慶應大学、東亞合成(株)とインターネット型分散コンピューティングコンピューティングプロジェクト“cell computing® βirth/セルコンピューティング バース” を開始 「ゲノムスーパーパワーを見つけよう!/自然免疫系遺伝子領域解明プロジェクト」「ゲノムのパズルを解こう!/ヒトゲノム染色体間法則性解明プロジェクト」

ニュースリリース/NTTデータ

2005年2月16日

株式会社NTTデータ

(株)NTTデータ(江東区 社長:浜口 友一)は、パソコンのほとんど使われていないCPU能力やメモリ、HDDをインターネットやイントラネットで統合し仮想的なひとつのスーパーコンピュータとして利用することを可能にする cell computing®/セルコンピューティングで、一般PCユーザの家庭などにあるPCの参加のもと、慶應義塾大学、東亞合成株式会社との大規模計算研究プロジェクトを、cell computing βirth/セルコンピューティング バースで
2月16日から開始し、セルコンピューティングプラットフォーム事業を推進していきます。

【背 景】
複数の計算機をネットワークで結び利用することを目標とする現在のグリッド・コンピューティングのほとんどは研究機関、大学、企業がもつ高額なサーバを統合して利用するもので、限られた人だけが利用できるものになっています。一方、cell computing/セルコンピューティングは個人がもつパソコン(将来はゲーム機、情報家電、IP電話機等の利用も検討)を利用するため、研究機関、大学、企業だけでなく、子供からお年寄りまで、たくさんの個人が関わって研究、商品開発を行うことを可能にします。そのため、企業、組織と個人が「発見」や「創造」で結ばれ、問題意識の共有、研究成果の利用そして商品購入への意識などが高まる「場」としても機能していきます。
今回は、慶應大学と東亞合成の研究に対して、cell computingがインターネットを通じて、パソコンの能力を統合し、巨大なコンピューティングパワーを提供しつつ、参加者間のコミュニティの形成を行います。

【プロジェクトの概要】
cell computing βirthプロジェクトは、プロジェクト開始時には、以下の2つのプロジェクトを実施します。

『ゲノムスーパーパワーを見つけよう!/自然免疫系遺伝子領域解明プロジェクト』
プロジェクト主体:慶應義塾大学医学部分子生物教室 清水信義教授


慶應義塾大学(医学部分子生物学教室 清水信義教授)とは、生物が長い進化の過程で獲得した自然免疫系の主な成分である抗菌性ペプチドを保存するゲノムDNA領域の特徴を解析する「ゲノムスーパーパワーを見つけよう!/自然免疫系遺伝子領域解明プロジェクト」を行います。
ゲノムスーパーパワー(GSP)とは、各生物のゲノムに秘められている特殊な能力です。なかでも生物が長い進化の過程で獲得した抵抗力、すなわち自然免疫の主な成分である抗菌性ペプチドにより、カエルはかなり汚れた沼の中でも棲息できる抵抗力をもち、土の中に棲むミミズや昆虫も同様の抵抗力をもちます。主要な自然免疫系抗菌ペプチドであるデフェンシンは、真核生物に広く分布していることから、そのデフェンシン遺伝子は、真核生物共通の祖先から受け継がれてきたものであると考えられています。デフェンシンは、細菌等による感染の際、生体防御のために、デフェンシン遺伝子を優先的に発現することにより分泌されるため、当該遺伝子を含むDNA領域には、他のDNA領域とは異なる生体防御のための何らかの共通な特徴が存在していると考えられます。
今回のプロジェクトにおいては、デフェンシン遺伝子を取り巻くDNA領域(30万塩基)と脊椎動物(ヒト、マウス、ラット、メダカ)、無脊椎動物(ハエ)、植物(シロイヌナズナ)のゲノムにおける類似度をBOLERO+によりスコア化、解析することによりその謎に挑んでいきます。
生物種を越えて保存されている自然免疫系遺伝子(抗菌ペプチド:デフェンシン)領域の共通の特性を解明することにより、これからゲノムDNAの配列が決定されるであろう様々な生物種の自然免疫系遺伝子領域(抗菌ペプチド)の予測が可能になり、新しいゲノムス-パ-パワ-の発見に繋ります。

