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2024.7.29事例

トヨタ紡織が取り組む全社一丸のDX
~先進技術をビジネス価値に変えるには~

自動車の内装システムサプライヤー事業や、内装製品の開発、販売を手がけるトヨタ紡織で今、革新的かつ多面的なDXの取り組みが進行している。2024年3月には社内向けの展示会「DX EXPO」を開催し、DXに取り組みやすい職場の風土づくりやデジタルの魅力を伝える活動を加速。全社一丸となりDX推進に向かう機運が高まっている。そんな同社の推進リーダーであるビジネス改革推進部 DX基盤推進室 室長・吉田 豊 氏と、先進技術をビジネス価値に変える共創活動を同社と推進してきたNTTデータグループグローバル技術戦略推進部長の吉田 英嗣が、先進技術を活用したDXを成功に導くポイントについて語り合った。
目次

DX推進における気付き、XDの思考とは

<プロフィール> 吉田 豊 氏 Yoshida Yutaka トヨタ紡織株式会社 DX&IT推進本部 ビジネス改革推進部 DX基盤推進室 室長

<プロフィール>
吉田 豊 Yoshida Yutaka
トヨタ紡織株式会社 DX&IT推進本部 ビジネス改革推進部 DX基盤推進室 室長

吉田 豊 室長(以下、吉田(豊)氏) 私は入社後、製造業における事務系システムの企画・開発に従事し、その後、2004年の3社合併による海外生産工場の規模拡大に伴い、生産系システムの開発・展開に従事しました。その時、初めて生産に関わるシステムに触れることになったんです。2021年からはDX基盤推進室の室長として、社内における様々な部門でDXの啓発活動、導入を行っています。現在、社内でDXを推進するにあたり「できる、できないは考えない。どうすればできるかだけを考えよう」というフレーズをモットーにメンバーとも共有しています。2024年3月には、オフィスや工場でどのようなDXが導入されているかを社内で共有するため、社内向けの展示会「DX EXPO」を開催しました。ワクワクする仕事が大好きなもので、「DX EXPO」は私自身、楽しかったですし、社員にはとても良い刺激になったと感じています。

<プロフィール> 吉田 英嗣 Yoshida Eiji NTTデータグループ 技術革新統括本部 グローバル技術戦略推進部長

<プロフィール>
吉田 英嗣 Yoshida Eiji
NTTデータグループ 技術革新統括本部 グローバル技術戦略推進部長

吉田 英嗣(以下、吉田(英)) そのようなイベントで社内を刺激するのはとても素晴らしいですね。私は入社以来、国内外でR&Dに関わってきたのですが、経験上、常日頃感じているのは「先進技術だけが存在していても、それがビジネスにおける価値に昇華していかなければ意味がない」ということです。技術をビジネス価値に変えていくためには、お客様と共に課題と向き合わなければなりません。そのような意味で、御社との共創活動は私たちにとっても非常に得るものが大きいですね。

吉田(豊)氏 社内DX推進を始めた当初、各部署を巻き込むことは容易ではありませんでした。デジタルで仕事を変えていこうと私たちの部署は張り切っていたのですが、周りの部署からはDXの推進チームが全てやってくれるものだと思われてしまって。その結果、IT部門が進める情報をデータベース化するなど社内の環境整備だけが先行して進んでしまい、DXのデジタル(D)の部分ばかりが先行してしまいました。そこで考えを変えて、どの現場に、どんなトランスフォーメーション(X)が必要かをまず明らかにし、それをデジタル(D)で効率化していこうと。「DX EXPO」の反応を見ても、自分の業務をデジタルでこう変えられないか、という提案が出てくるようになりました。DX(Digital Transformation)ではなく、XD(Transformation with Digital)の思考が功を奏したのです。

吉田(英) 当初は、現場は何も考えなくても、DX推進室の皆さんが新しい技術を入れてくれるだろう、という受け止め方をされてしまったということですね。

吉田(豊)氏 そうです。やはり現場が自分から何をしたいどう変わりたい、と思わなければ始まらない、とわかりました。シンプルに改革を推進しようとしても、歴史ある企業ですのですでに改善は年々、進めているわけで、なかなか簡単に改革は進みません。しかしながら、デジタルを駆使すれば、これまでできなかったレベルでの業務改革が可能になると私は信じています。私たちのチームはまず現場に足を運んでアナログな現状を目の当たりにし、現場と共に状況を変えていくことで、理想のDXを実現したわけです。

DX EXPOにおけるデモ展示
~「品質管理プロセスでの生成AI活用」による生産性向上と、「デジタルヒューマン上司」による社内コミュニケーション活性化

吉田(英) 今回、「DX EXPO」ではNTTデータ東海&NTTデータグループで協力してデモを展示しました。FMEA(Failure Mode and Effects Analysis:製造プロセスに潜在する故障モードを分析評価し対策を講じる手法)でのAI活用は、課題を顕在化した一例ですね。担当者が記載した資料をAIが自動レビューし、記載間違いや表現のゆらぎを発見することで、ミスを防ぐ仕組みを提案しました。

吉田(豊)氏 はい、NTT DATA様に協力いただいたおかげで、DXに成功した部分のひとつです。情報の民主化が非常に遅れているという点に、あらためて気づけたからこそ課題解決につながりました。たとえば、試作から完成までのプロセスでフェーズが変わると同時に、どんどん品番も変わっていくような状況がありました。これではDXどころか現場同士で会話さえ通じません。こうした課題に対して、データの標準化を2030年を目標に進めていく予定です。

