成熟した知見と先進的な手法。そのどちらも経験できる部署を希望
決済方法の多様化や進化が急速に進む昨今。決済関連のモバイルアプリは、もっともユーザーに近いタッチポイントとしてクレジットカード会社にとって非常に重要な位置を占めています。
小野が担当しているクレジットカード会社のお客様においてもモバイルアプリは注力テーマの一つ。そのアプリの新規開発から直近の大規模リニューアルに至るまで、金融グローバルITサービス事業部が取り組んできました。
現在は開発チーム全体をリードしている小野ですが、新卒で入社後、最初に配属されたのがこのプロジェクト。しかも新規開発がスタートしたばかりというタイミングでした。まさしくモバイルアプリとともにキャリアを歩んできたといえるでしょう。
ここからは、モバイルアプリの軌跡とともに小野のキャリアを振り返ります。
NTTデータには、技術統括本部のように技術領域に特化した部署があることや、海外への事業展開を積極的に行っていることに魅力を感じて入社を希望しました。それに加えて、インターンシップなどで出会った同期や社員に朗らかな人が多かったことも印象的でしたね。自分の価値観に合う社風だと思えたことも大きかったです。
配属にあたって希望したのは、ウォーターフォール型の成熟したシステム開発と、アジャイル開発のような機動的な開発の両方を経験したいという点でした。どちらも経験できる場所として配属されたのが、金融グローバルITサービス事業部です。
一つの部署にいながら両方の開発スタイルを経験できるというのは、なかなか他にないことだと思います。これは、金融グローバルITサービス事業部で働くうえでの大きな魅力です。
そして参画した、クレジットカード会社のモバイルアプリ開発プロジェクト。本格的に始動したばかりで大勢のメンバーが開発に関わる中、アプリ内の一機能の開発やテストなどを任され「ひたすら手を動かす日々でした」と振り返ります。
無事にモバイルアプリがリリースされた後、次の大きなイベントとなったのが2020年に行った大規模更改。入社2年目だった小野は、技術統括本部から支援にきていた先輩と一緒にチームのマネジメントに携わるようになります。
しかしリリース後、お客様のシステム全体で大規模な障害が起き、モバイルアプリの開発チームも障害対応にあたることに。時をほぼ同じくして、先輩社員がプロジェクトを離任することになりました。開発チームにおける大黒柱のような存在が抜けるインパクトは大きく、その先輩の代わりを担うという重責が課せられました。
自分が先輩の代わりとして開発チームの指針を示す立場になりました。ですが、その時の私には先輩ほどの技術力や知識がなく、自分の判断に対して自信も持てませんでした。
不安はあったものの、「自分が果たすべきミッション」から目を背けることなく行動を起こします。自信を持って判断できるようになるためには、経験に紐づいた知識が何よりも重要だと考え、先輩にすすめられた書籍を読み漁り、モバイルアプリで採用していたSDK(ソフトウェア開発キット)を使って自分でアプリを作ってみるなど、ひたすら手を動かしながら知識を身につけていきました。
すぐに先輩に追いつけるわけではないとはいえ、手を動かし続けることで周囲の信頼も得られるようになり、自信にもつながっていったと感じています。
初のアジャイル開発。チームを率いて大規模リニューアルを完遂
その後はプロジェクトが安定し、比較的軽微な機能追加などを行う時期が続きます。その間も引き続きモバイルアプリの開発に携わり続けました。
プロジェクトは「安定期」でしたが、私にとっては「成長期」とも呼べる時期でした。イチから要件定義をして、開発全体をマネジメントしたのは初めての経験で。自分が担当しているモバイルアプリなのだと胸を張って言えるようになったのはこの頃からでした。
そして2022年10月、モバイルアプリの大規模リニューアルが動き出します。
新しいユーザー層へのリーチ、バーコード決済の導入という二点がリニューアルの主な目的でしたが、それぞれが難しい課題であることはいうまでもありません。
そこで開発体制の抜本的な変更が行われます。新たにアジャイル開発を採用し、デザイン会社を交えた「お客様・デザイン会社・NTTデータ」という三者体制が敷かれることになったのです。
もともとアジャイルに近い開発手法やCI/CD(Continuous Integration/Continuous Delivery)などは採用していましたが、本格的なアジャイル開発は初めてです。お客様側もプロジェクトに深く参画することが求められるため、リニューアルにかけるお客様の本気度が伺えました。
