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「自分にない力を持つ人を育てたい」ZOZOの成長を支えた組織・人財育成への想い【ZOZO澤田宏太郎 対談/前編】

様々な業界・企業で活躍するNTTデータのOB・OGをお招きし、当時の出来事や経験をオープンに語っていただく本企画。三回目となる今回は、株式会社ZOZO 代表取締役 兼CEOである澤田 宏太郎氏にご登場いただきました。2019年9月、創業者である前澤友作氏の退任に伴ってそのバトンを受け継いだ澤田氏。大きな注目を集めるなかで、組織・人財に対してどのような思想を持って事業の推進、組織の舵取りを行ってきたのか。人事本部 人事統括部 部長の森田が、あまり語られていない澤田氏のNTTデータ時代の話やこれまでのキャリアを通して、思考の源泉について伺います。

目次

「組織の盛衰」と「人生を変える上司」との出会い

森田
まずは澤田さんのキャリアの原点であるNTTデータに入社した時のことからお伺いしたいと思います。澤田さんは1994年入社なので私と2つ違いですね。入社から長らく私は営業でしたから、社内でお会いしたことがあったかもしれませんね。

ZOZO澤田
私も森田さんには見覚えがあります。直接のプロジェクトで関わりはなかったものの、何かの機会でお会いしていたのだと思います(笑)。

さて、私の就職活動はもう20年以上前の話になります。学生時代の私はあまり熱心に勉強したとはいえないものの、大学の授業で最も楽しいと思えたのがプログラミングの授業で、それでシステムエンジニアになろうと思い立ちました。

当時はまだSEという言葉も一般的ではない時代で、NTTデータもまた旧社名のNTTデータ通信でしたね。会社発足からまだ数年で、これからシステム開発の領域で成長していくんだという機運がありました。

実は内定をもらっていた某民間シンクタンクとNTTデータで最後まで悩んだのですが、研究室の教授との相談の結果、NTTというブランドがありながら、新しいことに挑戦できそうな会社だと思えたことが、入社の後押しになりました。

森田
澤田さんがNTTデータに在籍していたのは4年ほどだったと伺っています。その間、どのようなことを経験されたのですか。

ZOZO澤田
入社から4年間同じ部署で、とあるカードシステムを開発するプロジェクトで勤務していました。当時のこの事業は売上がうなぎのぼりで、部署にも勢いと活気がありました。当時の社長が私たちの部署にやってきて「今年の成績はカードサービス事業のおかげです。ありがとう。何か買っていいよ!(笑)」と言われたことを覚えています。働く場所としても楽しかったですね。

やりがいのある部署に配属されたなと嬉しく思っていたのですが、1〜2年ほど経つと市場環境も変わり、当社としても大きな影響を受けました。売上は下落し、みるみるうちに組織の雰囲気が変わっていったのを覚えています。

その時に、身をもって事業の調子によって組織はいかようにでも変わることを知りました。事業が上手く行っていることが、実は組織にとって一番の薬だったんですね。若手のうちからそういったことに気づけたのは、今思えば貴重な経験でした。

森田
その後、コンサルティングを行うグループ企業のNTTデータ経営研究所へ出向となりましたね。SEとコンサルティングは分野がまるで違いますが、どのような経験をされたのでしょうか。

ZOZO澤田
もともと上流のコンサルティング業務に興味があったことから、社内公募のシステムを活用して自分で応募して出向しました。

出向先では本当に人に恵まれて、私の人生を変える出会いもありました。外資のコンサルティングファームから転職してきた方が直属の上司になったのですが、クライアントへの提供価値に関する感度が圧倒的に高い人でした。厳しい人でしたが、この人の言うとおりにすればクライアントが必ず喜ぶと確信を持てたので、とにかく必死についていきました。

森田
人生を変えるほどの転機になったのですね。どのような方だったのでしょうか。

ZOZO澤田
クライアントの考えを察知することに長けた人で、それまでの私はどちらかというとマイペースなタイプでしたが、自分のことよりも人がどう思うか、何を考えているかが重要だということを学びました。この時の経験は、今のZOZOのビジネスを考える上でも非常に役に立っています。例えば、ユーザーがどう思うか、パートナー企業はどう考えるか、といったことです。若いうちから学べることが多い人に出会い、他者視点を身につけられたのは本当に幸運でしたね。

“学びに対する渇望”に触れて知った、人財育成の醍醐味

森田
澤田さんは2008年に株式会社スタートトゥデイコンサルティング(2013年8月 株式会社スタートトゥデイ(当時)に吸収合併)に加わり、「澤田塾」という社内塾を開校されていたそうですね。まさしく人財育成を重視していることのあらわれだと思うのですが、澤田塾では、どのような内容を題材にされていたのですか。

ZOZO澤田
座学でビジネスの基礎を教える内容です。国語、算数、社会、図画工作という4つの科目をもうけました。内容としては、国語はロジカルシンキング、算数はビジネスで使う四則演算、社会は会社や業界の動きについて、図画工作は資料の作成などです。極力ハードルを下げたくて、数学ではなく算数といったように、科目名にはこだわりました。基礎的な学びに対する渇望感を持った社員が多く、やってよかったと思います。

森田
そのような科目名であれば参加しやすそうですね。ところでNTTデータのグループには教育や研修を行うNTTデータ ユニバーシティという会社があり、OFF-JTにも力を入れているのですが、実務で学ぶOJTと、澤田塾のような座学のOFF-JTの関係については、どのように捉えていらっしゃいますか。

