものではなく、お客様のビジネスのトップラインを向上させるための投資対象という考え方に変わってきています。エッジコンピューティングからクラウドコンピューティングまでをカバーする“Edge to Cloud” のように、ITインフラに関わるすべての領域を一気通貫で対応できるのはNTTデータならではの提供価値と言えるでしょう。
高度化するITインフラ。サービスの構想力や目利き力がより重要に
セキュリティ&ネットワーク事業部では、国内外の通信キャリア回線サービス、ルータ、スイッチといったネットワーク機器だけでなく、AWSやAzureといったパブリッククラウド、Secure Service Edge(SSE)やSD-WANを含むSASE、コラボレーション系SaaS、モバイルサービス、デバイスなど、多岐にわたる要素を組み合わせたサービスを企画・開発し、お客様の課題解決に取り組んでいます。
先述のようにビジネスにおけるITインフラの価値やあり方が大きく変わりつつある中では、“正解”を見つけることが困難になっています。お客様が作りたいと考えているものが、必ずしもお客様の課題を解決する最善策とは限りません。その結果、要件通りにしっかり設計・構築するという既存のSIのアプローチでは根本的な課題解決が難しくなっています。
水野によれば、ITインフラの提案・構築において求められる能力も変わってきているそうです。
言われたものを作るのではなく、私たちがお客様の課題を踏まえてITインフラのあるべき姿を描き、お客様をベストプラクティスに導く能力が必要とされています。いわゆるSI力ではなく、能動的な姿勢によるサービスの企画・開発力が求められるようになっているのです。
そして組織再編の狙いにも通じるように、ITインフラにおける境界線がなくなりつつある中では、多種多様なサービスを組み合わせて最適なITインフラを構築するITアーキテクトの存在も欠かせません。
ITアーキテクトは専門性の高い職種になりますが、そこで鍵になるのはサービスの“目利き力” です。もとよりマルチベンダーであるNTTデータは最適な技術や製品を選択する“目利き力”を強みにしてきました。カタログスペックだけでは分からないところや導入時の現実的な苦労なども含めて、お客様にとって最適なアーキテクチャを提示することが求められています。
とりわけITインフラの分野では次々と新しい技術やサービスが登場しており、IoT、エッジコンピューティング、6G、IOWNといった次世代サービスや、国内・グローバルでの先進サービスも生まれています。サービスの“目利き力” の重要性はますます高まる中、社内・グループ内に先端技術専門の組織があり、海外に出張して新しいテクノロジーを学ぶ機会もあるなど、先進サービスに触れる機会が多いNTTデータの強みは際立っています。
これまでのテクノロジーの歴史を見ても、先進サービスのうち本当にビジネスになるのはごく一部でしょう。それでも、新しい分野に積極的にチャレンジできるのは、大きな事業基盤を持つ会社ならではの良さだと思います。知的好奇心を満たせる環境であるという点も、NTTデータで働く意味の一つと言えますね。
また、NTTデータでは大手企業や社会インフラに関わるプロジェクトが多く、ミッションクリティカルなシステムや社会課題に向き合うケースも多くあります。乗り越えるべき壁は非常に高いのですが、大きなスケールでお客様の課題解決やデジタル変革に貢献できるのもNTTデータでITインフラに携わる魅力です。
独自の理念を持ちながらも、自らを客観視し、変化を続ける組織に
水野によればNTTデータの強みの一端は組織力にあります。社会インフラや大規模システムなどのように乗り越えるべき壁が巨大だからこそ、組織的にさまざまなプロジェクトを推進し、周囲の関係者たちと一緒に課題解決に取り組む文化が根づいています。経験者採用についても、オンボーディングやチームビルディングを通じて組織の関係性を構築し、仲間意識や組織への帰属意識を高めながら実力を発揮できる環境が整っています。
こうしたNTTデータの組織風土はセキュリティ&ネットワーク事業部においても同様ですが、特に営業と開発の距離が近く、組織としての一体感が強い点は本事業部の特色であると水野は補足します。とはいえ、個人プレーが得意なメンバーがこの組織にフィットしないというわけではなく、多種多様なキャラクターの人財が活躍しているのもセキュリティ&ネットワーク事業部の特徴に挙げられるそうです。
いろいろなタイプの方が活躍できる組織であり、キャリアの面でもさまざまな選択肢があります。ネットワークの専門性を高めていくだけでなく、周辺サービスに“幅出し”することも可能です。ただ、活躍しているメンバーの共通項としては「お客様と対峙したい」という人が多い傾向がありますね。NTTデータで働く良さをしっかりと理解した上で入社された方は、入社後も活躍してキラキラしている印象があります。
そんな水野自身は新卒での入社以来、現在に至るまでNTTデータで働き、NTTデータの仕事のやり方やカルチャーに親しんできました。難易度の高いプロジェクトマネジメントも複数経験し、 “逃げることなく最後までやり切る” というNTTデータのDNAを身をもって体験してきました。
NTTデータらしい独自の文化や考え方が根づいていること自体は良いことであるとしながらも、「ひとりよがりになってはいけない」と水野は自らに警鐘を鳴らします。自分たちを客観視したい、自分たちでは気づきにくい問題点を知りたい、と水野が考える背景には数年前のある出来事がありました。
以前、私は現在の当社の社長である佐々木の下で働いていましたが、佐々木からのアドバイスでコーチングのコーチを半年間つけてもらいました。自分の考えを言語化することで自分の考えを固め、気づきを得ることが主な目的で、自分自身を客観的に見ることの重要性も知ることができました。当時の私は既にある程度キャリアを積んでいましたが、そのような時期だったからこそコーチングを受ける意味はあったと思いましたね。
NTTデータという会社自体も業界内では一定のポジションを築いており、事業規模も拡大しています。だからこそ、水野は意識的に自分たちを客観視することを心掛けており、経験者採用のメンバーには新しい風を吹き込んでほしいと強く願っています。
NTTデータにはさまざまな意見をフラットに受け容れるカルチャーがあります。経験者入社の方々が他の会社で得てきた経験や目線を積極的に発信してほしいです。そして社内に良い影響を及ぼしていただけると嬉しいですね。
これまでとは異なるアプローチでITインフラを考え、お客様の経営課題を解決するというミッションに向き合っている水野たちは、これまでの常識や自分たちの慣れ親しんだやり方に固執するつもりはありません。常に自己変化を続けるということこそが、真の意味でお客様への貢献につながり、NTTデータの価値に磨きをかけていくことでしょう。