旭化成の機能材料事業におけるグローバル基幹システム刷新と業務標準化を実現

~ASEAN地域において全面稼働開始、グローバル全拠点へ順次展開へ~

報道発表

2025年1月17日

株式会社NTTデータ

株式会社NTTデータ(以下:NTTデータ)は、旭化成株式会社(以下:旭化成)がグローバル展開する機能材料事業注1の基幹システムをSAP S/4HANA®を中心としたシステム群へ刷新し、2025年1月よりシンガポール拠点での本格稼働を開始しました。
2023年10月に稼働開始したタイ拠点と合わせ、機能材料事業のASEAN地域における全面稼働となります。本プロジェクトでは、「Fit to Standard」方針に基づき業務/レポーティング/コードの標準化を行うことで、タイ・シンガポール拠点における業務の平均90%標準化を実現しています。また、アドオン開発を従来の約半分に抑えるとともに、タイ拠点は9カ月、シンガポール拠点12カ月の短期間で導入しています。
旭化成の国外9拠点がそれぞれ独自に構築・運用していた基幹システムを本基盤に順次展開していくもので、今後欧米拠点を中心にさらなるグローバル拠点への展開を検討しています。今後もNTTデータは、旭化成の未来志向の経営マネジメントを実現するDXパートナーとして事業貢献していくとともに、製造業を中心とした多岐にわたる業種でSAPビジネスの拡大に取り組みます。

背景

旭化成は、多様な樹脂製品を扱う機能材料事業をグローバルに展開しており、各拠点は独自に構築した基幹システムを運用していました。また、2021年に本格稼働を開始したデジタル経営基盤注2等により、グローバル製品別連結損益の可視化やフォーキャストデータの集約など、グローバル横断のマネジメント業務は標準化されたものの、依然、現場のオペレーションを中心に各国独自の業務プロセスが残存するなど、業務面・コスト面において非効率な状況でした。2027年にSAP ERPのメインストリーム保守終了が迫る中、グローバル業務標準化・効率化の観点で基幹システムの刷新が急務でした。
NTTデータは、グローバルでの大規模で複雑なSAPプロジェクトに対応する実績やノウハウを有しており、上記の課題に対し、機能材料事業のグローバル基幹システム刷新を目的としたプロジェクト(i3プロジェクト)を立ち上げました。なお、NTTデータはIDC社が2024年に発行した調査レポート注3において、国内ベンダーで唯一、アジア・パシフィック地域(APAC)における「Leaders」ポジションを獲得しています。

概要

NTTデータは、グローバルでのコンサルティング・SAPシステム導入支援のノウハウを有するグループ会社の株式会社クニエとともに、2021年から旭化成の機能材料事業におけるグローバルテンプレートの構築を行い、2024年10月に導入・ハイパーケアサポート期間を終え、2025年1月よりシンガポール拠点で本番稼働・保守運用を開始しました。2023年10月に実施したタイ拠点での稼働と合わせて、ASEAN地域における機能材料事業での全面稼働となります。
今回のグローバル基幹システムの刷新にあたっては、旭化成が立てた以下の3つの方針に従って構築をしています。

  1. 業務/レポーティング/コードの標準化注4
  2. アドオン開発の削減
  3. 計画系業務プロセスとの融合

また、上記方針を徹底するため、日本本社と国外拠点それぞれで当社グループメンバーがOneチームとなり支援を行い、円滑なマネジメントとガバナンスを実現しました。

グローバル基幹システム構築における主なポイント

(1)業務/レポーティング/コードの標準化

各拠点で異なっていた、業務プロセスや経営判断の情報を統一するには、業務そのもの以外にも、業務の経過や結果を報告するレポーティング、さらには各国横串でのデータ分析に向けたコードの標準化が必要です。
以下2点を考慮して整備したグローバル基幹システムに対して、業務をシステムに合わせる「Fit to Standard」を基本方針として推進した結果、タイとシンガポールの両拠点における平均業務標準化率は約90%に達しています。また、エクセルを中心としたマニュアル業務の多くを、SAP S/4HANA、SAP BW/4HANA®を利用した業務へと切り替えています。

1.拠点間での業務/レポーティングの標準化

SAP S/4HANAの主要モジュール(SD,MM,PP,FI,CO,QM)におけるNTTデータのSAPベストプラクティスを基に、旭化成独自のグローバル標準化要件・レポーティング要件を加え、SAP S/4HANA、SAP BW/4HANAテンプレートとして構築しました。

2.コードの標準化

コードの標準化においては、NTTデータが導入済みの経営管理基盤で設計したグローバルコードを参考に、本プロジェクトにおけるコード標準化ポリシーを定め、展開を図っています。

