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「プロセス改善」の専門家として、大規模開発の品質&スピードアップに貢献する

2020年2月に新設されたテクニカル・グレード(TG)制度は、高度な専門スキルを有するスペシャリスト人財が、特定の技術や知見に磨きをかけながら自分らしいキャリアパスを描けるNTTデータ独自の人事制度です。公共・社会基盤分野のプロジェクト推進統括部では、このTG認定を受けた技術者が実に18名も在籍しています。その一人である寺倉 典宏はもともとプロジェクトマネージャー(PM)志望でしたが、当社入社後に「ソフトウェアプロセス」技術と出会い、独自の道を追求することに。寺倉のキャリア観を変えた体験とは?そのストーリーを紐解きます。

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自動化ツールに携わって気づいた、「プロセス」の重要性

前職でSEやプロジェクトリーダーとして経験を積んできた寺倉は、「将来は大規模プロジェクトをコントロールできるPMになりたい」と考えてNTTデータに転職しました。そんな寺倉のキャリア観は、入社後に大きく変化していきます。

最初の転機は、公共ビジネス推進部(現プロジェクト推進統括部)の技術戦略担当に配属されたこと。この部署は技術スペシャリストが集まる分野横断型の組織であり、技術戦略担当のミッションは卓越した技術力でプロジェクトを最上流から支援することにあります。上司や同僚と接した寺倉は、「これはとんでもないところに来たぞ」と衝撃を受けたと言います。

自分としてはシステム開発やプログラミングに関しては一定以上の技術力を身につけてきたつもりでいました。それでも、「このチームで自分が一番後ろなんじゃないか」と思うほど周囲と技術力の差を感じましたし、「まだまだ学べることがたくさんあるんだ」とうれしくなりましたね。

当時の公共・社会基盤分野では、大規模なシステム開発をいかに効率化するかが重要課題であり、各プロジェクトで開発自動化ツールの活用が進んでいました。寺倉も熱心にツール導入支援に取り組みましたが、さまざまなプロジェクトを経験するうちに、ツールを機能させるためには「ある領域」の改善が必要だと気づきます。

我々の目的はあくまで開発の生産性向上であり、単にツールを導入すればプロジェクトがハッピーになるわけではありません。むしろ効率化の源泉は「開発プロセス自体の改善」なのではないかと、目線が変わっていきました。

この体験を機に、寺倉は開発プロセスの専門家としての道を歩み始めます。まずは製造フェーズのプロセスを定義・設計することから取り組み、全社横断型で技術的に難度の高いプロジェクトを一手に担う技術革新統括本部への異動を通して経験と知見を深め、プロジェクトの最上流である計画の立案段階から参画するように。開発プロセスの効率化を通して、プロジェクト全体に大きな効果をもたらすことに他にはないやりがいを感じた寺倉は、「今後も現場の第一線でソフトウェアプロセスを追求し続けたい」と考えるようになり、TG認定の取得に至ります。

2020年にTG制度が新設された時は、これで自分なりのキャリアパスを切り拓けるぞと希望を感じました。特にプロジェクト推進部には制度の開始当初からロールモデルとなるTGの先輩が在籍しており、現在では18名を数えるほど。同じ考えを持つ技術特化の人財がたくさん活躍していたおかげで、どの選択肢を選ぶべきか容易に決断できましたね。

「技術は万能ではない」という挫折が、次の成長の糧に

寺倉は自身が取り組む開発プロセスの改善は、公共・社会基盤分野で数多く進行している大規模プロジェクトでこそ大きな効果を発揮すると感じています。

前職の時は、生産性を高めるために自分自身の技術力を100上げようと一生懸命でした。しかし、協力会社を含めて何百人もの人財が稼働する公共・社会基盤分野の大規模プロジェクトでは、メンバー一人ひとりが10、20、50と改善していけば数千、数万の効果を発揮します。

逆に言えば、プロセスに問題があればマイナスも大きくなるということ。そういった意味でも非常に重要な要素だと思っています。

公共・社会基盤分野では社会インフラを支えるミッションクリティカルな案件も多く、高品質を担保するうえでも最適な開発プロセスの構築は重要度を増しています。その一方で社会のあり方が目まぐるしく変化する時代を迎え、公共・社会基盤分野のシステム開発には品質だけでなく、スピード感も問われるように。プロセス設計にも、新たな発想が求められています。

