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「住まい」の社会課題を解決する糸口は“仲間集め”にあり。異業種の共創パートナーと新たなエコシステムの構築へ。

昨今、日本の住まいを取り巻くさまざまな社会課題が顕在化しています。全国的に空き家が増え続け、地域の持続性や安全性が危ぶまれる一方、都心部では住宅価格が急激に高騰し、供給過多が問題になることもしばしば。こうした社会課題を起点に新規事業開発に取り組み、異業種の共創パートナーとともに新たなエコシステムの構築を目指しているのが、ソーシャルデザイン推進室の「住まい」プロジェクトです。チームリーダーを務める岡本守弘は、「住まいの価値を適切に評価できる新たな仕組みと座組が必要」だと考えています。スタートしたばかりの壮大かつ挑戦的なプロジェクトの魅力をご紹介します。

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日本固有の「新築至上主義」を変革する、壮大な挑戦

空き家の増加や住宅価格の高騰など、生活者と住まいを取り巻く社会課題は年々深刻化しています。こうした状況の背景には何があるのでしょうか?「住まい」プロジェクトのリーダーを務める岡本は、住宅に関する日本特有の文化や価値観を要因のひとつにあげます。

皆さん、マイホームを検討する時は自然と「新築がいいな」と思いますよね。実際、日本の住宅市場の約8割を新築住宅が占めるなど、日本人には「新築至上主義」が根付いています。

その一方で、例えば戸建て住宅は購入から10年20年と時間が経つと、どんなにメンテナンスを行っていても建物自体の価値はほぼゼロになり、土地の価値だけで評価されてしまう。そして次の世代が住宅を相続しても「価値がない、売れない物件」として扱われ、結果的に空き家問題にもつながっていくわけです。

新築住宅偏重な市場環境は世界共通ではありません。欧米では既存住宅の流通割合が約8~9割を占めています。流通が促進される理由のひとつは、住宅の基本的な性能から、過去の売買履歴、メンテナンス履歴など、住宅に関する多種多様な情報が登録・公開される仕組みがあるためです。この仕組みによって、物件の価値を公平に測ることができ、生活者は新築でなくても安心して住宅を購入できるようになるのです。

日本ではよく「一生に一度の大きな買い物」などと言われますが、アメリカでは人生において住宅を10回住み替える方もいるそうです。つまり結婚、出産、子育て、子どもの自立、老後の生活などライフステージの変化に合わせて既存住宅を売り、ニーズに合う住宅へと住み替える文化があるのです。

日本でも住宅に関するあらゆるデータを蓄積すれば、修繕・メンテナンスを丁寧に施した既存住宅には価値がつくはずです。そのように適切に建物の価値を評価できる仕組みや座組を作り、ひとつの住まいや長期ローンに縛られない社会を実現したいと思っています。

耐震補強や断熱性を向上した「良い物件」の流通が増えれば、今までは既存住宅市場で見向きもされなかったような空き家でもバリューアップして供給され、さらには都市のレジリエンス性も高まるはずです。その実現に向けて、「住まい」プロジェクトのチームは異業種の企業や官公庁・自治体などを共創パートナーに迎え、連携し合いながら新たなエコシステムの構築を目指しています。

すでに既存住宅の流通を手掛ける不動産仲介企業をはじめ、金融機関やリフォーム会社などともコミュニケーションを図っています。また、「ライフステージの変化」というキーワードから、結婚・出産関連の事業会社や事業継承を支援する企業や機関と連携できれば、違った視点の事業アイデアをいただけるかもしれません。異業種とどんな座組、サービスを実現できるかがカギになってくると思いますね。

既存事業やソリューションに縛られず、真の0→1を目指す

NTTデータにジョインする以前から、岡本は長年にわたって新規事業の創出に携わってきました。ただ、これまでの取り組みと現在の挑戦は「大きく異なる」と言います。

前職までは新規事業と言えども、あくまで既存事業をベースにいかに幅を広げていくかがミッションでした。一方、現在の「住まい」プロジェクトはあくまで社会課題起点でスタートしており、既存のソリューションや特定の顧客に縛られることもありません。

