次世代ネットワーク技術「OpenFlow」を活用したクラウド環境構築の検証実験に成功

ニュースリリース/NTTデータ

2011年10月 3日

株式会社NTTデータ

株式会社NTTデータは、ネットワーク機器ベンダーおよび仮想化ソフトウェアベンダー5社注1の協力を得て、次世代ネットワーク技術「OpenFlow」注2を活用したクラウド環境構築の検証実験を世界に先駆けて実施しました。

OpenFlowは、ネットワークの仮想化および運用自動化のための技術です。現在、サーバーの仮想化や運用自動化への対応は進んでいますが、ネットワークは仮想化や運用自動化への対応が難しく、構成変更する際に物理的な機器ごとに設定を行う必要があるなど運用コストがかかっています。この解決策としてOpenFlowが注目されています。

本検証実験では、これまで実現が難しかった、マルチベンダー環境におけるクラウド環境全体の運用自動化を目的とし、当社で開発中のOpenFlowコントローラーから各社のOpenFlowスイッチを制御する環境を、当社の設備上に構築し、有効性を確認しました。これによりユーザーは、特定のベンダーに縛られず、ネットワークも含めたクラウド環境全体の仮想化と運用自動化を実現することができます。

今後NTTデータは、OpenFlowコントローラーを2012年4月から販売開始する予定です注3。同時に、OpenFlowを活用したデータセンターネットワークの構築・運用サービスの提供開始を予定しており、運用コスト50%削減を目指します。

  • 注1アリスタネットワークスジャパン合同会社、エクストリーム ネットワークス株式会社、シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社、日本電気株式会社、ブロケード コミュニケーションズ システムズ株式会社
  • 注2Open Networking Foundationによって標準化が進められている、集中制御型の次世代ネットワーク技術
  • 注3NTTデータのオープンソース統合運用管理ソフトウェア「Hinemos®」(ヒネモス)のオプションとして販売

背景

近年、企業内のシステムに対する要求として、仮想化技術やクラウドに代表されるように、ビジネスの変化や拡大に対する柔軟かつ迅速な対応が求められています。それに対するネットワーク分野での取り組みとして、次世代ネットワーク技術である「OpenFlow」が注目されています。

現在、仮想化技術により、物理的に1台のサーバー上に複数の仮想的なサーバーを作り柔軟に変更することができますが、ネットワークは物理的な機器ごとに設定を行う必要があり、仮想化や運用自動化に対応することが難しいという課題があります。

ネットワークの仮想化を実現する技術として、従来からVLAN(Virtual Local Area Network)がありますが、以下のような問題がありました。

  1. 1.仮想ネットワークごとに割り当てるVLANのID管理が複雑になる
  2. 2.機器ごとにVLANの設定が必要となるため、設定変更に時間がかかる
  3. 3.サーバー仮想化技術であるライブマイグレーション(物理サーバー間の移動)にネットワークの設定が追随できない

OpenFlowは、OpenFlowコントローラーと呼ばれる機器が、パケットの転送を行うOpenFlowスイッチを集中制御するアーキテクチャであるため、機器毎の設定が必要ありません。さらに、OpenFlowコントローラーとOpenFowスイッチとの間のプロトコルが標準化されているため、ベンダー固有の設定を行う必要がありません。また、パケットの複数のフィールドを使用して、ユーザートラフィックを識別するため、IDの管理が必要となるVLANを使用しなくてもネットワークを仮想化することが可能です。

NTTデータでは、OpenFlowが仮想化環境での問題を解決する有望なネットワーク技術であると判断し、ネットワーク機器ベンダー各社とOpenFlowの実環境への適用を目指して議論を重ねてきました。そして、この度、各社のOpenFlowスイッチ(プロトタイプを含む)が利用できる状況になってきたため、検証実験を実施することにしました。

検証実験の概要

2011年7月~9月の3か月間、NTTデータで開発中のOpenFlowコントローラーに加えて、アリスタネットワークス、エクストリーム ネットワークス、日本電気、ブロケードの4社のOpenFlowスイッチ(アリスタネットワークス、エクストリーム ネットワークス、ブロケードは開発中のプロトタイプ)、および、シトリックスの仮想化ソフトウェアであるXenServer 5.6 Service Pack 2を使用して、検証環境を当社本社ビル内のクラウドデータセンター検証設備上に構築しました(図)。そして、NTTデータで開発中のOpenFlowコントローラーから各社のOpenFlowスイッチおよびXenServer®のOpenFlow対応仮想スイッチを制御し、以下の確認をしました。(詳細は別紙をご参照ください。)