(2)アドオン開発の削減

現行の基幹システムは、導入後20年以上経過している拠点も存在するなど、多くのアドオンが残存し業務が複雑化・ブラックボックス化していました。そのため、本プロジェクトにおいては、各国法要件・商習慣など業務上必要なもの以外は、極力テンプレートに合わせる前提でプロジェクトを進めることで、アドオンは従来の約半分に削減しています。アドオンの削減により保守性の向上やシステムバージョンアップが容易となるため、将来の維持費用も含めたコスト削減に寄与することが期待されます。

(3)計画系業務プロセスとの融合

本基盤においては、すでに運用を開始していた経営管理基盤・サプライチェーン管理基盤(いずれもAnaplan)、顧客管理基盤(Salesforce)と、SAP S/4HANA、SAP BW/4HANAを連携することで、実行系と計画系業務プロセスを融合したシームレスな運用の実現をめざしました。
具体的には、Anaplanで管理するセールスフォーキャストデータをSAP S/4HANAに取り込むことで、シームレスなMRP注5の実行を可能とし、製販一体となった生産計画の立案を実現しました。加えて、Salesforceで管理する顧客・用途別の契約情報をSAPに取り込むことで、価格マスタの更新の自動化と受注計上プロセスの効率化を可能にしました。さらに、在庫情報や販売実績情報などの実績系のデータはSAP S/4HANAからAnaplanへ連携するなど、計画系と実行系プロセスの融合を図り、本基盤を用いることで機能材料事業全体のデータドリブン経営の高度化に寄与しています。

図:プロジェクトの全体像と本基盤の機能配置イメージ

図:プロジェクトの全体像と本基盤の機能配置イメージ

サプライチェーン領域を中心とした業務拡張について

現在、本プロジェクトと並行して進めているサプライチェーン改革プロジェクトでは、Anaplanを活用した需要の変動を捉えた迅速かつ精度の高い所要量計算と、生産業務へのシームレスなフィードバックをめざしています。全拠点のPSI情報注6の連動・サプライチェーン全体の在庫の可視化と、理論安全在庫の適用による在庫最適化を進めており、すでに一部の事業においてはPSI情報が一元的に可視化されています。
将来的には本テンプレートを拡張し、SAP S/4HANA、SAP BW/4HANAと連動させることで、サプライチェーン領域における業務高度化を実現していきます。

今後について

NTTデータは、旭化成のさらなるデジタル技術の応用とデータ活用を支援し、未来志向の経営マネジメントを実現するDXパートナーとして事業貢献していきます。また、製造業を中心とした多岐にわたる業種でSAP、Anaplan、Salesforceなどを組み合わせるようなエンタープライズアプリケーションサービスの提供と、DXに関するサービスのさらなる拡充と価値創出を積極的に進めていきます。

注釈

  • 注1 機能材料事業とは、旭化成のエンジニアリングプラスチックと呼ばれる機能性樹脂を中心とした製品群により構成される事業領域を指します。高耐熱性・高強度・難燃性などの高い機能を持つ樹脂製品を、自動車・電気電子部品・OA・太陽電池などのさまざまな用途に供給しています。
  • 注2 2021年9月30日プレスリリース「旭化成の機能材料事業におけるデジタル経営基盤を構築、国内外10拠点の経営情報を一元化」の通りNTTデータにて旭化成 機能材料事業における経営管理基盤の導入を行いました。
  • 注3 「IDC MarketScape:Asia/Pacific SAP Implementation Services 2024 Vendor Assessment」において、NTTデータは国内ベンダーで唯一の「Leaders」ポジションを獲得しました。
  • 注4 コードの標準化とは、マスタデータなどコード定義・体系をグローバルで統一していくことを指します。
  • 注5 MRPとは「Material Requirements Planning System」の略語で、「資材所要量計画」のことを指します。
  • 注6 PSI情報とは「生産、販売、在庫」情報のことを指します。PSIとは「Production、Sales、Inventory」の頭文字をとった略語。
  • SAP、SAPロゴ、記載されているすべてのSAP製品およびサービス名はドイツにあるSAP SEやその他世界各国における登録商標または商標です。
  • 文章中の商品名、会社名、団体名は、各社の商標または登録商標です。

参考

本件に関するお問い合わせ先

報道関係のお問い合わせ先

株式会社NTTデータ
広報部
田中
TEL:080-1724-5429

本案件全般に関するお問い合わせ先

株式会社NTTデータ
システムインテグレーション本部
SAP事業部
山本
E-mail:sap_marketing@hml.nttdata.co.jp

コンサルティング事業本部
コンサルティング事業部
山崎
E-mail:csaksales@kits.nttdata.co.jp

SAP S/4導入コンサルティングに関するお問い合わせ先

株式会社クニエ
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