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前提を疑い、真の社会課題を探る。未来構想力で地域活性化をめざす

人口減少が著しい日本では、現在さまざまな社会課題に直面しています。そうした中、NTT データの公共・社会基盤分野では、社会課題ドリブンで行動できる人財を増やすための施策「コンサルティング強化プログラム」が実施されています。今回は、プログラムのメンバーである末廣 潤一のストーリーをご紹介します。学生時代から「地域活性化」に関心を持つ末廣が、どのような想いで日々の業務やプログラムに取り組んでいるのか。その挑戦の軌跡をひも解きます。

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社会貢献をめざしNTTデータへ入社し、新規ビジネス立ち上げなどを経験

広島県出身という自身のバックグラウンドから、同じ日本とはいえ地域によって経済状況や生活環境に大きな違いがあることを昔から感じていたという末廣。学生時代から地域活性化について関心を寄せており、大学でも地方創生に関わる分野を学びました。

学生時代は、地域活性化のための手段をあれこれ模索していました。「政治」という手段に着目し、地方議員のインターンを経験したり、発信力という点でマスコミなどへの進路を考えたり。業界や職種は問わず、何らかの形で社会をより良くしたいと考えていたんです。

そうした中で、入社したのがNTTデータでした。決め手は、自治体や金融など幅広い社会インフラを担うシステムを手がけており、社会貢献性の高い仕事ができるという点でした。入社後、配属となったのは開発部門。学生のころはなじみがなかったITやシステム開発について、最初の配属先で業務を通して学べた経験は、その後のキャリアにとって大きな収穫になったそうです。

いくら社会課題を解決したいと考えて構想を描いても、それを実装するところまで行き着かないと意味がありません。絵を描くだけでは問題の解決にならないのです。どんな構想も最終的には実装が必要だという点で、欠かせない経験を積めました。

開発の後、末廣はいくつかの部署でビジネス企画や営業などの経験を積んでいきます。その中でも大きな転機になったのが農業関連の新規ビジネス立ち上げです。

本部長の掛け声のもと、「飢餓を救う」という壮大な目標に向けて新規ビジネスの「穀物工場」を企画しました。当時流行り始めていたレタスなど可食部が多い葉物野菜の「植物工場」ではなく、カロリーの高い穀物を工場で栽培できれば、農地に適さない土地でも穀物生産ができ、飢餓をなくすことに貢献できるのではないかと考えたのです。

NTTデータとしてもまったく新しい試みとなる農業ビジネスを形にするため、末廣は栽培施設を持つ研究所や食品会社に共同研究を持ちかけるところから挑戦。最終的にビジネス化には至らなかったものの、その時に得たものはとても大きかったと語ります。

NTTデータではなかなか経験できないビジネスに携わることができましたし、飢餓で苦しむ人々をどうしたら救うことができるのか、一人の人間として想いを馳せるようになりました。この経験から、社会課題をリアルなものとして、自分事として考えられるようになりましたね。

その後、末廣は府省共通のプライベートクラウドプロジェクトの営業担当を経て、現職であるグループ事業統括部への異動の打診をされます。自身で希望したわけではなかったものの、末廣の想いを汲み取った声掛けでした。

入社後も地域活性化に携わりたいという想いは一貫して持っていました。特定の部署への異動は希望していませんが、飲み会などのフランクな場では「いつか地域活性化につながるビジネスがしたい」とたびたび話していたことを気にかけてもらえていたようです。

「地域活性化に携わりたいなら、まずは地域の実情を知ることが大切だ」という上司からの言葉もあり、地域ビジネスを行うグループ会社を支援するグループ事業統括部への異動を決めました。

グループ会社との連携強化で、地域が抱える問題の解決を支援する

NTTデータグループには北海道から九州まで9つの地域会社があり、それぞれがその地域に根ざす企業や自治体などのお客様のビジネス支援に取り組んでいます。末廣が所属するグループ事業統括部では、これらの地域会社を含むグループ会社12社の連携責任組織として、事業管理・ビジネス拡大支援を行っています。

これまでは各グループ会社が地域ビジネスを牽引していましたが、今後は日本のマーケット全体においてより大きな成長を実現するため、NTTデータ本社とより一体となって戦略を策定し遂行していこうとしていこうとしています。

末廣によれば、現在の業務の難しさは「末廣自身が直接お客様のもとへ伺うことが難しい」という点にあります。地域会社等のグループ会社は全国に存在することから、全国のお客様のところに実際に足を運ぶことは困難です。だからこそ、地域ビジネスを強化するためにはグループ会社の声に耳を傾けることが欠かせません。