1.マルチテナント環境での仮想ネットワークの自動構築

1つの物理ネットワーク上に、複数の構成の異なるネットワークを、従来のVLANを使わずに、OpenFlowコントローラーからの指示のみで仮想的に構築できることを確認しました。これにより、従来のようにVLANのIDを管理する必要がなくなるだけでなく、それぞれのネットワーク機器に、ベンダーごとに異なる方法で設定を行う必要もなくなります。また、これまでは、ネットワークを仮想化して集約する場合には、物理構成にあわせてネットワーク構成を修正する必要がありましたが、OpenFlowを利用することで構成の異なるネットワークを仮想化することが可能となるため、既存のネットワーク構成を変更することなく、クラウド環境上に移行することが可能となります。

2.仮想サーバーのライブマイグレーション時の自動経路変更

XenServerのライブマイグレーション技術であるXenMotionを行い、任意の仮想サーバー(VM:Virtual Machine)を別の物理サーバーにサービスを継続しながら移動した場合に、仮想サーバーの移動に合わせて、ネットワーク経路が自動的に切り替わることを確認しました。これにより、あらかじめ移動先に接続されているネットワーク機器のVLANなどの設定を変更することなく、柔軟に仮想サーバーを移動させることが可能となります。

3.ネットワーク機器保守時の自動迂回制御

ファームウェアのアップデート時など、特定のOpenFlowスイッチをネットワークから切り離したい場合などを想定し、特定のOpenFlowスイッチを迂回させるようにOpenFlowコントローラーから経路を制御できることを確認しました。これにより、ユーザーの通信を止めることなく、ネットワーク機器の保守作業を行うことが可能となります。

【図】

図:検証環境のシステム構成

検証実験の結果について

今回の検証により、OpenFlowによる集中制御型ネットワークアーキテクチャが、マルチベンダー環境で正常に動作することを確認できました。さらに、OpenFlowがサーバーの仮想化技術と連携して動作することを確認できたことで、サーバーとネットワークの仮想化環境の統合運用管理が可能となり、OpenFlowが今後のクラウドの基盤として十分に活用できることを確認いたしました。これにより、ユーザーは、OpenFlowに対応したネットワーク機器であれば、特定のベンダーに縛られず、最適なネットワーク機器を組み合わせてクラウド環境を構築し、サーバーだけでなく、ネットワークも含めた運用の自動化を実現することができます。

今回の検証内容については、10月12日~14日に東京ビッグサイトにて開催される「ITpro EXPO 2011」および10月26日~28日に幕張メッセにて開催される「第2回クラウドコンピューティングEXPO 【秋】」にてデモンストレーションを実施する予定です。

今後について

NTTデータは、今後も、他ベンダー製品も含めて接続性検証を実施していく予定です。また、OpenFlowコントローラーの開発を進め、オープンソース統合運用管理ソフトウェア「Hinemos」が持つシステム運用管理機能と合わせて利用できる「Hinemos OpenFlowオプション(仮称)」として2012年4月の販売開始を予定しています。同時に、OpenFlowを活用した、ネットワーク仮想化および運用自動化を実現するデータセンターネットワークの構築・運用サービスの提供開始を予定しており、運用コスト50%削減を目指します。

「Hinemos OpenFlowオプション(仮称)」については、2011年11月18日に東京ミッドタウンでの開催を予定している「Hinemos World 2011」においてもデモンストレーションを予定しています。

なお、今回の検証実験にご協力いただいた各社よりエンドースメントをいただいています(会社名50音順)。

アリスタネットワークスジャパン合同会社からのエンドースメント

大規模化するデータセンター内のネットワークにおいて、その管理、運用をいかにシンプルにするかが、大きな課題となっています。OpenFlowはその課題を解決するための一つの重要なテクノロジーとして注目されており、データセンター向けスイッチをご提供するアリスタネットワークスとしては、今回の検証実験でその有用性を確認するためのお手伝いができたことを嬉しく思っております。私どもは、今後もNTTデータ様との連携を密に保ち、クラウドインフラ構築に最適なソリューションをご提供していきます。

