「バチカン図書館×Web3支援プロジェクト」のグローバル展開について

~寄付活動によるNFT配布がもたらすオンラインコミュニティー形成の有用性を確認~

トピックス

2024年7月26日

株式会社NTTデータ

株式会社NTTデータ(以下:NTTデータ)は、バチカン教皇庁図書館(以下:バチカン図書館)とともに実施した「バチカン図書館×Web3(ブロックチェーン技術による分散型インターネット)支援プロジェクト」を踏まえ、2024年度よりWeb3コミュニティープラットフォーム(以下:本プラットフォーム)に金銭の寄付活動を加えた上で、グローバルに向けて展開を進めます。
Web3技術によって、希少なコンテンツを有する文化機関であるバチカン図書館と、その支援者の新たなコミュニティーを形成するプロジェクトは、バチカン図書館とNTTデータイタリアの契約をNTTデータが支援する形で6月17日から7月16日の期間で実証実験(以下:本実証実験)を行いました。本実証実験ではオンライン上でバチカン図書館への支援者を募集し、その支援活動(SNSシェアによる認知拡大・金銭の寄付)に対する返礼品をNFT・ブロックチェーン技術を用いて提供する仕組みを公開しました。本実証実験のなかで、新たなコミュニティー形成におけるデジタルコンテンツとNFTを組み合わせた文化活動支援の有用性が確認できました。今後は本実証実験の結果を踏まえ、バチカン図書館をはじめとする世界各地のお客さまと協力し、貴重な文化遺産の保全に貢献するとともに、各国各機関とその支援者との新たなコミュニティー構築に貢献していきます。

背景

NTTデータはこれまで、デジタルアーカイブソリューション「AMLAD®(アムラッド)」注1を活用し、バチカン図書館、ASEAN事務局および各国の文化機関、高野山大学等、希少な価値ある文化遺産を数多く保有する公共機関や企業の2Dおよび3Dデータのデジタルアーカイブ事業を支援してきました。
バチカン図書館とは2014年から、バチカン図書館が保有する貴重な手書き文献の長期保存・公開を目的とするデジタルアーカイブ事業「DigiVatLib(デジバットリブ)」注2に取り組んでいます。また、2023年2月中旬から3月末にかけて、バチカン図書館と協力し、日本でNFTを用いた実証実験(以下:日本国内での実証実験)を実施しました。注3

デジタルアーカイブは、コンテンツの保存を目的として構築されるものの、それらのコンテンツの活用は十分に進んでいないという課題がありました。NTTデータはこの課題に対しこれまでもデジタルコンテンツとXR技術(クロスリアリティ-:現実世界とデジタルな仮想世界を融合させる技術(AR/VR/MR)の総称)とを組み合わせた新たな鑑賞体験の提供などの取り組みを行ってきました。本実証実験では、これまでの取り組みに支援方法として金銭の寄付活動を追加し、価値あるデジタルコンテンツを所蔵する機関とその支援者を直接的支援の形でデジタル技術を用いてつなげることを目指しました。
日本国内での実証実験の結果として技術面・運用面での実現性、および集客等の事業性が確認できたため、2024年度よりWeb3コミュニティープラットフォームにさらなる改良を加えて本格開発を進め、日本国内だけでなくグローバルでも展開を進めることとし、バチカン図書館とNTTデータイタリアで本実証実験を行いました。

「バチカン図書館×Web3支援プロジェクト」におけるイタリアでの実証実験の概要

Web3技術によって、希少なコンテンツを有する文化機関であるバチカン図書館と、その支援者の新たなコミュニティーを形成するプロジェクトです。NTTデータイタリアとバチカン図書館の契約に対してNTTデータが開発委託の形で支援し実現しました。本実証実験では、日本国内での実証実験の内容に、支援方法として金銭の寄付活動および閲覧できるコンテンツを追加し、支援者をイタリアに居住している人を対象に実施しました。
支援者はWebサイト上から支援の申し込みを行い、2つの支援活動(実証実験の情報をSNSでシェアすることによる認知拡大・バチカン図書館への金銭の寄付)を行うことで支援内容に対応したバチカン図書館への支援を証明するNFTを得ることができます。注3
「SNSでのシェアによる支援活動」の場合、「Silver NFT」が配布されWebサイト上でバチカン図書館が保有する15点の文化遺産の高精細画像および本プロジェクトのために作成された文化遺産の解説文を閲覧することができます。また、「金銭の寄付による支援活動」を実施した場合、「Gold NFT」が配布され前述した15点の文化遺産の高精細画像に加えて、6点の文化遺産の高精細画像を閲覧することができます。

