情報システム基盤の実現要求をお客様視点で見える化する共同検討会の発足について 〜6社でシステムの非機能要求に関する要求認識の共通化を促進〜
2008年4月14日
株式会社NTTデータ
富士通株式会社
日本電気株式会社
株式会社日立製作所
三菱電機インフォメーションシステムズ株式会社
沖電気工業株式会社
(株)NTTデータ(代表取締役社長:山下 徹、以下NTTデータ)、富士通(株)(代表取締役社長:黒川 博昭、以下富士通)、日本電気(株)(代表取締役 執行役員社長:矢野 薫、以下NEC)、(株)日立製作所(執行役社長:古川 一夫、以下日立)、三菱電機インフォメーションシステムズ(株)(取締役社長:門脇 三雄、以下MDIS)、沖電気工業(株)(代表取締役社長:篠塚 勝正、以下OKI)の6社はお客様システムの開発において非機能要求の見える化と確認方法を共同検討するために本日「システム基盤の発注者要求を見える化する非機能要求グレード検討会(略称:非機能要求グレード検討会)」を発足させました。非機能要求とは、お客様業務をシステム化する際にその実現レベルに大きく影響する情報システムの応答速度などの性能や障害時の耐性など、システムの機能要求(業務フローなど実現する業務自体を示す要求)と比較して従来は表しにくかったシステムの強度や品質を示すものです。
国内主要SI事業者6社が結集した本検討会では、これまで企業ごとやプロジェクトごとに行われていた情報システムの非機能要求の見える化と確認方法について、お客様(発注者)と開発ベンダ(受注者)の両者で共通の認識を持てるようにする方法を検討し、IT業界ならびにお客様企業まで広く利用されることを目指します。検討会では、2009年4月を目処に標準案を策定して公開し、普及展開を図っていく予定です。
【背景】
情報システムを開発する際には、実現したい業務フローや業務データとその処理方法といったお客様の業務機能要求とともに、システムの「強度」とも言える業務データ処理量、応答速度、同時処理件数といった性能のほか、ハードウェア障害や災害への対策といった障害耐性など、非機能要求と呼ばれるシステム化の実現要求を明確にした上で、それらをお客様と開発ベンダの間で確認しながら開発を進めていくことが重要です。
その非機能要求の多くは建築物でいうところの基礎工事部分にあたるシステム基盤に主に反映されるため、要求が確定した後の、開発途中で大きな変更は難しくなります。また、不十分な認識に基づいて開発してしまった場合、システムが提供する業務を想定外の方法で運用しなければなりません。さらに、運用後に問題が発覚した場合には、修正のためのコスト負担が増大し、潜在的に危険な運用の継続といったリスクが生じてしまいます。さまざまな社会活動や多くのビジネスを支える情報システムは、より大規模かつ複雑化しており、それに伴いシステムにおいては非機能要求が占める割合およびその重要性が高まっています。そのため、システム化が進む現在では、非機能要求を正確に認識しシステムに確実に反映することがより一層重要となっています。
しかし、ハードウェア・設備、OSやミドルウエア、そして運用管理の仕組みや体制など複数の要素が複雑に絡み合うシステム基盤へ主に反映される非機能要求は、従来からシステム利用者であるお客様にはその重要性と実現レベルが認識しづらいものでした。また、その要求を客観的に計る基準がないためお客様が開発ベンダへ要求することも難しく、逆に開発ベンダも、よい説明方法がないため、企業ごとやプロジェクトごとに異なった方法で確認されているのが現状です。その結果、情報システムの重要な要素であるにもかかわらず、非機能要求はお客様と開発ベンダの間で共通に認識されにくく、双方の認識の違いが大規模な手戻りや厳しいスケジュールでの開発、運用を誘発し、結果として社会的リスクや業務遂行リスクとなりうるトラブルの原因ともなっています。
この問題を解決するため、今回6社は、「システム基盤の発注者要求を見える化する非機能要求グレード検討会(略称:非機能要求グレード検討会)」を発足させ、お客様と開発ベンダの双方で共通の理解を持つための方法、および、その普及推進についての共同検討を行うとともに、IT業界ならびにお客様企業まで広く普及展開を図っていくことで合意いたしました。
【検討の内容について】
本検討会では、参加各社が持つ事例や知見を持ち寄り、情報システムを開発するなかで、お客様と開発ベンダとで確認し合意することが望ましいシステム基盤に関わる非機能要求について、「要求項目」と「グレード(要求項目の実現レベルの差を示す)」の二つを「見える化」します。具体的には、非機能要求の要求項目ごとに選択肢を示しメニュー化することにより見えにくかったシステム化実現要求の「見える化」をはかり、受発注者双方で共通認識を図るための水準を策定し、両者が理解し確認しやすい成果物体系として開発するとともにその普及展開を図っていきます。
なお、要求項目の実現レベルの差を示す「グレード」とは居住環境に例えると下記のようなイメージになります。
また、非機能要求の要求項目ごとに選択肢を示しメニュー化する成果物のイメージは下記のようになります。
【スケジュール】
各社の持つシステムの非機能要求の事例や知見を持ち寄り、効果的な表現方法の検討から順次着手し、1年後の2009年4月を目処に標準案を策定してホームページなどで公開し、その後、他の関連団体への働きかけや出版等の手段を中心に普及展開を行い、2009年9月末をもって活動を終了する予定です。
【用語解説】
非機能要求:
情報システムの開発をするにあたり、お客様から開発ベンダに対する要求は大きく分けて2種類ある。情報システムで業務サービス自体を実現するための要求である「機能要求」とそれ以外の要求である「非機能要求」である。「非機能要求」の多くは特定の機能をどの程度の速さで処理するか、どの程度の問題が起きても機能を継続して提供するかなど、機能を実行する際の実現レベルを示す。
システム基盤:
建築物はその環境を構成する多くの要素が組み合わさり連携することで、安心してその中で生活・活動していけるような仕組み・仕掛けが作られている。例えば、電気・水道・ガスと言った各種ユーティリティや維持管理の仕組みがそうである。情報システムも多くの要素(ハードウェア・設備、OS・ミドルウエア、運用管理の仕組みや体制など)が組み合わさり連携することで、安定的に業務サービスが提供される。これらの仕組み・仕掛けをシステム基盤と呼ぶ。