アリスタネットワークスジャパン合同会社
テクニカルセールスマネージャ
兵頭 弘一

エクストリーム ネットワークス株式会社からのエンドースメント

これからのデータセンター環境では、モビリティとクラウドの成長に伴い、オープンなテクノロジーを用いてシンプルにネットワークを構築することが重要となります。OpenFlowはSDN(Software Defined Networking)と呼ばれるブレイクスルーテクノロジーであり、より効果的な構築や運用管理が可能になります。エクストリーム ネットワークスは、OpenFlowをマルチベンダー環境での運用管理をシンプルにコストダウンするテクノロジーと位置づけており、NTTデータ様のオープンネットワークに対する先進的な姿勢のもと行われる今回の検証実験に参加させて頂いたことに感謝申し上げるとともに、今後もNTTデータ様と連携しOpenFlowの普及を推進してまいります。

エクストリーム ネットワークス 米国本社
バイスプレジデント テクノロジー
シェザート・マーチャント

シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社からのエンドースメント

シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社は、株式会社NTTデータ様が、次世代ネットワーク技術であるOpenFlowとCitrix® XenServerを活用した、クラウド環境の構築および検証に成功されたことを大変嬉しく存じます。シトリックスのサーバー仮想化ソリューションであるXenServerは、OpenFlowに対応した仮想スイッチを搭載し、ネットワークも含めたクラウドシステム全体の運用自動化を支援します。シトリックスは今後もNTTデータ様とともに、ビジネスの変化や拡大に柔軟かつ素早く対応できるオープンなクラウドソリューションを推進してまいります。

シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社
代表取締役社長
マイケル キング

日本電気株式会社からのエンドースメント

NECはこのたびのOpenFlowを活用したクラウド環境構築の検証実験の成功を歓迎します。弊社の「UNIVERGE PFシリーズ(2011年4月発売開始済み)」をNTTデータ様に評価していただいたことでOpenFlow市場の普及が更に加速すると期待しております。NECは「UNIVERGE PFシリーズ」を継続強化し、より多くのミッションクリティカルなシステムやクラウドコンピューティングの課題に対して、付加価値および信頼性の高いソリューションを提供してまいります。

日本電気株式会社
企業ソリューション事業本部
UNIVERGEサポートセンター 事業主幹
渡辺 裕之

ブロケード コミュニケーションズ システムズ株式会社からのエンドースメント

ブロケードは、この度のNTTデータ社による「次世代ネットワーク技術『OpenFlow』を活用したクラウド構築の検証実験」の主旨に賛同し、機材および人的リソースの提供で協力いたしました。この検証実験の成功は、OpenFlowがクラウド環境のネットワークを柔軟かつダイナミックに配備し、運用の自動化と保守性の向上を可能にする技術であることを実証しました。ブロケードは、OpenFlow技術をクラウドサービスのためのネットワーク仮想化を支援する技術のひとつと位置付け、引き続き開発を推進していきます。

ブロケード コミュニケーションズ システムズ株式会社
代表取締役社長
青葉 雅和

注釈

  • 「Hinemos」は日本国内における株式会社NTTデータの登録商標です。
  • その他の商品名、会社名、団体名は、各社の商標または登録商標です。

本件に関するお問い合わせ先

報道関係のお問い合わせ先

株式会社NTTデータ
広報部
高橋
TEL:03-5546-8051

製品・サービスに関するお問い合わせ先

OpenFlowへの取り組み

株式会社NTTデータ
技術開発本部
ITアーキテクチャソリューションセンタ
磯部、永園
TEL:050-5546-2301

Hinemosについて

株式会社NTTデータ
基盤システム事業本部
システム基盤サービスビジネスユニット
加納、谷越
TEL:050-5546-2496

OpenFlowを活用したデータセンターネットワークの構築・運用サービスについて

株式会社NTTデータ
ビジネスソリューション事業本部
ネットワークソリューションビジネスユニット
馬場、与那原(よなはら)
TEL:050-5546-8787