画面プロトタイプをプログラミング無しで作成するツールにより上流工程でシステムの“使いやすさ”の体感を実現 〜米Axure社のツールを日本語化しツールの販売も実施〜
2008年10月15日
株式会社NTTデータ
NTT DATA AgileNet L.L.C.
(株)NTTデータ(代表取締役社長:山下 徹、以下NTTデータ)は、Axure Software Solutions, Inc.が開発した、画面プロトタイプをプログラミング無しで簡単に作成できるツール「Axure RP(アクシュア・アールピー)」日本語版をシステム開発の初期の工程である要件定義工程(システムに盛り込む機能や性能等を決定する工程)に導入し、システムの使いやすさを含めたお客様の要求を的確に抽出する手法を開発しました。
この新手法をNTTデータ内のプロジェクトで適用したところ、要件抽出における品質向上と約30%の工期短縮を実現できることが確認できました。これを受け、NTTデータでは「Axure RP」と開発に使用している他の製造ツールとシームレスに連携をできる開発環境を2008年度中に実現するとともに、新手法について2009年に50件の適応を目指して適用を拡大していきます。
また、新手法で利用する「Axure RP」の日本語版については、日本語化を担当したNTT DATA AgileNet L.L.C.(社長:木谷 強、以下NTT DATA AgileNet)が日本における販売代理店となり、11月下旬より販売を開始し、3年間で1500本を目標に販売を行います。
【開発の背景】
NTTデータでは中期経営施策の一つとして「開発プロセスの変革」を掲げ、システム開発のメソドロジー(方法論)や開発プラットフォームの統一など仕事の標準化を推進し、品質および生産性の向上に取り組んでいます。
この一環として、システム開発の企画工程でビジネスモデリング手法MOYA®(モヤ)、要件定義工程以降で統合開発ソリューションTERASOLUNA®(テラソルナ)などを適用して、システム開発プロセスの統一を行っています。しかし、従来の手法による要件定義工程では、主に紙の仕様書で発注者(お客様)と要件の確認作業を行うため、想定されるシステムの動きを確認できないことから、発注者と受注者(開発者)との間でシステムの利用イメージがずれやすく、その結果として追加要件が発生し開発の手戻り(やり直し)や、システム構築後に“使いやすさ”が指摘されることなどが、頻繁に発生していました。
【新手法について】
これらの問題解決のために、要件定義工程からシステムの実現イメージを発注者に提示することで、その後の工程での追加要件の発生を低減し、かつ、システムの“使いやすさ”を提示することが重要と考え、Axure社の画面プロトタイピングツール「Axure RP」の特長であるシステムの実現イメージ(以下、プロトタイプ)を簡単に作成できる機能を活かした手法を定めました。
具体的には、MOYAやアトリス社のPEXA®(ペクサ)メソドロジーなどを利用して、企画工程で業務の全体像を定め、それを元にプロトタイプを「Axure RP」で作成します。作成したプロトタイプをベースに発注者要求を抽出し、同時に関係者による評価を実施しながらシステム要件を合意していきます。合意を得たプロトタイプは、画面設計情報として設計・製造工程へ引き継ぎ、後の工程にも活かしていきます。
本手法の適用範囲は、要件定義工程の業務抽出、機能抽出と画面定義です(図1参照)。
図1:システム開発プロセスの成果物と新手法の対応関係
【新手法の導入効果】
従来から要件定義の際にシステムのプロトタイプを作成する手段はありました。しかし、作成が容易ではなかったため、開発プロジェクトへの負担が大きいという問題点がありました。
新手法では「Axure RP」を用いることで、容易にプロトタイプを作成できるため、手間がかかりません。今年度の上半期に複数のプロジェクトに適用し評価した結果、上流工程でのレビュー指摘件数が増加し、後工程における追加要件が減少したことで、システム要件の抽出品質の向上と同時に、約30%の工期短縮を実現しています。
また、要件定義工程でインタラクティブなプロトタイプを提示できることから、システム開発工程の上流でシステムの使いやすさに関する確認・評価が容易となり、結果としてエンドユーザにとって使いやすいシステムを開発することにつながります。
【画面プロトタイピングツール「Axure RP」の特長と販売】
「Axure RP」には、下記の3つの優れた特長があります。
- 画面作成に特化したデザイン機能を豊富に持つことで、技術的なスキルを使わずにプロトタイプを作成することができます。
- プログラミングなしで、実システムに近い動きのあるプロトタイプ作成することができます。
- プロトタイプを元にした画面仕様書の自動生成機能を用いて、仕様書の書き起こしの手間を省力化できます。
この「Axure RP」の日本語版は、日本語化を実施したNTT DATA AgileNetが日本市場での販売代理店となり、11月下旬より販売を開始します。なお、日本語の評価版については、NTT DATA AgileNetのサイトから近日中に無償でダウンロード可能となる予定です。英語版は開発元であるAxure社より発売中です。
【今後の予定】
NTTデータでは「Axure RP」および本手法の適用案件数を増やし、社内展開を拡大していきます。同時に、「Axure RP」で開発した画面を、TERASOLUNA IDEやマスカット、および市販製品であるAdobe Dreamweaverなど、既にNTTデータで使用中の製造ツールとシームレスに連携できる開発環境を2008年度中に実現します。同時に、NTTデータなど国内ベンダ9社による「実践的アプローチによる要求仕様の発注者ビュー検討会」が作成した「発注者ビューガイドライン」を、本プロセスの中に取り入れ、作成したプロトタイプのチェック観点として取り入れることを検討しています。
NTT DATA AgileNetでは、「Axure RP」日本語版の販売について、3年間で1500本の販売を計画しています。
なお、2008年10月15日(水)〜2008年10月17日(金)に東京ビックサイトで開催している「ITpro EXPO 2008 Autumn」のNTTデータグループブースにて、「AxureRP」日本語版のデモを体験いただくことが可能です。
注 MOYA®は株式会社NTTデータの登録商標です。
注 TERASOLUNA®は株式会社NTTデータの登録商標です。
注 PEXA®は株式会社アトリスの登録商標です。
注 その他、文中に記載されている商品・サービス名、および会社名は、それぞれ各社の登録商標または商標です。