要件の案件化をリード。「開発担当者」に求められる業務範囲とは
同じ事業部にいながら、これまで顔を合わせる機会はなかったと言うふたりですが、その業務内容には通じるところがありました。
2011年入社の村上昇平は、BizXaaSオムニチャネルを使ったECサイト開発のスペシャリストと目される存在。BizXaaSオムニチャネルとは、SAP Hybris commerceをベースとし、商品・在庫・顧客情報を一元管理することで、オムニチャネルの実現と顧客満足度の向上に貢献する、NTTデータのプラットフォーム型ソリューションです。
村上 「現在は、BizXaaSオムニチャネルを活用し、複数国を対象としたグローバルECサイトの構築プロジェクトに携わっています。BizXaaSオムニチャネルの特徴を活かし、各国の通貨や言語に対応したサイトを同一プラットフォームで運用する仕組みを構築しました。すでにリリースは済んでいて、今は運用フェーズと追加開発が並行で進んでいます。私は追加開発の担当として、週に1~2回はお客様と打ち合わせの機会を持ちながら追加機能の検討・提案を行って、開発に入る前の“案件を作る”段階から主導しています」
永井美朱希の入社は2015年。オムニチャネル戦略として大手小売業のお客様向けのECサイト開発を経験した後、現在の案件であるWebアプリ開発プロジェクトへ。2019年現在は、村上と同じような立ち位置で仕事をしているといいます。
永井 「現在携わっているのは、同じ大手小売業のお客様の、エンドユーザ向けWebアプリ開発プロジェクトです。すでにWebアプリのサービス開始はしていて、現在は追加開発のフェーズに入っています。村上さんの案件と同じく企画・提案から行い、開発からリリースまでのサイクルを短いスパンで回しています」
設計書を起こして、コーディングをして……というイメージが強い「開発」の仕事。しかしふたりとも、それより上流フェーズからの広範な役割を担っています。
「IT」とは別の決め手で選んだ、SIerへの道
お客様と対話する機会も多いというふたり。現在の担当業務は、入社前に望んでいたものに近いと口をそろえます。
高専の制御情報工学科を卒業後、NTTデータに入社した村上は、次のように語ります。
村上 「高専に入ったのは、ITやパソコンに強い関心があったからではなく、普通高校より自由な校風や進路の選択肢が広い点に惹かれたからです。1年生のころからJavaやC言語でプログラムを書く授業がありましたが、プログラミングのおもしろさにのめり込むタイプではありませんでした。
それよりも、人が “実現したいこと ”をシステムに落とし込むためにはどうすればいいかを考えることにおもしろさを感じ SIerを志望するようになりました。幸い、入社当初からいわゆる “開発 ”一辺倒ではなく、思い描いていたような働き方ができています」
大学の数学科出身の永井も、入社の決め手は「IT」とは別のところにあったと言います。
永井 「大学時代はずっと塾講師のアルバイトをしていて、3~ 4年生のころはチーフとして教室運営にも携わっていました。物事をかみ砕いて説明して “わからない ”と困っている人に理解・納得して喜んでもらえることや、教室運営を自らで推進していく経験が楽しくて、コミュニケーションを通じて人を喜ばせることのできる仕事がいいな、と思うようになりました。
最終的にSIerの道を選んだのは、日々変化が求められる業界の方が自分の性に合っているという直観が働いたから(笑)。今は、お客様と頻繁にコミュニケーションを取りながら新たな“ものづくり”に関わることのできる環境にいることができ、日々やりがいを感じています」
村上は、入社以来ずっとECサイトの構築案件に携わってきました。そのきっかけをつくり出したのは、ほかでもない村上自身です。
実は、就職の際にSIerを志望した理由はもうひとつあったと言います。それは、アパレルのECサイトに携わる仕事がしたいということ。もともと洋服が好きで、服飾の専門学校への編入まで考えたことがあると言う村上。配属決定前の事業部紹介で、ある事業部がECを手掛けていると知り、“自分が楽しく仕事をするには、そこに配属してもらうしかない!”と、独自に手書きのアピールシートを作成して面談に臨み、希望通り配属してもらうことができました。
村上 「そのような準備をして面談に臨んだ人はほかにはいなくて、配属後もちょっと話題になりました(笑)。業務経験を積むうちに、 “アパレル ”という部分へのこだわりは薄れていきましたが、入社当初のモチベーションになっていたのは間違いありません」
変わり行く業界動向を見定め、真の課題を把握
今後ますます競争が激化し、顧客ニーズへの迅速な対応が求められる流通・サービス業界。そんな業界の“今”について、これまで携わってきたお客様の業態を念頭に、それぞれの認識を語ります。
