QRコード決済のグローバルトレンドについての分析レポートを公表
2020年10月30日
株式会社NTTデータ
株式会社NTTデータ(以下、NTTデータ)は、世界的な移動通信関連の業界団体GSMA注1から委託を受け、英国のコンサルティング会社Accourt社注2と共同でQRコード決済のグローバルトレンドについて2020年4月より調査を実施し、“QR Code Merchant Payments:A growth opportunity for mobile money providers”を公表しました。
本レポートは、QRコード決済についての包括的な考察を示し、QRコード決済のエコシステムを築きたい、もしくは拡大させたいというモバイルマネー事業者にとって有益な情報を提供することを目指しています。本レポートでは、QRコードをめぐる各国のトレンド、QRコードのカテゴリー、QRコードのインターオペラビリティー(相互運用性)などについて重要な視点を明らかにしています。
NTTデータグループは、APACにおけるペイメントサービスプロバイダーのリーディングカンパニーとして、国境を越えたシームレスな決済の実現、ペイメント・エコシステムの拡大を支援していきます。
調査概要
本レポートは、QRコード決済のエコシステムを築きたい、もしくは拡大させたいというモバイルマネー事業者にとって有益な情報を提供することを目的とし、NTTデータがGSMAから委託を受け、Accourt社と共同で、QRコード決済についての包括的な分析調査を実施し、まとめたものです。
本調査では、世界のQRコード決済事業者(移動体通信事業者・Fintech事業者)/中央銀行/業界団体/クレジットカードブランドといった重要アクターへのインタビューによる質的調査を実施しています。また各種データの分析に加え、世界の主要なQRコードサービス(Alipay、WeChat Pay、EMV、JPQR、Bharat QR、HKQR、SGQR、QRIS、Prompt Pay、Mercado Pago、Pix)の比較調査を実施しています。
レポートについて
本レポートでは、QRコード決済について世界的調査(アジア・アフリカ・中東・欧米)を実施し、以下の点について考察を行いました。
- QRコードをめぐる世界のトレンド
- QRコードの歴史およびカテゴリー
- 世界におけるデジタル決済の市場規模
- QRコードの主要なプロダクトフロー
- 世界の主要なQRコードの仕様比較
- QRコードのインターオペラビリティー(相互運用性)を実現するためのアプローチ
レポートサマリー
モバイルマネー事業者は、QRコード商業決済(QR code merchant payment)の潮流を、自社サービスを成長させる好機と捉えています。
- 2020年には、世界のデジタル決済市場は年間トランザクション4.4兆USドルに達し、2024年まで年平均17%の成長を見せると予想されます。
- QRコード決済は、クレジットカードといった老舗の決済手段と競合しながら、地域的に偏りつつも、大きく成長を続けています。
- QRコード決済のスキームは世界中に存在しますが、中国の2大事業者AlipayとWechat Payが突出して成功しています。両社の決済サービスは、大躍進を遂げた自社のEコマースとソーシャルメディアプラットフォームをマネタイズ化するための副産物として進化したものであり、決済サービスそれ自体を目的として、単体で生み出されたものではありませんでした。
- この2つのエコシステムは、もともと高い顧客エンゲージメントを有していました。例えば、Alibabaグループのエコシステムにおいて、2つ以上の商品・サービスを定期的に利用している顧客は6.4億人います。5つ以上の商品・サービスを定期的に利用している人は1.9億人います。
重要ポイント
- アフリカなどの地域ではQRコード決済に対応していないフィーチャーフォンが主流となっていますが、APAC諸国ではQRコード決済に対応可能なスマートフォンが主流となっています。
- 高い顧客エンゲージメントを生み出す商品やサービス、そのコアとなるエコシステムを築くことが重要です。
(ペイメントはエコシステムを支えるものであり、ペイメントそれ自体はエコシステムではありません。) - QRコード決済の普及には、手頃な価格のデバイス、インターネットへの接続性、銀行・ウォレット口座の普及および商業者への展開などが重要となっています。
- インターオペラビリティー(相互運用性)の重要性は、サービス展開の初期段階ではあまり意識されないことが多いです。まずは国内取引におけるインターオペラビリティーが優先されます。しかし、事業者がQRコード決済のエコシステムを、国境を越えて広げていくためには、インターオペラビリティーを確保することが重要となってきます。
- 顧客がエコシステムへのエンゲージメント(関わり)を高めたいと思うようにする必要があります。全てのエコシステムにおいて、顧客への教育と信頼構築が重要になってきます。
- QRコード決済の普及には、地域ごとに全く異なるアプローチが必要となってきます。(例えば、地域ごとにスマートフォン普及率とインターネット接続性は異なります。)
- 政府・行政のアプローチと介入のレベルは地域によって異なります。例えば、今は状況が変わってきていますが、過去アフリカと中国では政府はあまり介入してきませんでした。一方で、東南アジアやインドでは、初期段階から、政府が積極的に介入しています。
- QRコード決済単体での収益は望ましいものとはなりがたいでしょう。QRコード決済は、他の商品やサービスをサポートする中でとれたデータから価値を生み出すといえるでしょう。例えば信用情報や、顧客・商業者のマイクロファイナンスといったところです。
終わりに
本調査の結果、QRコード決済は、モバイルマネー事業者にとって複雑かつ重大な好機であり、慎重に戦略を立てる必要があるといえます。QRコード決済において顧客を一貫してサポートしていき、顧客登録者数を増やし、トランザクションを生み、収益を上げていくためには、インターオペラビリティーが特に重要になってくることが調査で明らかとなりました。
今後について
QRコード決済は、ペイメント・エコシステムを拡大していくうえで、非常に重要な要素となっています。NTTデータグループは、APACにおけるペイメントサービスプロバイダーのリーディングカンパニーとして、国境を越えたシームレスな決済の実現、ペイメント・エコシステムの拡大を支援していきます。
注釈
- 注1GSMA(GSM Association)は世界中のモバイル通信事業者を代表する団体で、750社を超えるモバイル事業者に加え、デバイス製造事業者、ソフトウエア企業、装置プロバイダー、インターネット企業などが加盟しています。
- 注2Accourt社はペイメント業界の戦略立案・実行支援を実施する英国のコンサルティングファームです。
調査結果のダウンロードについて
本調査レポート“QR Code Merchant Payments: A growth opportunity for mobile money providers”は、こちら(https://www.nttdata-gps.com/white-papers/qr-code-merchant-payments)(英語)のサイトからダウンロード可能です。
本件に関するお問い合わせ
株式会社NTTデータ
ITサービス&ペイメント事業本部
グローバルペイメント&サービス事業部
柳澤、天満(てんま)、志賀
E-mail:globalpay-js@kits.nttdata.co.jp
Web:https://www.nttdata.com/jp/ja/lineup/global_payment/