複数の医療機関を支援する遠隔ICUシステム「Tele-ICU」を構築 ~医療の質の向上および医師の働き方改革に向けた取り組みを推進~

ニュースリリース/NTTデータ

2020年7月30日

公立大学法人横浜市立大学
株式会社NTTデータ

公立大学法人横浜市立大学(以下:横浜市立大学)と株式会社NTTデータ(以下:NTTデータ)は、遠隔ICUシステム「Tele-ICU」(読み:テレ アイシーユー)を構築し、2020年10月より運用を開始します。

本システムは、集中治療専門医が常駐する支援センターと複数の医療機関のICUをネットワークで接続し、患者のバイタル情報やリアルタイム映像、電子カルテ情報を共有することで、遠隔での診療を支援するものです。横浜市立大学附属病院に支援センターを設置し、3つの連携先施設等(計40床)を対象に遠隔による診療支援を行います。

本システムにより、支援センターの専門医がリアルタイムで患者情報をモニタリングし、連携先施設の担当医と治療方針の相談を行えるため、医療の質の向上、医師の負担軽減が期待できます。システムの構築に当たっては、地域の医療提供体制の充実に貢献するという観点から、厚生労働省や横浜市医療局の支援注1を受けています。また、COVID-19対応においても、人との接触機会削減、専門医不足のカバーなどの効果が見込まれています。

今後、9月末までは模擬患者による連携先施設からの患者情報の共有や、支援センターからの円滑な診療支援の方法などの運用について検証します。そして、2020年10月から連携先施設の実患者に対して平日日中帯の診療支援を順次開始します。さらに、横浜市立大学とNTTデータは連携先施設拡大と機能拡充を行い、集中治療におけるさらなる医療の質の向上、医師の働き方改革に向けた取り組みを推進していきます。

背景

現在、日本全国のICU等は約17,000床注2ありますが、集中治療専門医は約1,850名で、専門医が十分でない医療機関では、外科・内科系医師が重症患者に対応しながら成り立っている状況です。重症患者の治療は昼夜を問わない手厚い医療体制が必要であり、医師の長時間勤務や精神的負担の一因となっています。

こうした状況を受け、横浜市立大学は、遠隔ICUシステム「Tele-ICU」を構築し、支援センターに常駐する集中治療専門医と、ネットワークを介して連携先施設の医療従事者がリアルタイムにコミュニケーションを取れる構想を立案し、NTTデータがシステム構築を行っています。

概要および特長

遠隔ICUシステム「Tele-ICU」は支援センターと連携先施設間をネットワークでつなぎ、映像を含めた患者情報の共有、Web会議が行えるシステムです。

図1:遠隔ICUシステム「Tele-ICU」の支援センター

図1:遠隔ICUシステム「Tele-ICU」の支援センター

本システムは、同意が得られた患者の情報に対して、以下を支援センター側に提供します。

  1. (1)患者のバイタル情報(体温、心拍、血圧、酸素飽和度等)や検査結果などのデータ
  2. (2)上記(1)のデータから3分おきに算出する「重症度スコア」注3
  3. (3)連携先施設の電子カルテ情報
  4. (4)患者のリアルタイムの映像情報

本システムは統合管理画面で全連携先施設の同意済みの患者情報を参照でき、病院別管理画面では連携先施設ごとの患者一覧から、電子カルテや医療画像(PACS)など各種部門システムを参照することができます。

図2:Tele-ICUシステムの管理画面イメージ

図2:Tele-ICUシステムの管理画面イメージ

図2:Tele-ICUシステムの管理画面イメージ

連携先施設の担当医は、支援センターの集中治療専門医から、リアルタイムに助言を受けることで、治療やケアの質向上を図ります。また、データ連携に加え電子カルテなど連携先施設のシステム画面を共有する仕組みを併用することで、連携先施設から出力するデータの種類を抑え、システム導入期間とコストの低減を図っています。

診療支援の対象病床について

支援センターは横浜市立大学附属病院に設置し、集中治療専門医、看護師がそれぞれ1名常駐します。「Tele-ICU」による診療支援の対象となる連携先施設等の病床は以下のとおりです。

連携先施設等横浜市立大学附属病院ICU8床、HCU8床
横浜市立大学附属市民総合医療センターGICU8床、HCU10床
横浜市立脳卒中・神経脊椎センターHCU6床

図3:Tele-ICUシステムの運用イメージ

図3:Tele-ICUシステムの運用イメージ

期待される主な効果

支援センタースタッフの診療支援等による医療の質の向上、労務効率の改善やタスクシフト・タスクシェア等による働き方改革の推進が図られることが期待されています。

また、COVID-19のような新興感染症が発生した場合に、感染リスクがある患者を遠隔で観察することが可能となり、医療従事者の感染リスクの防止や感染防護着等の消費削減などにつながることが見込まれています。

今後について

横浜市立大学とNTTデータは2020年9月末まで模擬患者による検証を行い、2020年10月から実患者に対して平日日中帯の支援開始を予定しています。また、今後は少ない人員で稼働している夜間休日の負担軽減への活用も期待されています。さらに、集中治療領域において蓄積されるデータの利活用を進めることで、医学研究の発展に寄与することを目指します。

注釈

  • 注1本事業は厚生労働省や横浜市のTele-ICU体制整備促進事業の補助を受けて行われたものです。
  • 注2特定集中治療室管理料(5,211床)、救命救急入院料(6,411床)、ハイケアユニット入院医療管理料(5,412床)を算定している病床の合計であり、平成30年7月1日時点(「中医協総-2-1 元.9.11」)のものです。
  • 注3重症度スコアとは病態の重症度を客観的に評価するための指標で、12個の生理学的変数、年齢、および基礎疾患に基づき、0~71の範囲で点数を算出するAPACHEⅡや、重要臓器の障害程度を点数評価するSOFAなどがあります。
  • 注4図2の医療画像素材のクレジットは「写真:PantherMedia/イメージマート」です。
  • その他の商品名、会社名、団体名は、各社の商標または登録商標です。

本件に関するお問い合わせ先

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