私自身、キャリアの集大成として社会を変革するような仕事がしたいと思ってNTTデータに来ましたが、本当の意味での0→1を、しかもこれだけのスケールで取り組めるというのは想像以上でした。おかげで以前使っている脳みそも違うと言いますか、視点や視座が変わってきた感覚があります。

そんな岡本が考える「0→1を実現するための秘訣」とは何なのでしょうか。

地道な仲間集めに尽きると思います。その点でも、NTTデータは公共・金融・法人とあらゆるパスを有していますので、非常に動きやすいです。それに社会基盤となるシステムの開発・運用実績も多く、国や自治体を巻き込んだ動きを目指せることも大きいですね。

実際、ある時は不動産業界の経営層と打ち合わせを重ね、またある時は官公庁との意見交換に臨み、さらには異業種交流会やスタートアップ企業のピッチイベントにも積極的に参加するなど、岡本は労力を惜しむことなく “仲間集め”に励んでいます。

ご挨拶の際に、「なぜIT企業の方が?」と驚かれることも少なくありません。たしかにNTTデータには全銀システムやマイナポータルと連携するシステムなど、活かせるアセットが無数にあります。しかし、このプロジェクトにとってデジタル技術はあくまで手段に過ぎません。

むしろ、私たちがどんな世界を作っていきたいのか。誰に、何を、どのように提供するのかといった本質的な事業テーマを自分の言葉でしっかり伝え、業種の垣根を越えてどんな連携ができるのかを一緒に考えてもらうことが大事だと思っています。

NTTデータの企業イメージを変え、社会変革をリードする存在としての認知度を高めること。それも自分たちのミッションのひとつだと考え、岡本は今日も新たな共創パートナーとの出会いを求めて奔走し続けます。

失敗をものともしない行動力が、大きな成功を生む

現在、「住まい」プロジェクトのチームは岡本を含めて7名で構成されています。メンバーは全員、社会課題への強い問題意識を持ち、自ら手を挙げて参画してきた人財ばかり。他社で長年にわたって新規事業の創出に従事してきた岡本は、「事業立ち上げの初期段階から、これだけの組織で動けるのはNTTデータならでは」と目を細めます。

ただし、「住まい」プロジェクトはゴールまでのステップが100あるとすれば、まだ1~2歩進んだ程度。私の社会人人生をすべてかけても終わらないんじゃないか、というくらい大きなテーマですので、これから入ってくる方も立ち上げメンバーと言えます。

チームは現在、大手不動産仲介企業とコミュニケーションを重ね、プロジェクト初となる実証実験の企画構想を進めています。先の長い道のりですが、今はまだない仕組みを作ることによって、生活者にとっての新しい体験や文化を作っていけることが何よりのやりがいだと、岡本は語ります。

ただ、新規事業開発の世界は「千三つ」、1000件のうち成功するのは3件だと言われるように、基本失敗の連続です。私も何度失敗しても数を打ち続けることで成功に導いてきました。だからこそ、新しい仲間にも失敗をものともせずに行動し続けてほしいですし、チームとしてもアジャイルで前進していきたいと思います。

「住まい」チームが求めているのは、「社会課題を解決したい」「これがやりたい」といった熱い想いを原動力に、本気で0→1を目指せるビジネスディベロッパです。岡本は高いモチベーションがあれば、経験の浅い方も歓迎したいと考えています。

ソーシャルデザイン推進室の室長もよく口にしていますが、大切なのは「自分が室長だったら」「自分が社長だったら」といった姿勢でプロジェクトに取り組む意欲です。誰かの指示を待つのではなく、自ら積極的に動ける方と一緒にアウトプットを生み出していけたら嬉しいですね。住まいの領域での経験者はもちろん心強いですが、他業界でいろいろな経験を積んできた方の視点を「住まい」領域に取り込むことで、思いつかなかったような発想が生まれるようなチームにしていきたいです。

社会を変える挑戦は、今まさに始まったばかりです。少子高齢化が進む中、今後も住まいと生活者を取り巻く問題は深刻化していくことでしょう。「新築至上主義」という日本固有の文化や商習慣を変えることは決して容易ではありません。しかし、いや、だからこそ、他では得難いやりがいが待っているはずです。

※掲載記事の内容は、取材当時のものです