臨床試験の効率化システムをSCCREと共同研究を開始

ニュースリリース/NTTデータ

2004年5月27日

特定非営利活動法人 臨床研究・教育支援センター
株式会社NTTデータ

 大阪大学発のNPO法人「臨床研究・教育支援センター(The Supporting Center for Clinical Research and Education:SCCRE*1/エスキュール)」(所在地:大阪府茨木市、代表理事:山西弘一)と(株)NTTデータ(本社:東京都江東区、代表取締役社長:浜口友一)は、臨床試験*2を効率化するシステムを共同で研究・開発していくことで合意しました。


【共同研究開発の目的と実施内容】
 現在、日本の臨床試験では、欧米に比べて3〜18倍ほどの時間*3と約2倍のコスト*4を要しています。その原因としては、1998年から施行された新GCP基準を満たす人的・物的体制やデータ取得に対して、未だ抜本的な対策が行き届いておらず、その結果、日本の臨床試験は「遅い」「質が悪い」「費用も高い」と指摘されています。また、試験対象についても高血圧など販売マーケットが大きい薬剤に製薬業界の開発は集中し、希少難治性の疾患対象薬など高い公益性と緊急性を有する薬剤開発や適用の拡大を対象とした取り組みは十分とはいえません。このような問題点を解決すべく、SCCRE臨床試験推進部門では、患者の実体にあった医薬品の開発が行われるよう医師主導型の治験・臨床試験の積極的な体制整備とITの効果的利用による良質な臨床試験を迅速に実施できる基盤作りを目指しています。SCCREとNTTデータは今年度、下記の3つの内容について共同研究開発を行います(図1)。

  1. 臨床試験業務全般における効率化とデータの質の向上を実現する臨床試験支援データベースシステムの開発

  2. 複数医療機関およびデータセンター間で匿名化臨床情報管理を行うための統一的なネットワーク方式の開発

  3. 上記システムの大阪大学医学部附属病院における実証研究

 また、個人情報保護の観点から臨床情報を取り扱うにあたり、官公庁をはじめとしたシステムの開発・運用などで実績のあるNTTデータの強みを活かして、セキュリティ対策にも力を入れた医療分野での新たなネットワークシステムの構築を行っていきます。

 平成17年度以降は、大阪大学医学部附属病院を中心とした移動1時間圏内の約40医療機関(総病床数 約18,000床)が連携し、効率的かつ効果的な臨床試験を実施できる基盤作りを目指した大規模なネットワークシステム構築を行っていく予定です。

 このようにSCCREおよびNTTデータでは、医薬品開発の遅延解消とコスト削減や患者の実体にあった医薬品開発に貢献することで、良質な医薬品が適正なスピードで世の中に提供され、多くの国民が有効な薬を適切に使用できる機会が増加することを将来的な目標として、臨床試験を効率化するシステムおよびネットワークの実用化を目標に研究・開発を進めていきます。


【図】
図1.共同研究開発の目的と実施内容


*1 SCCREについて
 SCCREは、2003年10月に大阪大学医学部が中心となって設立したNPO法人です。種々の疾患の病因・病態の解明、新規治療法の開発と新しい医療システムの確立、あるいは医学知識の普及など、「日本の臨床医学」をキーワードに、現在の医療を巡る諸課題の解決を目的として、大学、地域の医療機関、企業などと連携して具体的な活動を推進していきます。
 組織は、運営本部および(1)社会人医学教育部門、(2)臨床試験推進部門、(3)生体材料保存提供部門、(4)監察病理部門、(5)医工連携研究部門、(6)バイオビジネスセンター で構成されています。

*2 臨床試験について
 臨床試験とは人を対象に「くすり」の効き目(有効性)や副作用(安全性)について調べることをいいます。その中でも、国(厚生労働省)から「くすり」として認可してもらうために行う臨床試験を治験といいます。

*3 出展
 厚生労働省「医薬品産業ビジョンの概要」【ある企業の海外と日本の治験スピード比較】

*4 出展
 2003年10月28日開催の北里大学・第4回北里-ハーバードシンポジウムの発表内容より


本件に関するお問い合わせ先
報道関係のお問い合わせ
株式会社NTTデータ
広報室 宗像
TEL:03-5546-8051

NPO法人SCCRE
事務局 浅井
TEL:072-626-2260
その他のお問い合せ
株式会社NTTデータ
ビジネスイノベーション本部
バイオサイエンスBU 濱島
TEL:03-5546-9762