東京女子医科大学、オーダーメイド創薬(株)、(株)NTTデータによる遺伝子型情報を利用した医療に関する共同研究開始 〜オーダーメイド医療の実現に向けて3月より病院での試験運用を開始〜
ニュースリリース/NTTデータ
2006年3月23日
東京女子医科大学 膠原病リウマチ痛風センター
オーダーメイド創薬株式会社
株式会社NTTデータ
東京女子医科大学 膠原病リウマチ痛風センター(鎌谷 直之 所長)とオーダーメイド創薬株式会社(代表取締役社長:大西 洋三)と株式会社NTTデータ(代表取締役社長:浜口 友一)は、オーダーメイド医療の実現に向けたエビデンス(科学的根拠)の利用・検査・システム化に関する共同研究を開始しました。
2006年3月より東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センターでの試験運用を開始し、医療現場でのオーダーメイド医療実践の第一歩を踏み出します。
1.背景
遺伝子解析の進展に伴い、同じ薬でも、飲む人の遺伝子型の違いにより、効く人、効かない人、副作用が出てしまう人など、人により薬の効果に違いがあることが解りつつあります。既に数種類の薬剤については、遺伝子型と薬理効果について解明済みであり、今後もこうした対象薬剤の範囲が広がることが見込まれています。
また、特定の病気を引き起こすリスクが高い遺伝子情報がデータ化されることにより、将来は患者さんの発病や予後の予測を行うことで、予防または二次予防への応用も見込まれています。
一方で、患者さんの遺伝子情報という重要な個人情報を保護するため、セキュリティの高いシステムを導入したり、個人情報を直接扱う医療機関従事者の意識を高めたりすることにより、患者さんが安心して遺伝子検査を行うことができる環境整備を図っていくことが重要となっています。
2.関節リウマチのオーダーメイド医療の研究について
この研究では、関節リウマチの治療に用いられる薬剤に対する効果や副作用に関係すること、あるいは同疾患のうち重症となる合併症に関係することが、少なくとも二つの独立した疫学研究により確認された遺伝子多型(SNP*1またはハプロタイプ*2)を用いていきます。この遺伝子多型について、患者さんの遺伝子のタイプを決定し、その結果をもとに医師と患者さんに対し、治療に有用な情報を提供します。さらに、治療効果の改善、副作用の提言、合併症の提言などの影響を研究します。
具体的には、以下の3つの遺伝子、薬剤、疾患を対象として研究を行います。
3.オーダーメイド医療の仕組みの構築について
高速なSNPタイピング装置、臨床情報・遺伝子型情報のデータベース、エビデンスデータベース、ハプロタイプ推定を含むリスク診断システムを組み合わせ、薬剤の副作用・投与量予測や易罹患性(いりかんせい)診断を行うと共に、その結果をエビデンスデータベースへフィードバックさせることにより、さらにエビデンスの精度を向上させる一連の仕組みの研究を行います。
4.今後の取組みについて
今後、オーダーメイド医療で活用することができる遺伝子型に関するエビデンスの集積のあり方を検討するとともに、それを医療機関で利用する際に必要となる検査機器と診断支援システムの開発に取り組みます。
本取り組みは以下の役割分担にて行います。
(東京女子医科大学)
(オーダーメイド創薬株式会社)
(株式会社NTTデータ)
*1 SNP
SNPとはSingle Nucleotide Polymorphismの略で、一塩基多型とも呼ばれます。遺伝子はグアニン(G)、アデニン(A)、シトシン(C)、チミン(T)と呼ばれる4種類のDNAの並び方が、タンパク質の設計図となっていますが、そのうち人によって並び方が異なる部位のことをSNPと呼びます。(例:ACGCTA→ACGATA)
*2 ハプロタイプ
遺伝子をどちらの親から受け継いだ遺伝子かで分けたときに、一方の親の由来の遺伝子の並び方をハプロタイプと呼びます。通常の遺伝子検査では、どの遺伝子情報とどの遺伝子情報が同じ親由来のものであるかを知ることは困難であるため、統計的手法と専用のアルゴリズムを用いて推定することが必要となります。
2006年3月より東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センターでの試験運用を開始し、医療現場でのオーダーメイド医療実践の第一歩を踏み出します。
1.背景
遺伝子解析の進展に伴い、同じ薬でも、飲む人の遺伝子型の違いにより、効く人、効かない人、副作用が出てしまう人など、人により薬の効果に違いがあることが解りつつあります。既に数種類の薬剤については、遺伝子型と薬理効果について解明済みであり、今後もこうした対象薬剤の範囲が広がることが見込まれています。
