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2024.10.21技術トレンド/展望

ベンダーに左右されない仮想化基盤選定の成功の秘訣

2023年11月に完了したBroadcom社によるVMware社の買収。その影響で、市場独占していたVMware製品のライセンスコストが高騰し製品継続性に対する懸念が高まり、数多くのビジネスにおいてオンプレミス仮想化基盤製品を今後どう選定していくべきかの再検討が進み始めている。つまり、このような予期せぬ変動でデファクトスタンダードが揺らぐ局面でも、ベンダーロックインを回避するための高度なエンジニアリング力を維持し続けることの重要性が再認識されたと言えるだろう。NTTデータでは、数多くの商用実績やベンダーとの協業関係に基づき、最適な仮想化基盤製品をご提案するための選定ガイドライン・設計ノウハウを全社で展開している。
目次

VMwareのBroadcom社による買収問題で生じている具体的な課題とは?

2024年10月時点で、VMware製品の利用に関して2点の変化がありました。

(1)ライセンス体系の変更:ライセンスコストが数倍に膨れ上がる傾向あり

  • 永久ライセンスの販売が停止となり、サブスクリプション型のみに変更
  • ソケット単位課金から物理コア単位(かつ最低16コア以上)に変更
  • 製品の自由な組み合わせから4つのパッケージ選択に体系が変更(かつ顧客ごとで選択できるパッケージが限定)

(2)OEM供給条件の変更:既存のサポート契約、ハードウェアを含めた一元サポート窓口の継続が不透明に

  • 既存OEM製品の販売は停止(OEMベンダー独自の保守サービスまたは第三者保守へ変更できる可能性はあるが、サポート条件・レベルが変わることに注意)
  • 新規OEMをOEMベンダー各社にて提供を準備中
  • 2024年8月頭の時点で、明確な販売条件・時期を提示しているベンダーはなし

このような影響に伴い、現行の仮想化基盤をどうするか、次期は何を選べばよいのか、いつ載せ替えるのが正解なのか、数多くのお客さまが悩んでいる状況です。システム構成によってVMwareコストの上昇幅が異なることから、各々のプロジェクトでコスト試算が必要ですが、次のEOLまでコスト上昇に耐えながら現行の仮想化基盤を維持し、次期基盤の検討・準備を着実に進めていくケースが多いと推察されます。

なお、移行先の基盤候補となり得るのは、企業のITインフラ戦略として、モダナイズを目的としたパブリッククラウドやコンテナ基盤、オンプレミスとアウトソーシングの特徴を併せ持つAmazon Web Services Outpostsなどといった新たなオンプレミス基盤、経済安全保障を目的としたソブリンクラウドなどです。

一方で、データロケーション、運用主権、ネットワークレイテンシーなどの観点から、全てを移行することが難しいという課題もあります。オンプレミス環境におけるセルフホスト型の仮想化基盤は一定数残り続ける可能性が高いことを踏まえ、本ブログでは仮想化基盤製品の特徴の適切な捉え方・製品選定の考え方にフォーカスし解説していきます。

自社にとって最適な仮想化基盤製品を選定するために

インフラストラクチャーの仮想化とは、「ソフトウェアによって、1台のハードウェア資源を仮想的に分割して配分する、あるいは複数台のハードウェア資源を仮想的に統合してハイパフォーマンス・耐障害性を実現すること」を示します。

テクノロジーとしては、古いものから新しいものまでさまざまな仮想化方式が実用化されています。例えば、1台のWebサーバーではピーク時のリクエストを処理する計算能力を満たせない課題に対して、ロードバランサーと組み合わせた負荷分散クラスタリングが存在します。また、高額あるいはオーバースペックなハードウェアを経済合理性の観点から分割して使いたいというニーズに対しては、サーバー仮想化・VLANが存在しています。(図1)

図1:インフラストラクチャーにおけるさまざまな仮想化方式

図1:インフラストラクチャーにおけるさまざまな仮想化方式

主な仮想化方式である「サーバー仮想化」で享受できるメリットとして、「1.物理サーバー台数の削減」「2.サーバーリソース(計算資源)の利用効率化」「3.サーバー利用開始までのリードタイム削減」「4.仮想化レイヤーの挿入による運用の高度化」が挙げられます。(図2)

どのような仮想化基盤製品でも1~3のメリットは基本的に享受できますが、4のメリットは製品によって機能カバー範囲が異なります。サーバー仮想化の老舗であるVMware製品は4が成熟しており、どのような要件に対してもオールマイティーに対応できる強みに加えて、コストパフォーマンスも優位であったことからデファクトスタンダードとして君臨してきました。

図2:サーバー仮想化により享受できるメリット

図2:サーバー仮想化により享受できるメリット

大は小を兼ねるという見方もあるものの、必要以上にオーバースペックな機能を求めても投資対効果が得られずに宝の持ち腐れとなってしまいます。そのため、自社のユースケースに必要な機能を満たせる製品は何か、その中でコストパフォーマンスの高いものは何か、を整理&ファクト収集してしっかり見極め、OSSを含めた他の選択肢を併用しながらベンダーに振り回されない主権を確保することが重要です。NTTデータでは、仮想化基盤を選定するための考え方として、規模による区分に基づき、各区分で必要となる仮想化基盤製品への要求事項を整理し、適用可能な製品候補リストおよびコストパフォーマンス比較を製品選定のガイドラインとして整備しています。(図3)

図3:ユースケース・規模に応じた仮想化基盤の運用イメージ

図3:ユースケース・規模に応じた仮想化基盤の運用イメージ

小・中規模(1クラスタ以下)であれば、分散リソーススケジューリングといった最適配置の支援機能がなくても運用できる規模ですが、それを超えた大規模になってくると人手&Excelの構成管理簿によるリソース管理は困難となってきます。また、リソース需要計画が見通せず、ライフサイクルが異なる複数のシステムを受け入れる超大規模になってくると、定期的なハードウェア全面更改は行えず、五月雨でEOLが生じることを受け入れざるを得なくなり、仮想マシンを稼働させたままで新しいストレージを移動させる、ストレージライブマイグレーションといった高度な仮想化支援機能が必要となります。なお、規模はあくまで検討のベースラインとなる起点に過ぎず、可用性・DRといったお客さまごとの固有要件も加味して、最適な仮想化基盤製品をご提案いたします。

新たな仮想化基盤を安心・安全に活用していくために

これまでVMwareのみをデファクトスタンダードとして開発・運用してきた中、VMware以外の新たな仮想化基盤を活用していこうとすると、設計ノウハウの不足による品質リスク・技術変化に対する既存の運用体制からの抵抗などの懸念が想定されます。そのような懸念に対して製品検証によるフィージビリティ担保を検討する必要があります。

NTTデータでは数多くの開発プロジェクトの共通項となるアーキテクチャー・設計/運用指針・標準設計書/手順書一式の整備を順次進めており、それらを品質確保済みのベースラインとして活用することで高品質な仮想化基盤を短期間でご提供できる状態を目指しています。

開発フェーズに留まらず、運用フェーズの安定運用を支えるアフターサポートを提供するため、NTTグループ内における連携スキームの確立(高度なLinuxエンジニアによるソースコードレベルでのKVM問題解決など)、超高SLA要件にも対応できるようにベンダーとの迅速復旧・予防保守の協業スキームの整備なども進めております。

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