実証実験の結果

本実証実験では、支援活動を行った証明としてNFTを発行し、その返礼としてデジタルコンテンツを提供するというWeb3コミュニティープラットフォームの技術面・運用面での実現性を検証しました。
実証実験の詳細は以下の通りです。

表:実証実験の結果

実施期間 2024年6月17日~7月16日
対象 イタリア居住者
方法 SNS投稿による認知拡大および寄付を支援活動とする。
検証項目 Web3コミュニティープラットフォームの技術面・運用面での実現性および事業性
得られた成果
  • 本プラットフォームの構築、および運用、体制に関して、技術面・運用面での実現性を検証
  • 1人あたりの寄付金額、1カ月での寄付総額
今後の課題
  • 本サービスの登録手順や必要となるウォレット注4の作成におけるユーザビリティ改善
  • Web3/NFT技術の特性を生かしたコミュニティー拡大の取り組みの推進

今後について

NTTデータは、今回の実証実験の結果を踏まえ、デジタルアセットを活用したマネタイズの仕組みとコミュニティー形成の拡大方法について検討し、Web3技術を用いたサービスの改良、および本格開発を進めます。
美術館・博物館・図書館といった文化・芸術分野においてWeb3コミュニティープラットフォームをグローバル展開し、さらに将来的には官公庁・自治体・教育・エンタメなど、他領域への展開も目指しています。また、支援者への返礼品については、文化機関が保有するデジタルアセットとしてのデータをより活用できる方法として、2DデータのみでなくARやXR空間での3Dデータ展示といった、新たな方法でのデジタルコンテンツの見せ方を検討していきます。

今後もバチカン図書館をはじめとする世界各地のお客さまと協力し、貴重な文化遺産の保全に貢献するとともに、各国各機関とその支援者の皆さまの新たなコミュニティー構築に貢献していきます。

注釈

  • 注1 「AMLAD」https://amlad.jp/
  • 注2 「DigiVatLib」https://digi.vatlib.it/
  • 注3 本実証実験のブロックチェーン基盤にはNTTデータが提供するBlockTrace®を活用しています。
  • 注4 ウォレットとは、暗号資産やNFT等のトークンを所有・管理するための“電子財布”です。
  • 「AMLAD」「BlockTrace」は日本国内における株式会社NTTデータの登録商標です。

NTT DATA Foresight Day 2024における来場者限定NFT配布

「バチカン図書館×Web3支援プロジェクト」の周知と来場者のNFTに対する関心の調査を目的として、2024年1月26日に開催されたNTT DATA Foresight Dayを通じて来場者限定NFTの配布を実施しました。
会場にて参加登録用のQRを配布し、後日「NFT取得サイト」のリンクをメールにて送付しました。後日NFT取得サイトにてメールアドレス登録および所有するウォレット接続(MetaMask)を行う事でNTT DATA Foresight Day 2024への参加を証明するNFTを獲得することが出来ます。当NFTを所有することにより、「NFT取得サイト」から来場者限定でバチカン図書館が保有する文化遺産15点の特別なコンテンツである高精細画像と、本プロジェクトのために作成されたそれらの文化遺産の解説文を閲覧できるという仕組みを構築しました。
結果として、約1,000人の来場者に対して126件の限定NFT発行が確認できました。この結果を踏まえてWeb3技術の訴求方法についても、コミュニティー形成の拡大のため検討していきます。

本件に関するお問い合わせ先

株式会社NTTデータ
社会基盤ソリューション事業本部
ソーシャルイノベーション事業部
川嶌、中川、神野、金子
TEL:050-5545-8933