ZOZO澤田
やはり基本的には仕事を通じて学ぶ方が、周りから受ける影響も大きく、学びが多いと考えています。成長するためには、上司だけでなく仲間やライバルの存在も重要ですから。

ただ当時のZOZOの場合、それまでビジネスの基礎を教えてくれる人が社内には中々いなかったので、ある程度は座学も必要だろうと考えて、澤田塾を開校した背景があります。

森田
人財育成の考え方を伺いたいのですが、もともと人にものを教えることはお好きだったのでしょうか。

ZOZO澤田
はい、自分が教えたことを相手が理解をして、今までできなかったことができるようになる。その瞬間が昔から好きでした。ですが、人財育成の面白さを本当に実感したのは、ZOZOに入ってからなんです。

森田
何かきっかけがあったのでしょうか。

ZOZO澤田
ZOZOに入社するまで、私はNTTデータ、NTTデータ経営研究所、コンサルティング会社とキャリアを積んできました。好きな表現ではありませんが、相応にスペックの高い人たちと仕事をしてきたわけです。ところが当時のZOZOはベンチャーというか、ベンチャーに毛さえ生えていないような状態で(笑)。今だから言えますが「こんなこともできないのか!」と驚かされることがたくさんありました。

森田
環境がガラリと変わったわけですね。

ZOZO澤田
はい。ただ、これまで一緒に働いてきた「1を聞いて10理解する」人たちとは違ったかもしれませんが、前に進みたいマインドだけは誰にも負けないすごく熱いものを持っていました。そこで私が経験したのは、人によって時間差はあっても、ビルドアップしたいという想いがあれば、全員が必ず成長できるということでした。

スキルは努力をすれば身につけられますが、努力できることは才能です。

彼らの成長を目の当たりにしてから「伸びしろがあることは面白い」と感じるようになりましたし、努力できる力を持つ人には自分もできるだけのことをして育てたいと思うようになりました。

それから、ZOZOに入って自分にない力を育てたいと思える経験ができたことも大きなきっかけになっています。

コンサルティング会社で綿密な理論を組み立てることを学んできた私でしたが、ZOZOに入ってからは社員が瞬間的に思いついたことがユーザーに受け入れられる瞬間を何度も目にしてきました。
その発想力には驚かされましたし、ロジックだけでは語れない世界があることを知りました。私自身には発想力はないので、そこについては人に頼るしかありません。ですから、自然と「私は人を育てていこう」というマインドに変わっていきました。

NTTデータには、社会を変えていくために重要な「実行力」がある

森田
澤田さんはNTTデータを、在籍中とご卒業後それぞれでどのように見られていますか。

ZOZO澤田
年月が経つにつれて、NTTデータの印象は変化していますね。

NTTデータにいた頃は比較対象がなかったので、特に良い印象も悪い印象もなく過ごしていました。ただ転職して外部に出てみて、よくも悪くも保守的だったことに気づきました。

例えば、新規ビジネスの企画の段階ではみんな知恵を絞って楽しくやるんです。いいアイデアが形になってくるのですが、最後の段階になって急に慎重になり、「やらない理由」を探しだしてしまうんですよね(笑)。

リスクを背負ってでも「やる理由」を前向きに考える人が、当時は多くはありませんでした。ビジネスにおいて最後に重要なのは実行力なのですが、いいCPUを持っている集団だけにもったいないですよね。

森田
「やる理由」よりも「やらない理由」を探してしまう。身につまされる話です(笑)。

ZOZO澤田
たださらに年月が経って、もう少し遠い場所から見てみると、NTTデータの凄さがわかってきました。

ひと言で言うと、NTTデータは「逃げない会社」だと思います。私たちもZOZOのシステム開発でお世話になりましたが、大規模なシステム開発ではいろいろな問題が発生することも珍しくありません。ただ、どんなことがあってもNTTデータはあらゆる方法を使って最後まで逃げずにやりきる。

保守的とは言いましたが、いったん始めたことは最後まで責任を持ってやりきる凄みを感じます。他の企業が匙を投げたプロジェクトの尻拭いをNTTデータがやる、なんてこともよく耳にしますしね(笑)。

森田
今のお話は、当社社長の本間が掲げる「変わらぬ信念」と通じるお話ですね。一方で、世の中の変化に伴い、NTTデータには「変える勇気」も必要だと認識しています。その意味で当社は今まさにお客様とも一体になって変化に向き合っているところなのですが、澤田さんが今、NTTデータに期待することはどのようなことでしょうか。

ZOZO澤田
例えば、「ITで世の中をアップデートしたい」というメッセージをとあるインターネット企業が掲げるのと、NTTデータが発信するのとでは、消費者にとって意味合いが違うと思います。

多くの人は、前者のインターネット企業の方が変革を期待できると考えるはずですが、それは単純にインターネット企業の方が消費者に近いところにいるからだと考えています。自分たちの生活が変わって、便利になる具体的なイメージが持ちやすいからです。

私たちもZOZOTOWNでユーザーを便利にすることには必死になっていますが、より大きな観点から日本をよくしたり、日本で暮らす人によりよいものを届けたり、社会をアップデートする実行力を持っているのはSIerであるNTTデータだと思っています。

一人の消費者として、そしてNTTデータを卒業した身として、NTTデータの価値が社会に分かる取り組みをしてもらえるとうれしいですね。

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澤田氏のNTTデータでのキャリアや人財育成についてお話を伺ったインタビュー前編、いかがでしたでしょうか。後編では、前社長である前澤氏退任後の組織運営やファッションビジネスの今後などについて語っていただきます。ぜひ後編もご期待ください。

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※掲載記事の内容は、取材当時のものです