下りてくる仕様に納得できなかった駆け出しエンジニア
青木の前職は、大手SIerの公共システム開発部署に勤めるエンジニアでした。元請けから下りてくる案件がメインだったため、鼻っ柱の強い駆け出しの20代にとって、なぜその仕様が必要なのか、納得できないこともたくさんありました。しかし、2年目に元請け企業の支援業務として、お客様と直接対面する機会を得てから、少しずつお客様の業務に対する理解度が高まり、エンジニアとしての視野が広がったと言います。
たとえば、ある検索システムの開発では、「検索ボタンを押してから、途中で止めることはできないのか?」という要望をお客様に求められました。開発者目線では、実現できるはずもなく、何を意図した要望なのかまったくわからなかったと青木は言います。しかし、よくよく深掘って聞いていくと、言葉の背景にある「業務効率を上げたい」「少しでも早く作業を進めたい」というお客様の想いを知ることができました。
青木「最初はお客様のニーズというか、真意を引き出すのに苦労しました。正直、何を言っているのかわからないこともありました。しかし、根気強く会話を重ねて理解を深めることで、安定した開発につなげられるようになりました」
その後、青木は開発リーダーとして、要件定義からテストまで従事し、様々な案件を手掛けました。しかし、これらはあくまでも元請けからの案件のため、裁量に限界を感じていました。エンジニアとして4年目を迎えたころ、より大きな案件に挑戦したいと、青木は転職を決意します。お客様と直接関わり、要件定義から手掛けたかったため、プライムベンダーであることが絶対条件。中でもNTTデータを選んだのは、自身の強みであるシステム開発力も生かしたかったからです。
青木「NTTデータは、コンサルティングなどの超上流工程だけではなく、開発・運用までオールインワンで、すべての工程をカバーし、お客様に価値を提供しています。だからこそ、自分の技術力を生かしつつ、上流工程にチャレンジできる案件が必ずあると考えました」
腑に落ちるまで現場に近づき、メンバーにも共有する
民間のお客様には、それぞれに企業カラーや独自の視座・視点があります。ある大手交通系のWEB予約システムを開発したときは、当時世の中に流通している携帯電話約300種での動作確認を求められました。「自社のポリシーとして、一人のお客様も取り残してはいけない」とおっしゃるお客様。これまでの公共系のお客様とは違う考え方や視座があり、圧倒されることもしばしばだったと言います。
そんな中、青木のターニングポイントとなったのは、「ITディレクター」としてお客様に関わるようになったことでした。「ITディレクター」とは、所属している法人部門独自の役割。ベンダー側ではなく、よりお客様側の立場で要件定義を行い、お客様と開発部隊の橋渡しを担当するポジションです。
お客様の立場からものを考えるには、その価値観や業界や企業の文化も理解する必要がありました。あるECサイト開発では、百貨店系のお客様の、お中元やお歳暮に対する力の入れ方に驚いたと言います。
青木「私の世代では、お中元やお歳暮の文化そのものが薄れてしまっているので、どうしてお客様が、のしや二重包装などにこだわるのか、すぐには理解できませんでした」
ご要望を受けて、のしや包装方法を選べる機能を搭載してカットオーバーしたものの、お客様および、ECサイト利用者からは不評の嵐。いったい何がいけなかったのか、青木は店舗の催事売場まで足を運び、自分の目で原因を探りました。
そこで見たのは、コンシェルジュがお客様一人ひとりから丁寧にご要望をお伺いする姿でした。どなたに贈りたいのか、どんなものがお好みなのか。ときにはお客様の想いにも耳を傾けるスタッフたち。
青木「ECサイト上でも、究極で求めているのは、このようなおもてなしなのだと実感しました」
お客様の真意を掴んだ青木は、それを開発チームに落とし込んでいきます。心がけているのは、要件とそれが必要な背景をセットで伝えること。駆け出しの頃、現場で感じていた「意図の理解できない仕様を開発する」という理不尽さを、現場のメンバーに味あわせたくないからです。
青木「きちんと背景を伝えれば、現場のモチベーションも上がりますし、よりよい手段や機能の提案を受けることもあります」
青木がチームに入ったことで、チームの雰囲気も前向きになりました。それに伴い、システムの品質について、お客様の評価も上がっていったと言います。あるときは、お客様が青木の側に立ち、クレームが寄せられたときに、「青木さんの落ち度ではない」とかばってくれたこともあったと言います。こんなことは青木のエンジニア人生において初めての経験で、お客様とベンダーの垣根を越えた、と感じられた瞬間でした。プロジェクトを後任に譲るときも、お客様からは「青木さんのおかげで、ここまでこられました」と声をかけていただけた、と言います。その言葉が、今も青木を勇気づけています。
ECとリアルを融合し、一大商業圏を創る挑戦へ
現在の業務として、青木はある流通大手の、デジタルコマース領域の仕様統制リーダーを務めています。お客様の要望をヒアリングし、システム化提案を行うとともに、開発PMとして、開発全体のQCDをコントロールしています。
テーマとして掲げられているのが、ネットとリアルの融合です。リアル店舗が非常に強いお客様のため、リアルの顧客情報の活用やリアルとネットの相互送客などが、目下の課題だと感じているそうです。青木は、お客様の視座の高さに、大きな刺激を受けていると語ります。
青木「これまで、一大商業圏を創り上げてきたお客様です。とにかくスケールが大きい。自分が関わっているプロジェクトもその一部として、同じ高みを目指していく必要性を痛感しています」
たとえば、ネットとリアルの融合には、リアル店舗も含めて、ECサイトを活用いただくことが大前提。もし、システムの使い勝手が悪く、ECサイトを利用いただけないとその先のミッションが実現できなくなってしまいます。細かな一つひとつの開発が、大きな流れの中にあり、意味を持っている。青木にとって、大きなチャレンジとなるプロジェクトです。
開発の手法においても、様々なデジタル技術(アジャイル開発・DevOps・CI/CD自動化・クラウドネイティブ・マイクロサービスなど)に取り組み、お客様や消費者へのさらなる価値提供を実現したいと考えています。このほか、お客様の業務フローの改善やビジネスのスキームづくりなど、青木の挑戦したいことは枚挙に暇がありません。
青木「いろいろなことに興味が出てしまって、とにかく首を突っ込みたいタイプなんです。でも、やりたいことをやらせてくれる、それがNTTデータに入ってよかったと思う、一番のことですね」
やりたいことができる。それが実現できるのは、多種多様な人財が社内に存在し、その多様性を許容する風土・制度が社内にあるからだと青木は感じています。オールマイティな人もいれば、ある分野にだけとことん特化した人も。能力が評価され、若くして活躍するエンジニアもたくさんいます。青木がシステムの性能に関して相談するスペシャリストも天才肌だと言います。青木の目には、NTTデータは“多様性の塊”のような企業に映っているそうです。
青木「お客様のビジネスの成長を、テクノロジーで支援する。その上流からすべてをお任せいただけるだけの多様な人財がいるのがNTTデータです。自分の思い描くキャリアに対するロールモデルが必ずいます。そして、自分が取り組んできたことを、捨てずに生かせるチャンスがあります。やりたいことがある人に、そしてそれを実現したいという想いがある人に、ぜひ来て欲しいですね」
そう熱く語る青木。様々なスキル、キャリアを持つ仲間たちと切磋琢磨できる環境の中で、ECとリアルを融合し、ベンダーの垣根を超えた一大商業圏を創り上げる、という青木が思い描く夢が叶う日も、そう遠くはないでしょう。