法人分野は既に多様化!?
――法人分野でDEIを推進する背景を教えてください。
NTTデータグループ全体で推進していることに加えて、法人分野独自でも特に重要なテーマとして、DEIに取り組んでいます。法人分野では既に人財の多様化が進んでいるからです。ここ5年間で社員数が増え、現在は法人分野全体の半数近くが令和入社になりました。一昔前に比べて、それぞれの仕事に対する考え方は間違いなく多様化しています。
中でも経験者採用者数の増加は大きな変化です。過去には、新卒一括採用のみだった時期もありましたが、今は採用社員のうち約半数が経験者となっています。経験者採用で入社されたのは、IT技術者ばかりではありません。製造、物流、サービスなど各業界での知見・経験を持って、当社での活躍を期待された、NonIT(ITとは別業界)出身の方もたくさんいます。各業界に詳しい方とIT技術者のコラボレーションによって、イノベーションを起こし、お客様や社会の課題解決を目指しています。
採用が変われば、入社後の受け入れ体制も変えなくてはいけません。新しく入社された方と既存社員が、ともに能力を存分に発揮し、自己実現できる環境づくりが必要になってきています。そこには、多様な一人ひとりが輝き、チームとして成果を出すにはどうすればいいかという、DEIにつながる課題があります。
自律的にキャリアプランを描く
――DEIを実現するためには、どのような変化が必要でしょうか?
キャリアに対する固定的なイメージを変えることです。人それぞれのキャリアがあることを理解・尊重し、一人ひとりが自律的にキャリアを描けるようにしていかなければいけません。2023年度に実施された人事制度の刷新は、意識を変える足がかりとなるものです。
ひと昔前までは、新卒一括採用で皆が同じように社会人のスタートを切り、その後現場に配属され、OJTを中心に技術や知識を習得していました。ロールモデルとなるのは上司や先輩です。その背中を見ながらキャリアを積んでいくという流れでした。
しかし、現在はキャリアに対する従来のイメージを一律に当てはめることが難しくなっています。経験者として入ってきた方であれば、なおさら目指すものが違ってくるはずです。
これからは一人ひとりのキャリアプランが出発点です。プランに基づいて本人の意向と仕事をマッチングし、成長につなげていくスタイルを広めていきたいと考えています。
キャリアプランの中には、育児や介護と両立させたいという希望も含まれます。そこは会社としてしっかりサポートしていかなければいけません。今、特に注視しているのは男性の育児休職の取得率です。男性の育児参加状況を把握しつつ応援していきます。
自律的にキャリアプランを描く意識と、お互いのキャリアを尊重し合える職場の雰囲気を、業界や社会に先駆けて実現したいと考えています。
社外からのパーセプションも変える
――業界に先駆けて実現することが重要なのでしょうか?
スピード感をもって取組を進めていくことによって、パーセプションチェンジ※にもつなげられます。多様な人財が生き生きと活躍できる組織は社外から見ても魅力的に映り、取組に賛同する仲間が集まってくれるようになるはずです。
また、私たちだからこそ、早期に変化を生み出せると確信しています。実はIT業界は、多様なキャリアを考える上でとても有利です。今の社会ではITが関連しない業界・分野はありません。幅広いお客様と仕事をしているため、あらゆる種類のキャリアを社内で追い求めることができるのです。
さらに、この業界では、リモートワークの活用など、柔軟な働き方ができます。これはコロナ禍によって気づけたことです。以前は皆が出社しないと仕事にならないことも多かったのですが、実は出社しなくても問題なく仕事を進められることが分かりました。これは、大きな意識の変化といっていいでしょう。
そういった意味では、私たちのような業界は有利なポジションにいます。私たちだからこそ、新しいキャリアや働き方を実現できるのだと信じています。
※顧客からの認識の変化を促す施策のこと
ベースとなる社内文化の浸透
――HRにとっては、どんなことが推進上の課題になりますか?
自律的にキャリアを描いていく意識を社内に浸透させていくことが課題です。それが新しい人事制度運用のベースになります。
一方で、もともと私たちがもっている優れた文化も、改めて確認する必要があります。例えば、キャリアプランの中にはオフタイムとの両立も含まれ、時にはプライベートの事情で休職した方を周りがカバーすることも必要になります。そのとき、周りの社員には寛容さが求められますが、これはNTTデータ共通の価値観「Values」の1つであるTeamworkにつながるものです。私たちの仕事は皆で取り組まないと成果が出せないものばかりだったため、もともと助け合う精神が文化として根付いていました。
しかし、冒頭にお話ししたとおり、全体の半数近くは令和入社の方です。Valuesについて誰もがイメージをもって行動に移せるとは限りません。Valuesで大切にすべき価値観について再確認し社員同士で議論する場であるValues Weekなどを通じて、Teamworkという文化を改めて共有していく必要があります。
生き生きと働ける組織づくりのために
――最後に、改めてメッセージをお願いします。
NTTデータがお客様を含めた社会全体に対して貢献できる範囲は広がり、社会における企業としての重要度も高まっていると感じています。どんな業界・分野であろうと、ITを使わない限り前に進めない世の中になっているからです。
社会を前進させる役割を担うのはデジタル人材ですが、実はNTTデータはその中で大きなポジションを占めています。日本のデジタル人材は約110万人。そのうち国内事業会社であるNTTデータ社員は約1万人、私たちの仕事に関わる技術者全体となると25万人にもなります。私たちが変わったこと、取り組んだアクションが業界全体に波及します。ひいては、社会に対しても大きなインパクトになります。
DEIもそうですし、サステナビリティ経営も、男性の育休も。それだけの大きなインパクトがあると認識して、DEIに取り組んでいきます。これからも情報発信をしていきますので、私たちの取組にご賛同いただけると嬉しいです。
※ NTTデータ法人分野におけるDEI情報発信の取り組みについて
DEIをCSR(企業の社会的責任)としてだけでなく、多様な人財を活かしてイノベーションを生み出し、価値創造につなげる取組として捉えています。(参考:ダイバーシティ経営の推進 (METI/経済産業省))
DEIには性別・年齢・人種や国籍など様々なテーマがありますが、今年度は全社一体となって進めているキャリア自律や働き方の柔軟性、また近年増加している経験者採用にフォーカスして情報発信します。