吉田(英) 同じく「DX EXPO」で披露した、上司をデジタルヒューマン化した事例はいかがですか?本人の顔画像を元に作成したアバターと生成AIを組み合わせ、デジタル再現することで、まるで本人と話しているかのような対話やレビューを可能とした仕組みです。

吉田(豊)氏 社内の風通しを良くする、という点は大きな課題でした。コロナ禍もあり、上長と顔を合わせる機会が減ったこともマイナス要因でしたね。そんな悩みをNTT DATA様に持ちかけ、「上司をデジタルヒューマンにしたい」という私の提案を受けていただきました。デジタルならなかなか時間が取れない上司をいつでも呼び出して報告や相談ができます。デジタルで顔を合わせておけばリアルに対面した時もスムーズなコミュニケーションが可能です。社内外で大きな反響がありました。

グローバルな舞台で培った知見をユーザへ還元

吉田(英) 私たちは多方面に渡りDXのお手伝いをさせていただいておりますが、NTT DATAに対してさらなるご要望はありますか?

吉田(豊)氏 先日、ドイツの生産現場でデジタルツインが実践されているというお話を聞いて、私たちもそこに追いついて、追い越していかなければならないと感じています。ですから、AIに関して実績があるNTT DATA様に大きな期待をしているところです。たとえば技能伝承も大きな課題です。有能な技術者が退職していくことを考えれば、彼らが培った技術や知識を若い人へ伝えていかなければなりません。一方、現場で培った技術をPCが不得意なベテラン技術者にExcelやPowerPointでまとめてほしいと言っても、なかなか難しい。ならばAIを使って彼らが話した言葉をマニュアル化できるかもしれません。このように生産現場にはAI導入によって効率化できるポイントがたくさんあると思っています。

吉田(英) お話しいただいたデジタルツインやAIはもちろんNTT DATAが強みとしているところです。また、グローバルかつ多様な業界、現場におけるDXの実績を活かし、たとえば海外の先進的な取り組みを御社のDXに最適な形で導入することも可能です。こうした取り組みで国際的な競争力向上のお手伝いができると感じます。また、私たちから見れば、御社へのDX事例を世界的に見ても先進的な事例に進化させ、このモデルをグローバルで展開することができるかもしれません。このように、御社との革新的なDX推進は大きなメリットを御社、弊社双方に生むわけです。とてもありがたいことだとあらためて感じます。

デジタル教育でDX推進の土台を強固に

吉田(豊)氏 関係者がバラバラでは大きな成果はあげられなかったでしょう。私たちDX推進室と、現場の皆さん、そしてNTT DATA様の皆さんで一体となって課題の洗い出しからアイデア出し、解決までのプロセスを共に進めてきたことで、見えてきたもの、得られたことがたくさんあると思います。

吉田(英) 現場の方から「こう変えたい」という声が出てくるのは、日頃からITリテラシーの向上に取り組んでいらっしゃるからですよね。

吉田(豊)氏 まだ試行錯誤の段階ですが、様々な取り組みに挑戦しています。これまでデータサイエンティストの育成などは社内で行っていたのですが、全社員に対して啓発活動を行ってもうまくいかないと気づくようになりました。やはり本業が疎かになってしまう社員が出てくるのです。そこで、まずは社員の適性を見て、育成すべき人を選んでいく。それぞれの部署にリテラシーの高い社員が一人でもいるようにするという判断です。さらに、ITの知識や技術習得をスキル評価に取り入れていく。こうした取り組みを推進することで、会社全体のレベルアップをはかっていけると考えています。

吉田(英) 加えて言うなら、今回のように先進的なDXをプロジェクトベースで実践的に学習・体感していただきながら、どんなアプリケーションが作れるのだろうと一緒に考えていただくことは、とても意義があると思います。

DX推進は「ありがとう」と言ってもらえる仕事

吉田(豊)氏 机上ではなく実際に触れる、感じるという部分はとても大切ですよね。今、社内で実践しているのは「DXLab」という取り組みで、これはあらゆる部署から希望者を募って、テーマに沿ってDXの道筋を考えていこうという内容です。当初は一つのテーマを設定していたのですが、次第にそれぞれが抱えるリアルな課題と向き合い、DXによって課題解決の方策を決定していくようになりました。その成長ぶりや頼もしさを見て、感動してしまったほどです。

吉田(英) デジタルにまつわる研修について、私たちがお手伝いできる部分は非常に多いと思います。ぜひ接点を作らせていただきたいですね。ところでDX推進への高いモチベーションはどこからくるものですか?お話を聞いていると、非常に高い意欲が伝わってきます。

吉田(豊)氏 デジタル化しよう、AIを導入しようと声をかけると初めは抵抗を感じる社員も多くいます。でも、DXに成功すると、仕事がスピーディになったとか、楽になったよと感謝されるのです。DXの推進は「ありがとう」と言ってもらえる仕事です。私自身、いつもワクワクしていますし、大きなやりがいを感じています。

吉田(英) 素晴らしいですね。いろいろなお話をお聞かせいただいてありがとうございました。今後ともぜひよろしくお願いいたします。

吉田(豊)氏 こちらこそ、ありがとうございました。

ブロックチェーン・デジタルツイン・量子アニーリングの導入支援サービスを提供開始
~イノベーションセンタに事業規模拡大を担うグローバルラボを設置~
https://www.nttdata.com/global/ja/news/release/2023/042101/

グローバル6カ国に「イノベーションセンタ」を設立
~世界トップクラスの先進技術活用力の獲得をめざす~
https://www.nttdata.com/global/ja/news/release/2022/081900/

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