システム基盤の発注者要求を見える化する「非機能要求グレード」を公開しパブリックコメントの募集開始 〜今後は成果の有効性検証のための活動を実施〜
2009年5月26日
株式会社NTTデータ
富士通株式会社
日本電気株式会社
株式会社日立製作所
三菱電機インフォメーションシステムズ株式会社
沖電気工業株式会社
(株)NTTデータ、富士通(株)、日本電気(株)、(株)日立製作所、三菱電機インフォメーションシステムズ(株)、沖電気工業(株)(注1)の国内SI(システム構築)事業者6社が参加する「システム基盤の発注者要求を見える化する非機能要求グレード検討会(略称:非機能要求グレード検討会)」は、非機能要求(注2)に対して情報システムの発注者(顧客)と受注者(ベンダー)が共通の認識を得ることを目的としたツール群である「非機能要求グレード」を、本日(2009年5月26日)から公式Webサイト(注3)にて公開します。
今回公開する「非機能要求グレード」は、2008年9月に公開した「システム基盤の非機能要求に関する項目一覧」に、主要な非機能要求を早期に発注者と受注者で確認するための「システム基盤の非機能要求に関するグレード表」を新たに追加したものです。「非機能要求グレード」を活用することで、発注者と受注者で非機能要求を段階的に確認でき、発注者の利用目的により合致したシステム基盤(注4)の構築に貢献します。
また、この「非機能要求グレード」を実際の多種多様なプロジェクトで利用できるようにするために、同Webサイトにて「非機能要求グレード」に関するパブリックコメントを本日から2009年6月30日まで募集します。寄せられたコメントは、「非機能要求グレード」のさらなる改善・改良に向けて、成果物に反映していく予定です。非機能要求グレード検討会の最終成果物の公開は2009年度下期を予定しています。
【「非機能要求グレード」について】
「非機能要求グレード」は、「システム基盤の非機能要求に関するグレード表(以下、グレード表)」と「システム基盤の非機能要求に関する項目一覧(以下、項目一覧)」、「システム基盤の非機能要求に関する樹系図(以下、樹系図)」(注5)、「「非機能要求グレード」利用ガイド(以下、利用ガイド)」(注6)から構成されます。「非機能要求グレード」は、発注者と受注者との間で確認が必要だが、詳細な項目を同時に確認することが難しい非機能要求を、重要な項目から順に扱えるように、図1のように段階的に詳細化しながら要求の確認を行うためのツール群です。
図1「非機能要求グレード」の構成と利用イメージ
- 段階(1):開発するシステムのイメージに最も近いシステムの例を1つ選択
- 「利用ガイド」では具体的なシステムのイメージが描けるように「モデルシステム」として3つのシステム例を用意しています。開発予定のシステムのイメージに最も近いシステム例を1つ選択することで、「グレード表」から対応した要求レベルの設定例を得ることができ、非機能要求に関する今後の検討のベースとして利用できます。
- 段階(2):主要な要求項目をシステムの例を参考にチューニング
- 「グレード表」は、非機能要求の中でも特に重要な項目について早期に検討できるようにするためのツールです。「モデルシステム」を選択することで得られた要求レベルの設定例と選択時の条件から、個別の要求を調整することで重要な非機能要求を確認できます。
例えば図2のように「社会的影響が限定されるシステム」において業務の停止を伴う障害が発生した場合に12時間以内の復旧を目指すことを例示していますが、業務停止の影響が大きい場合には6時間以内の復旧を目指すなどのより高い復旧目標を設定するように、レベル2からレベル3へ増加([+])させるような調整が必要となります。この調整に際しての考慮すべきポイントを「グレード表」では記述しています。図2「グレード表」のイメージ
- 段階(3):詳細な要求項目の要求レベルを確認