ここ数年で、公共・社会基盤分野のウォーターフォール開発の中に、いかにアジャイルを取り込むかといったチャレンジが一気に増加してきました。

そこで、例えば詳細設計から結合テストまでの特定フェーズはアジャイルで回し、どれだけ効率化できたかを定量的に計測するなど、我々も開発現場のメンバーも、今までやってきた手順を常に改善できないかと試行錯誤しながら取り組んでいます。

寺倉の支援は、こうしたプロジェクト全体の開発プロセスの定義から、プロセスや品質などの効果検証の効率化、最適なプロジェクト管理ツールの導入など細かな部分まで多岐にわたります。最近では品質評価にAIの活用を検討するなど、プロセス技術のさらなる向上にも余念がありません。

しかし、寺倉自身は「プロセス技術は万能ではない」ことを常に肝に銘じていると言います。きっかけは、数年前に起こった大規模なトラブル案件にサポートで携わった経験でした。

当初、静的解析ツールを導入して開発工程の改善点を見つけられれば、自分の持つプロセス技術で解決できるだろうと考えていました。しかし、まったく立て直すことができず頭を抱えました。

このプロジェクトは最終的に公共・社会基盤分野の全事業部から優秀なPMや技術者が支援に集結。プロジェクトマネジメントの基礎部分から見直すことで、ボトルネックを発見していきました。

自分の技術だけではプロジェクトを救えないんだと挫折感を味わうほど、大変な案件でした。しかし、各分野の専門家が集まり、本気で議論し合ったあの場でなければ得られなかった学びもたくさんあります。

プロジェクト管理の基礎をおろそかにしないことが、最適な開発プロセスを構築する第一歩となる。実体験から得た気づきを、寺倉は今も大切にしています。

経験と知識を活かし、後輩の育成にも貢献していきたい

寺倉は、「TGを名乗るからには、ソフトウェアプロセスに特化した専門人財として、これからも歩くスピードを緩められない」と覚悟を固めています。その一方で、技術研鑽や新しい知見の習得に取り組むうえで、TGを取得したからこそ得られる機会も多々あると言います。

TG認定を受けるためにはまずP-CDPという高度な社内資格を取得する必要があるのですが、この資格を取ったことで他部署の部長・課長級の方や社内のさまざまな有識者とつながることができ、得られる情報のレベルも高まりました。

それに同じ部署だけでも18人のTGがおり、TGの先駆者との会話から高度な技術情報を得ることもたくさんあります。

現在はアプリケーションスペシャリストのチームに所属し、専門人財としてプロジェクト支援を行うだけでなく、後輩の育成にも努めています。その際、参考にしているのは自身に対して上司がしてくれたフォローアップのあり方だと言います。

私の上司もソフトウェアプロセスの専門人財であり、TG認定をめざしていた時は「プロジェクトの計画段階から参画して、プロセス改善の高度な実務経験と実績を積んでいこう」と、積極的にアサイン調整をしてくれました。

今一緒に働いている若手メンバーにも、それぞれめざすキャリアがあると思うので、「目標に対してどんな経験や技術が足りないのか」といった目線でコミュニケーションを取り、育成プランを考えるように心がけています。

若手エンジニアのキャリア形成をサポートしながら、自分自身もさらなる成長を図り、プロセス技術だけでなく幅広い技術領域の知識習得に取り組んでいく。それが寺倉の今後の目標だと言います。

そして自身も転職経験者である寺倉に、最後の質問として「NTTデータへの転職を考えている方に対してどんな点を会社の魅力としてアピールすべきか」と尋ねたところ、「あらゆるキャリアの選択肢があること」だと即答してくれました。

私自身、最初はPMをめざしていたのに、今は技術特化の道を歩んでいます。自分次第でキャリアチェンジがいくらでもできる会社ですし、どんな将来を志向したとしても必ずロールモデルとなる方が社内にいます。

そうした方と気軽にコミュニケーションを取ることもできますし、時代や素養に合わせて新しいキャリアを選択できることは大きな魅力です。

マネジメント志向から技術志向へ、大きなキャリアチェンジを実現した寺倉。「ソフトウェアプロセス」という専門技術で自分らしいキャリアを切り拓いてきた歩みもまた、次世代の人財にとって貴重なロールモデルとなるはずです。

※掲載記事の内容は、取材当時のものです