『ゲノムのパズルを解こう!/ヒトゲノム染色体間法則性解明プロジェクト』
プロジェクト主体: 東亞合成株式会社名古屋研究機構新製品開発研究所


東亞合成株式会社(名古屋研究機構新製品開発研究所 吉田徹彦主席研究員)とは、遺伝子病解明などにも貢献しうる基礎データを得ることを目的に、ヒトゲノム染色体間の並びの本質とは何かということに対して挑戦する「ゲノムのパズルを解こう!/ヒトゲノム染色体間法則性解明プロジェクト」を行います。
ヒトゲノムの染色体は常染色体22本,性染色体2本(X,Y)からなります。基本的にはその染色体の大きいものからの順により、1番染色体,2番染色体…として人為的に区別されています。今回のプロジェクトでは、ゲノム染色体間の並びの法則性(規則性)を解明する一つの試みとして、ヒトゲノム染色体(24本)の順列(24の階乗:24!=6.20448402×1023=6千垓)の中に、周期性が高いものが存在するのかを探索していきます。
この試みに用いる基本的なデ-タは、2002年、サイエンス誌にBaileyらにより発表(ヒトゲノムに最近4000万年以内に生じた分節重複に関する内容の論文)された、ヒトゲノム染色体上の非常に類似した重複領域に挟まれた大きなホットスポット領域の169箇所です。その領域の内24箇所が遺伝子病と関連があるとされています。 解析方法として、ホットスポット領域、非ホットスポット領域それぞれを染色体毎に区分(ヒトゲノム全体を65536の単位に分割)したデ-タを基に、ヒトゲノム染色体24本を並び替えて一本の"ひも"のように連結した状態でホットスポット領域間の法則性(周期性)を探索していきます。具体的には、染色体24本の順列(24!)を作成し、それぞれの順列デ-タ毎に、高速フ-リエ変換処理を行い、最も周期性の高い順列を24!の中から見つける(CHRONOSによる高速フーリエ変換)というものです。 未だ明らかにされていないヒトゲノム染色体間の法則性(染色体を跨いでのDNAの周期性を発見等)を発見することにより、ガンや糖尿病を始めとする数多くの遺伝子病解明・予防のための新しい知の地平線を生み出すことができるかもしれません。


【今回のシステムについて】
今回のシステムでは、カリフォルニア大学により開発されたオープンソースソフトウェアのBOINCを分散コンピューティングの基盤として用い、基盤コンピュータシステム、グラフィック画面表示ソフト、Webシステムとの連携、“BOLERO+”、“CHRONOS”の移植等の開発をNTTデータが行いました。
BOINCは、カリフォルニア大学により行われているSETI@home、オックスフォード大学により行われているClimateprediction.net等の大規模分散コンピューティングプロジェクトに利用されています。


【参加方法について】
http://www.cellcomputing.netにて、メンバソフトをダウンロードし、インストールし、登録するのみで参加するこが可能です。


【キャラクタコミュニティWebサイトとの連携】
プロジェクトに参加し、PCが計算処理を行うことにより得られるポイントで、コミュニティWebサイト“CELLTOWN”内で、好きなキャラクタを作り、家を持ち、様々なアイテムを購入して、参加者同士でコミュニケーションをとりあって、遊ぶことができます。


【今後について】
NTTデータでは、2002年12月から約4ヶ月間、バイオとナノテク分野の計算を一般の方のPC参加により12000台のパソコンでcell computingの実証実験を行い、1台のパソコンだと611年かかる計算処理を終えることが出来ました。また、2004年6月からは、イントラネットで利用できるパッケージ商品cell computing BOXTMを販売しています。

グリッド・コンピューティングのメリットと企業・組織と個人を結ぶ場としての可能性を併せ持つcell computingは、学術研究、バイオ、コンピュータグラフィックス、そのほかの業界での利用が検討されており、cell computing βirthはそれを加速する機会となります。

NTTデータでは、今回の“cell computing βirth”に利用する基盤システムにより、当社だけでなく、セルコンピューティングによるサービスの提供事業を行うアプリケーションサービスプロバイダ様にご利用頂くセルコンピューティングプラットフォームを提供する事業を進めて参ります。また、それにあわせてより一層、セルコンピューティングで利用できるアプリケーションを増やすために、アプリケーション開発企業とのパートナーシップや支援を積極的に進めて参ります。


*“cell computing βirth/セルコンピューティング バース”は、cell computingのインターネット型サービスにおけるβフェーズであり、事業の誕生(Birth)となるプロジェクトであることから名付けました。

*cell computing®は株式会社NTTデータの登録商標です。また、cell computing BOXTMは、株式会社NTTデータの商標です。
*その他、文中の社名、商品名等は各社の商標または登録商標です。



別紙 募集の概要


本件に関するお問い合わせ先
報道関係のお問い合わせ

株式会社NTTデータ
広報室 宗像(むなかた)
TEL:03-5546-8051

プロジェクトに関するお問い合わせ
株式会社NTTデータ
ビジネスイノベーション本部
セルコンピューティングビジネス推進室 
e-mail:info@cellcomputing.jp