- 「非機能要求項目一覧」は、要件定義時までに確認が必要なシステム基盤に関する非機能要求項目のレベルを選択することで、詳細な非機能要求まで確認できるツールです。既に公開している「非機能要求項目一覧」(2008年9月29日公開済)は、非機能要求のチェックリストとして体系的に整理したものですが、今回新たに公開した「非機能要求項目一覧」では、利用シーンや利用目的に応じた実現の難易度を2〜6段階で「レベル」として定義し、要求の高低を選択できるようにしました。6分類245項目の非機能要求項目の全てにレベルを設定しています。
例えば、システムを構成するサーバの冗長化については図3のように0〜3の4段階でレベルを設けています。それぞれの非機能要求項目について発注者の要求がどのレベルに最も近いか確認することで、上流工程での確認漏れや認識の違いを少なくすることができます。図3「非機能要求項目一覧」のイメージ
【パブリックコメントの募集について】
「非機能要求グレード」を業種・業態を問わず多くの発注者や受注者に幅広くご利用頂けるものとするために、本日(2009年5月26日)から以下のようなパブリックコメント(ご意見やご提案)を募集します。
- 実際のプロジェクトや社内標準等における、非機能要求を確認するためのツールとしての利活用に関するご意見
- 本ツールをより利用しやすいツールとするためのご提案
パブリックコメント募集の詳細については、下記にあげる非機能要求グレード検討会公式Webサイトの次URLにて公開しています。
パブリックコメント用のURL:http://www.nttdata.com/jp/ja/nfr-grade/public.html
【検討会発足から現在までの歩み】
本検討会は、システム開発において、非機能要求の見える化と確認方法を共同検討するために2008年4月に発足しました。これまで企業ごとやプロジェクトごとに行われていた情報システムの非機能要求の見える化と確認方法について、国内SI(システム構築)事業者6社が結集して発注者と受注者の両者で共通の認識を持つための方法を検討し、IT業界ならびに発注者企業まで広く利用されるものにすることを目指しています。
検討会では各社の持つシステムの非機能要求の事例や知見をベースに検討し成果物第一弾として2008年9月に「非機能要求項目一覧」を公開しました。また、経済産業省主催の発注者企業7社などが参加し、本検討会も協力した非機能要求グレード「ユーザビュー検討委員会」からの改善要望を受けて検討を進めてきました。これらの結果、「非機能要求項目一覧」に具体的な選択肢を発注者へ提示できるように要求の実現レベルの段階を設け、より早期に重要な非機能要求を検討できるようにすることを狙ったツールである「グレード表」を新たに策定し、今回「非機能要求グレード」として公開しました。
【今後の予定について】
本日から2009年6月30日まで、パブリックコメントを募集させて頂き、期間中に皆様に頂いたご意見・ご提案により「非機能要求グレード」の改訂を実施します。また、実際のシステム開発に適用した場合の有効性を検証する活動を実施します。これらの活動を経て、「非機能要求グレード」の最終版を2009年度下期に公開する予定です。
(注1)(株)NTTデータ(代表取締役社長:山下 徹)、富士通(株)(代表取締役社長:野副 州旦)、日本電気(株)(代表取締役 執行役員社長:矢野 薫)、(株)日立製作所(執行役会長兼執行役社長:川村 隆)、三菱電機インフォメーションシステムズ(株)(取締役社長:門脇 三雄)、沖電気工業(株)(代表取締役社長:篠塚 勝正)
(注2)非機能要求とは、システムの障害時の耐性や応答速度などの性能といった、情報システムの強度や品質などについての発注者がシステムに求める要求のこと。
(注3)「非機能要求グレード検討会」公式Webサイト URL:http://www.nttdata.com/jp/ja/nfr-grade/
(注4)システム基盤とは、ネットワークやサーバ、OSやミドルウェアなど業務サービスの質を担保するために、システムに必要な「基盤」となるハードウェアやソフトウェアなどの仕掛けのこと。
(注5)非機能要求の項目の検討順序を可視化した図。2008年9月に「非機能要求項目一覧」と同時に公開したものを改訂している。
(注6)「非機能要求グレード」の内容と利用方法について解説しているドキュメント