競合サービスとの差別化という点では、デザインが重要な鍵を握ります。今回のリニューアルでは、「いままでに見たことがないようなものを作りたい」というお客様のデザインに対する強いこだわりがありました。
しかし、デザイン性とシステムの実現性は相反するケースもめずらしくありません。意見の食い違いが起これば、デザイン会社との関係性が悪化してしまうことも。とりわけ先進的なデザインが重視されたリニューアルにおいて、どのように実現性を担保したのでしょうか。
いくら優れたデザインやアイデアであっても、実現できなければ意味がありません。そこで私たちは、お客様とデザイン会社と一緒になって上流の企画段階から意見を交わし合い、要件を具体化していきました。そうすることで、デザイン性もシステムの実現性も妥協することなく設計フェーズに入っていけたんです。
社内の開発チームに対しても、「なぜこの機能が必要なのか」「なぜこのデザインなのか」といった目的を共有し、方向性をまとめ上げていきました。すると、「なぜこれを作るのか分からない」というような不満の声はあがらず、むしろ開発チーム全体がモチベーション高く取り組めるという状態に。そして、小野の組織運営が功を奏したことで、お客様、デザイン会社、開発メンバーとプロジェクトに関わる誰もが納得いく仕上がりでリニューアルを完遂しました。
リリース後には、いままでのクレジットカードのアプリのイメージを覆すような独創性や社会的な影響力が評価され、世界三大デザインアワードのうち二つを含むデザインアワードを立て続けに受賞。そのうちの一つであるイタリアで開催された授賞式には小野も出席し、お客様やデザイン会社の担当者とともに喜びを分かち合いました。
お客様との飲み会の席で、一緒に連れていってくださいと冗談交じりに話していたら本当に実現して(笑)。自分たちの仕事が受賞という形で認められ、お客様もデザイン会社の方も喜んでいる様子を目にできたのは、うれしかったですね。
常に新しいことにチャレンジできる、刺激にあふれたフィールド
ここまで見てきたように、小野はモバイルアプリの新規開発のタイミングからプロジェクトに参画し、初回のリリースから直近の大規模なリニューアルまでのすべてのイベントに携わってきました。その間、新卒としてキャリアをスタートし、現在では複数チームのスクラムマスターを担うまでに成長しました。
これまで携わってきたのは一つのモバイルアプリでありながら、開発内容や役割は毎年のように変わっています。さらにはアジャイル開発やデザイン会社との協働といった新しい経験も積むことで、着実に視座を高めてきました。
開発する案件やチームの形、開発のスタイルは毎年変化しており、刺激のある毎日を過ごしています。自分の役割としても、最初は一部分の開発から始まり、いまでは開発全体をリードするようになりました。同じことをやっているという感覚はまったくありませんね。
いままでの経験を通じて、独自のマネジメント観を抱くようになった小野。特にアジャイル開発の経験は、マネジメントに対する考え方を大きく変える契機になったそうです。
アジャイル開発には「自己組織化」という考え方があります。これは一人ひとりのメンバーが自律的に動く組織のことを指しているのですが、「自己組織化」を醸成するのはマネジメントする人の働き次第だと考えるようになりました。
かつては、お客様の要望をもとに要件を具体化し、タスクを整理して開発チームに渡すのがNTTデータでの開発におけるマネジメントの仕事だと考えていたといいます。一方、アジャイル開発ではプロジェクトマネージャーという職位自体が存在せず、開発チームが自分たちでタスクを設定して業務を進めていきます。
個々のメンバーの責任が増すことから、当初は「仕事が増えて嫌がられるのでは」と心配していたそうですが、いざアジャイル開発が動き出すと、「自分たちの業務領域が広がっていくことに楽しさを感じる」という声が多くのメンバーからあがりました。
一人ひとりが自分のやるべきことを把握し、特に指示をしなくても他のメンバーとお互いに調整して開発が進んでいくのを見て、これが本当のチームワークだと思いました。環境づくりこそが自分の役割だと考えるようになりましたね。
さて、一つのモバイルアプリを通じてさまざまな経験を積み、成長を続けてきた小野ですが、この先のキャリアをどのように考えているのでしょうか。
将来的には、いままでに培ってきた強みを生かしながら海外に関する仕事にもチャレンジしてみたいですね。NTTデータはグローバルでも事業展開しており、キャリアの“幅出し”ができる会社なので、その環境を生かしたいです。
常に新しい経験ができていることから、「刺激のある毎日を過ごせている」と語ってくれた小野。NTTデータという舞台で、刺激的な日々はこの先も続いていくはずです。