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登壇者について
2004年に東洋エンジニアリング社に入社した瀬尾 氏は、約10年、配管エンジニアリングや耐震設計等のキャリアを積んだ後、プロジェクトマネジメントを経験、現在はDXoT推進部・部長を務めています。瀬尾 氏は「2025年度までに生産性を6倍にする」というとてもチャレンジングな目標を掲げ、2019年から同社のDXを推進されているとのことです。
DXoT推進部 部長 瀬尾 範章 氏
データインサイト中心組織について
同社では、人の暗黙知とデータ起点の形式知を掛け合わせることをデータインサイトと定義。組織知としての形式知の価値をデータ利活用によって高め、人の知恵と掛け合わせることで意思決定の質を高めることができる、と瀬尾 氏は説明します。
その上で瀬尾 氏は、人の意思決定能力を拡張するためにデータを利活用する組織を目指していると話します。これまでは過去のデータに基づく分析が主で、できることは限られていた。しかし、昨今のデジタル技術の進化により、シミュレーションや最適化、多様性評価といった、もっと踏み込んだ未来予測が可能になった。こういった要素を取り入れた、未来予測型の意思決定が実現しつつあると説明します。
データインサイト中心組織において目指す姿は、データを収集・蓄積し、利活用するサイクルを継続的にまわしている状態です。データの分析結果をもとに具体的なアクションを起こし、そのアクションによって価値を創出しなければなりません。しかし、データ利用と活用の間にはハードルがあり、実際には活用に至らず利用で終わってしまっている企業が多いと、瀬尾 氏は指摘します。
講演スライド出典元:Accenture, 2030年を見据えたイノベーションと未来を考える会「イノベーション・エグゼクティブボード データ活用をいかに加速するか」をもとに同社作成
https://www.accenture.com/content/dam/accenture/final/a-com-migration/pdf/pdf-173/accenture-ieb-how-to-accelerate-data-utilization-pov-web-single.pdf
データ利活用を進める上では、スライドのグラフの横軸の観点では、「AIを活用した予測」につなげるために、一足飛びではなく、段階的に進めることが重要との事です。縦軸の観点ではシステムやツールを切り出して単独で進めるのではなく、「経営トップ」、「データ」、「業務」、「システム」、「人財」を一体として進めることが肝要との事です。
NTTデータでもシステムやツールの導入だけでは無く、ビジネス、人財・組織、データ・アナリティクスをバランスよく成熟させることが重要と考えていますので、とても共感できる内容でした。
DXにおけるデータ人財育成
データインサイト中心組織を実現するには、データサイエンティストが活躍できる環境を整えることも非常に重要で、そのためには、社内のDX推進担当者やデータエンジニアなどとの協働体制を構築することも必要だと語られました。
課題解決ドリブンでのDX推進
同社のDX推進はわかりやすい課題を設定するところから始まり、課題解決ドリブンで課題解決の手法を徐々に高度化して進められたとのことです。ここからは具体的なAlteryxの活用事例をご紹介します。
Alteryx活用事例と効果
今回のAlteryxを使った事例では主に紙業務をデジタル化した4つの事例をご紹介されましたが、実際にはAlteryxでデジタル化した業務は300以上の事例が存在するそうです。
事例01:整合性チェック業務
データ処理業務に人が関与すると、人がした作業の整合性チェックも必要になり、紙をプリントアウトし、紙の上で整合性をチェックして品質を担保していたそうです。同社では、配管の3Dモデルと熱応力計算においてAlteryxを使い、人を介在せずに業務を自動化することで品質が向上し、業務効率も格段に改善されたとのことです。
事例02:配管サポートの3D設計作業の自動化
配管サポートの3D設計作業は、人が設計・選定のガイドラインを見ながらおこなっていましたが、Alteryxを利用することで、数十万点ある配管サポートの3D設計作業を、人が介在せず自動的に設計できるようになりました。結果として設計時間が50%も短縮しているとのことです。
事例03:BPRで価値創出
従来、業務プロセスは人が作業する前提で組み立てられていましたが、Alteryxを使って各業務の自動化が進み、従来の業務プロセスを見直した結果、リードタイムの短縮につながったそうです。
また、業務がデジタル化されたことで、どの業務が完了していて、どの業務が遂行中なのか等の進捗状況をリアルタイムにいつでもどこでも把握することができるようになったとのことです。
Alteryxを業務に適用し、自動化する事で、業務効率・品質向上につながる事がとても実感できるご説明でした。
Alteryxによる生産性向上
上記スライドに記載があるようにAlteryxのアクティブユーザーや資格保有者数が増加するにつれて、工数削減の効果が徐々に大きくなっているとのことです。現在では、DX効果による工数削減効果のうち30%はAlteryxによる実績とのことです。
資格取得などからなるAlteryxの習熟度向上が業務の生産性向上につながっている事を具体的な数字でご説明頂き、とても分かりやすかったです。
データレバレッジサイクル
同社では、データバリューチェーンにおいて、負荷の8割がかかると言われている生成から前処理を、Alteryxで効率的に作業頂いています。
このように業務のデジタル化が進み、データ利活用が促進される事で、加速度的に付加価値を拡大させる好循環が生まれるとのことです。
まとめ
東洋エンジニアリング社のDXoT推進部 部長 瀬尾 氏セッションの「東洋エンジニアリングが語るAlteryx導入の成果」の内容を一部抜粋してご紹介しました。表面的な効果や成果をみるとその裏側はなかなか見えづらいですが、Alteryxを活用した業務の自動化だけでなく、データインサイト中心の組織作りもとても重要だということが分かりました。
Alteryxによるデジタル化、自動化に加えて、今後はデジタル化したデータを利活用する事で価値創出を一層進めていかれる同社。これからの取り組みにも注目です!