また、特定の病気を引き起こすリスクが高い遺伝子情報がデータ化されることにより、将来は患者さんの発病や予後の予測を行うことで、予防または二次予防への応用も見込まれています。
一方で、患者さんの遺伝子情報という重要な個人情報を保護するため、セキュリティの高いシステムを導入したり、個人情報を直接扱う医療機関従事者の意識を高めたりすることにより、患者さんが安心して遺伝子検査を行うことができる環境整備を図っていくことが重要となっています。
2.関節リウマチのオーダーメイド医療の研究について
この研究では、関節リウマチの治療に用いられる薬剤に対する効果や副作用に関係すること、あるいは同疾患のうち重症となる合併症に関係することが、少なくとも二つの独立した疫学研究により確認された遺伝子多型(SNP*1またはハプロタイプ*2)を用いていきます。この遺伝子多型について、患者さんの遺伝子のタイプを決定し、その結果をもとに医師と患者さんに対し、治療に有用な情報を提供します。さらに、治療効果の改善、副作用の提言、合併症の提言などの影響を研究します。
具体的には、以下の3つの遺伝子、薬剤、疾患を対象として研究を行います。
- MTHFR遺伝子のSNP遺伝子型を用いたオーダーメイド医療
関節リウマチ治療に世界で最も多く使われているメトトレキサートは関節破壊を防止するなど効果も優れているが、副作用も問題となっている。メトトレキサートに関係する葉酸の代謝を行うMTHFRという酵素の遺伝子の2か所のSNPを遺伝子検査で決定することにより、メトトレキサートの副作用の起こりやすさ、メトトレキサートの効きやすさを予測する。 - NAT2遺伝子のハプロタイプを用いたオーダーメイド医療
スルファサラジンは関節リウマチの治療のために2番目に多く使われている薬である。この薬剤の無毒化に関係しているNAT2という酵素の遺伝子の4-5箇所のSNPを遺伝子検査で決定し、ハプロタイプという複数のSNPのつながりを解析するアルゴリズムを使うことによりスルファサラジンに対して副作用がでやすいかどうかを予測する。 - SAA遺伝子のSNP遺伝子型を用いたオーダーメイド医療
関節リウマチ患者の一部はアミロイドーシスという、腎臓や心臓が冒される病気を合併することがある。アミロイドーシスの原因物質であるSAAという蛋白質の遺伝子のSNPを遺伝子検査で決定し、アミロイドーシスになりやすさを個人レベルで予測する。
3.オーダーメイド医療の仕組みの構築について
高速なSNPタイピング装置、臨床情報・遺伝子型情報のデータベース、エビデンスデータベース、ハプロタイプ推定を含むリスク診断システムを組み合わせ、薬剤の副作用・投与量予測や易罹患性(いりかんせい)診断を行うと共に、その結果をエビデンスデータベースへフィードバックさせることにより、さらにエビデンスの精度を向上させる一連の仕組みの研究を行います。
4.今後の取組みについて
今後、オーダーメイド医療で活用することができる遺伝子型に関するエビデンスの集積のあり方を検討するとともに、それを医療機関で利用する際に必要となる検査機器と診断支援システムの開発に取り組みます。
本取り組みは以下の役割分担にて行います。
(東京女子医科大学)
- リウマチ薬の薬効、副作用及び予後に関する遺伝子多型に関するエビデンスの提供。
- 医療現場で利用することによる問題点の抽出と機能の最適化の検討。
- 遺伝子検査やその結果を患者さんへお知らせする際の倫理的な問題点の洗い出しと改善方法の検討。
(オーダーメイド創薬株式会社)
- SNPタイピング装置及び試薬の提供。
- 今後新たに解明される遺伝子型に関するエビデンスを想定したデータ構造、方式の検討。
(株式会社NTTデータ)
- 提供された遺伝子多型に関するエビデンスを用いた薬効、副作用及び予後のリスク診断システムと、結果のフィードバックによるエビデンスのブラッシュアップが可能なシステムの開発。
*1 SNP
SNPとはSingle Nucleotide Polymorphismの略で、一塩基多型とも呼ばれます。遺伝子はグアニン(G)、アデニン(A)、シトシン(C)、チミン(T)と呼ばれる4種類のDNAの並び方が、タンパク質の設計図となっていますが、そのうち人によって並び方が異なる部位のことをSNPと呼びます。(例:ACGCTA→ACGATA)
*2 ハプロタイプ
遺伝子をどちらの親から受け継いだ遺伝子かで分けたときに、一方の親の由来の遺伝子の並び方をハプロタイプと呼びます。通常の遺伝子検査では、どの遺伝子情報とどの遺伝子情報が同じ親由来のものであるかを知ることは困難であるため、統計的手法と専用のアルゴリズムを用いて推定することが必要となります。