競争力の源泉の移り変わり
産業革命以来、工業化、商業化、サービス化、情報化の進展により、社会は大きく発展してきました。その間、企業は様々な技術革新を通じて、製品・サービスを創り出し、市場を開拓・拡大して、社会の発展に大きく寄与してきました。製品が市場の中心だった従来は、いいモノを作れば売れる時代とも言え、大量生産によりいいモノをより安く市場に提供することが企業競争力の中心だったと言えます。つまり、労働者を数多く集め、機械化や分業化、多角化によって企業を成長させていく労働集約型のビジネスが全盛でした。その後、製品産業からサービス産業へと時代は進み、情報処理技術、インターネット技術、モバイル技術等が浸透し始め、IT化による効率化やサービスの高度化が競争力の中核をなす時代となります。技術の進化はベンチャー企業を育み、優れた個人のアイディアがビジネスの様相を一変させ、ユーザの欲するニーズや経験、価値を捉えた技術、サービスは、市場に出てユーザに利用されながら大きなビジネスに成長していくことが可能な時代となりました。企業がユーザの活動や発信情報を分析できる現在、この種のデータをどう活用するかがビジネスの成否を決めると言ってもいいでしょう。今後は、ライフログ、ワークログ、センシング情報による環境データ等々、様々なデータや知識、ノウハウを活用することが競争力の源泉となる「知識集約の時代」になると考えられます。
戦略的なデータ収集と分析について
知識集約の時代においては、様々な現象や環境、行動や知見等がデータとして収集・蓄積され、これらのデータが膨大なコンピュータパワー/リソースを使って解析されることによって、新たな知識や知見が発見、獲得できるようになります。従来は暗黙知として人から人へと伝承されてきたノウハウも、今後はデータとして形式知化されることでナレッジトランスファーが可能となります。それを実現するためには、多量なデータを短期間に分析する技術とともに、多種多様なデータを活用する技術が必要です。分析サイクルを短縮化するための技術としては、大規模リアルタイム分析基盤、分析自動化、機械学習などが挙げられます。多種多様なデータ活用技術としては、データ共有と意味理解、非構造データ解析・分析、データフュージョンなどが相当します。これらの技術が発展していくことで、新たな知識、知見を発見することができ、将来を予見する俯瞰した意思決定が可能となるでしょう参考1。
図:競争力の変遷
戦略的なデータ収集と分析にまつわる将来象
様々なデータが大きな価値をもつようになります。政府・自治体によるオープンデータ化が加速するとともに、データそのものが売買されるデータマーケットプレイスも社会的に大きな地位を占めてくるでしょう。企業や組織内での様々な活動や経験もデータとして形式知化されます。IDCのデジタル・ユニバースに関する最新の調査によると、2020年までに世界の情報量は40ゼタバイト(40兆ギガバイト)に到達すると予測されています参考2。マシンが生成するデータの量は、2020年までに現在の15倍に増加する計算です。ありとあらゆるデータが世の中に氾濫します。これらのデータに溺れることなく、目的に応じて適切にデータを収集・分析し、将来を予見した最適な意思決定を行うことが重要です。