現場の状況を知らずに俯瞰して口を出しても一体となった事業遂行はできないと考えています。私が現場の苦労や状況を十分に理解できているのかというと、まだまだギャップもあると思っています。できる限りグループ会社の現場に足を運び、しっかりと関わりながら一緒に戦略を練っていくことが必要ですね。

一方、地域ごとに状況はさまざまとはいえ、共通する課題もあります。自治体をお客様としたビジネスに関していえば、2040年に向けて超高齢化と労働力不足が加速していく中で、自治体の職員も不足するという問題が指摘されています。これは日本全国に共通する社会課題の一つです。

自治体職員が不足する状況でも住民サービスを維持していくためにはITの力が必要です。もちろん既に個々の自治体では取り組みを進めていますが、システムの共同利用を進めるなど、より効率的なIT活用が求められる中で、NTTデータグループが介在する価値は大きいと感じています。

その他、自然災害も多い日本では人命救助でのIT活用の需要も高まっています。災害時に避難所までたどり着けない人へのフォロー、健康状態の把握、物流問題の解消――。解決すべき問題は数多くあります。

そんな問題意識を持っていた末廣に、思いもよらない新たなチャンスが舞い込みました。それが、コンサルティング強化プログラムへの選出です。このプログラムは、社会課題ドリブンでアクションを起こせるよう、行動やマインドの変容を目的としています。以前から社会課題に関心があった末廣は参加を決め、「災害時の人命救助」をテーマに設定しました。

あえて本務とは異なるテーマにしました。私は防災の専門家ではないので前提知識から学ぶ必要がありましたが、業務とは違うチャレンジができること自体にやりがいを感じましたね。

末廣のほか、プログラムの参加者も同様に社会課題への意識やモチベーションが高いメンバーばかり。社会課題への関心や高い熱量を持った人財たちと新たなつながりを得ることができたことも末廣にとって大きな収穫になりました。

地域の未来を構想し、「事業パートナー」としての信頼を築く

プログラムでは参加者の「行動変容」と「マインド変容」を狙いに置いています。プログラム開始時点で既に豊富な経験を積んでいた末廣ですが、変化はあったのでしょうか。

プログラム開始の際に、分野幹部から「前提を疑え」という言葉がありました。ある社会課題に対して、ニュースなどを通じて「知っている」と思っていても、実際に調べてみると想像とは違うことも多々あるものです。社会課題といわれているもののも、一度立ち止まってみて、「本当にそれは社会課題なのか」「誰にとっての問題なのか」と考えてみる癖がついたのは大きな学びだったと思います。

また、他の参加者たちが設定したさまざまなテーマを見ながら、「世の中にはまだ解決できていない社会課題がこんなにたくさんあったのか」と改めて驚いたことも印象に残っているという末廣。社会課題に対する解像度の向上はプログラムを通じた変化の一つでした。

また、NTTデータはお客様のITパートナーから事業パートナーへと変わることを方針に掲げています。末廣が考える事業パートナーの姿とは、「より良い社会の姿を提言し、しっかりとした形で実装し、成果を実感できる世の中をつくる」ことができる存在です。

それは地域に対しても同様であり、中長期の視点に立って地域の未来を描く「未来構想力」が必要だと末廣は強調します。未来からのバックキャストで課題を設定し、ビジネスへの紐づけを考えるのはNTTデータが重視しているビジネス創出のアプローチでもあります。

中長期の視点に立つ以上、もちろん1〜2年でビジネスが形になることは稀なケースです。「5〜10年後にビジネスになればいい、というくらいの気持ちで忍耐強く取り組まなくてはなりません」と末廣。さらに、社会課題に向き合う点においてNTTデータには大きな可能性があるといいます。

経営の土台となるビジネスがしっかりしており、未来を見据えたビジネス構想ができるのは企業としての体力があるNTTデータだからこそです。グループ会社含めてNTTデータグループ一体で、より良い社会の実現に貢献していきたいですね。

グループ会社の事業統括という現在の業務についても、中長期で未来を考えて、そこに向かって進んでいく支援がしたいと語る末廣。そこには、グループ会社の社員だけでなく、自治体や地場企業、地域の金融機関など、「自分たちの地域を良くしたい」という想いを持った人々が大勢います。

そうした地域を支えるプレーヤーの方々からNTTデータが事業パートナーとして認めてもらうためには、これまでの実績だけでなく、やはり地域の未来の姿を描ける「未来構想力」が重要になります。その議論の土台になる地域の未来の姿を考えるのはグループ事業統括部にいる自身のミッションだと末廣は考えています。

かつてはITの力を使って地域活性化に貢献したいと考えてNTTデータに入社した末廣。いまも変わらぬ地域への情熱と、これまでの業務で得てきた数多くの経験、そしてプログラムでの学びも活かして、地域の明るい未来をつくるために挑戦を続けていきます。

※掲載記事の内容は、取材当時のものです