オンデマンド交通のポテンシャル解析を実施

~北海道札幌市における最適なオンデマンド交通の導入検討に寄与~

トピックス

2024年7月9日

株式会社NTTデータ
札幌市デジタル戦略推進局

株式会社NTTデータ(以下:NTTデータ)と北海道札幌市(以下:札幌市)は、全国の自治体に先駆けて人流・車両・地域データを分析し、移動需要の可視化と予約状況に合わせて運行されるオンデマンド交通のポテンシャルを解析する取り組みを実施しました。本取り組みは、スマートフォンの位置情報、コネクティッドカーの走行データ、公共交通の利用実績データを活用しています。
今後、札幌市で運用するオンデマンド交通の導入効果を推定し、渋滞解消など公共交通を含む交通利便性・回遊性向上を目指します。さらに、持続可能な交通ネットワークを実現するために、それぞれの地域の需要に合った適切な移動サービスを設計し、地域経済の活性化につながる取り組みを実施していきます。

背景

全国の地方都市では、移動手段として自家用車の使用率が高くなっており、脱炭素や交通渋滞、免許返納等の観点からも課題となっています。また、地域の交通網を担うドライバーの不足、高齢化、公共交通網の維持、交通弱者など、移動に関する社会課題は多数存在しています。
札幌市においても同様の交通課題を抱えており、都市部のまちづくりを支え、公共交通を含む交通利便性・回遊性向上の交通施策として、新幹線の延伸に合わせ、連節車両とAIを活用したオンデマンド交通を組み合わせた新たな公共交通を含む交通ネットワークの構築を推進しています。
持続可能な交通ネットワークを構築するためには、都市全体の交通サービスを設計し、収益性を高めていく必要があります。しかし、現状では利用者の交通手段の選択基準が分からず、乗降者数の予測ができないため、適切なサービス設計を行うことが困難であることが課題となっています。
このような背景から、人流・車両・地域データの分析による都市内の移動需要の把握が最適な交通手段や乗降者数の予測を可能とし、地域交通の最適なサービス設計の実現と、それによる持続可能な交通ネットワークの構築につながると考え、本取り組みを実施しました。

実施概要

オンデマンド交通に焦点を当て、以下の2項目に対して実証実験を実施しました。なお、2024年2月から2024年6月の期間で実施しています。

1.オンデマンド交通の導入効果の推定

郊外の地域における移動傾向を分析するためにコネクティッドカーデータ、スマートフォンの位置情報から人流集積点の可視化や、公共交通の乗降者数などの利用実績データから公共交通を利用した出発地、目的地間の移動を可視化し、地域内の移動手段や移動量、移動区間の推定を実施しました。また、路線バスの廃線、オンデマンド交通の導入による地域住民の影響を分析するために、導入前後の移動需要の変化、オンデマンド交通の導入効果を推定しました。
これにより、オンデマンド交通の乗車数に影響を与える要因を以下のように推定しました。

  • 乗降車する場所と居住地の距離が近いこと
  • 日常の移動手段が車中心の地域であること
  • 目的地までの距離が一定距離内であること

この結果により、他の地域においてオンデマンド交通の導入を検討する際に、乗降車場所の検討や利用者数の概算検討につなげることができるようになりました。

2.都市部へのオンデマンド交通導入のポテンシャル試算

車だけでなく、電車やバスなどの公共交通も移動手段として利用される都市部地域に対しても、移動特性の分析を実施しました。移動手段ごとの移動総数や地点ごとのネットワーク上での重要度を分析し、車で移動していると推定される区間や時間を可視化することで、周辺の商業施設の規模や利用者数からオンデマンド交通の導入ポテンシャルを試算しました。
この結果により、公共交通を含む交通利便性・回遊性向上の交通施策として効果が期待できるオンデマンド交通の需要推定につなげることができるようになりました。

今後について

公共交通の利用促進およびニーズにあった公共交通を提供するためには、利用者がより使いやすい交通ネットワークを設計する必要があります。NTTデータは都市内での移動データを活用し、利用者の交通行動をモデル化、およびデジタルツインモデルによるシミュレーションを行うことで、利用者の移動需要に応じた新交通(オンデマンド交通等)のサービス設計の実現を目指します。また、利便性と収益性の向上を図り、渋滞解消や温室効果ガス削減などサステナビリティ向上に貢献するサービス提供を実施していきます。

注釈

  • 文章中の商品名、会社名、団体名は、各社の商標または登録商標です。

本件に関するお問い合わせ先

株式会社NTTデータ
第一インダストリー統括事業本部
自動車事業部
平井、寺田、勝又
E-mail:datautil_poc@hml.nttdata.co.jp