永井 「あらゆる業界で人手不足が叫ばれる中、大手小売業のお客様においては、ITを使っていかに業務の省力化を図っていくかが重要な検討事項になっています。映像解析技術と各種センサーを駆使したAmazon Goがアメリカでオープンして日本でも話題になりましたが、国内でも“無人コンビニ”や“キャッシュレス決済カフェ”が登場し始めています。店舗業務にITを組み込むことで、現場の負担を軽減する。この風潮は、間違いなくこれから加速していくでしょう」
さらに、小売業におけるIT活用には、もうひとつの主眼があると言います。
永井 「これから日本の社会が人口減少に向かう中で、いかに顧客を囲い込むのかという CRMの文脈でのアプローチです。より多くの顧客接点を持ち、パーソナライズした情報を顧客に届けるためにITを活用する。私が携わっているアプリも、お客様の CRM戦略のひとつに位置付けられます」
また、ECサイトの構築案件に長年関わってきた村上は、お客様が自社内に抱える課題に目を向けます。
村上 「ECの構築に携わっていると、“EC×実店舗”とか、“EC事業部×各商品事業部”というように、お客様内での“溝”を感じる場面が少なくありません。ECの台頭による実店舗での売上減少を懸念したり、EC事業部に対して商品を“卸す”立場にある各商品事業部が、商品を卸した後の売上増加の見込みに疑問を呈したり……というお話を耳にしてきました。
ですから自分たちの役割は、単に ECを構築するだけではなくて、他部署の協力も得ながら、ユーザーの目線で魅力的な ECをつくるために何ができるか――というアイデアを出すことだと認識しています。実際、お客様とはそういった部分について意見を交換することも多いですね」
その上で、国内のEC市場には、まだまだ拡大の余地があると村上は見ています。
村上 「アメリカや中国などの海外と比べると、日本における EC化率は低い水準にありますが、全産業においてEC市場は伸び続けており、日本のユーザーも海外のECサイトで容易に買い物することができます。ユーザーの“流出”を防ぎつつ、自分たちが構築したお客様のサイトを利用してもらうためには他社とどう差別化するべきか、という点も一緒に考えていきたいと思っています」
流通・サービス業界の未来を、お客様とともに切り開く存在であるために
お客様の“今”に精通し、蓄えた知見をもとに“これから”を語るふたり。その先に、どんな展望を描いているのでしょう。
永井 「お客様と一緒に、『未来を考えられる』ようになりたいです。今は、実現したい少し先の未来がすでに存在していて、それをITで実現するためには……というステージでお客様からお声掛けいただけるわけですが、未来を描くところから立ち会える存在になりたい。そのためには、未来を予測する力が必要で、新しい情報のピックアップやサーチなど、日々の勉強が不可欠。まだまだ、自分にはその努力が必要だと感じています」
村上 「私は、流通・サービス業における、これまでにないまったく新しい概念のサービスを打ち立ててみたいと思っています。『EC』という枠組み自体はすでに完成されたものなので、新たな機能の追加はあるにしろ、サービスとしての行き詰まり感だったり、顧客の囲い込みの限界だったりがあると思います。それを軽々と飛び越えていくような新たなサービスを生み出したいです。そのためには永井さんが言うように、未来を予測して考えるクセを付けないと、ですね」
最後に、業務に取り組む上で大切にしていることを語りました。
村上 「『何事にも本気でぶつかる』そして『向上心を忘れない』。このふたつを肝に銘じています。学生時代は、何事も “そこそこ ”で流してしまっていたけど、社会人になったらそれじゃダメだ、と。『何事にも本気』の姿勢を大切にしています。もうひとつの『向上心』は、年次が上がっても目線が下向きにならないように、という自分への戒めです。同じ能力があったとしても、向上心を持たないと成長が止まってしまうと思うので。
人生における座右の銘という意味では『死ぬ時に後悔したくない』。あらゆる選択の場面で、この想いが指針になっています」
永井 「私は『行き詰まりは展開の第一歩』という言葉を大切にしています。行き詰まったときこそ、それを乗り越えようと立ち止まり考えることで新たな展開(成長)につながるという意味なのですが、自分にとって困難な状況も、さらに一段階上のレイヤーに上がるためのチャンスになると捉えています。今も業務では、自身にとって背伸びをすることも多いですが、行き詰まった時ほど積極的にトライするように心掛けています。
そして、対お客様という意味では、お客様にとっての“副班長”のような立ち位置で、目指すゴールに向かって、圧倒的な行動力と推進力で動くように心掛けています。お客様は常にスピード勝負の世界でビジネスをされていますので、当然私たちにもスピードを期待されていますし、その中で自分が“親身になって動いてくれる”存在と思っていただけたら嬉しいので」
開発案件の企画・提案フェーズから、プロジェクトに携わるふたり。その目は、お客様とともに流通・サービス業界の“未来”を見据えています。