スペイン医療機関にて合併症予防を目的としたスマートアラートソリューションの実証実験を開始 ~ICUにおける早期医療介入を支援~

ニュースリリース/NTTデータ

2017年1月27日

株式会社NTTデータ

株式会社NTTデータ(本社:東京都江東区、代表取締役社長:岩本 敏男、以下:NTTデータ)、およびNTTデータのスペイン子会社であるeverisグループ(本社:スペイン・マドリード、president:Fernando Francés、以下:エヴェリス)は、スペイン最大の病院であるVirgen del Rocío University Hospital in Seville(ヴィルヘン・デル・ロシオ大学病院、所在地:スペイン・セビリア、CEO:Manuel Rua Romero、以下:ヴィルヘン・デル・ロシオ大学病院)と、集中治療室(以下:ICU)向け「スマートアラートソリューション」を開発しました。

本ソリューションは、患者の合併症発症を予測し、リスクスコアや診断に必要な情報を、医師や看護師に提供するものです。重篤な合併症のリスクを発症前に予測し、情報を速やかに提供することで、医療介入の早期化を図ることを目的としています。

3者は、2017年1月30日からヴィルヘン・デル・ロシオ大学病院に本ソリューションを導入し、医師の意思決定支援の効果をPoC注1として検証します。

背景・共同研究の概要

ICUは、生命を脅かす重度の病気や外傷の患者を対象としており、合併症などを発症する前に早期医療介入することが効果的な回復につながると医学研究から報告されています。ICUの現場では、従来、高度な医療機器を用いて、常時患者のバイタルをモニタリングし合併症のリスクに備えていますが、深刻な状態に陥ることを防ぐため、より適切なタイミングで医療介入を図れるしくみが求められています。ヴィルヘン・デル・ロシオ大学病院においても、これまでの臨床経験から合併症が発症する2時間前までにリスクを知ることができれば、より詳細な診断を行ったうえでの適切な処置が可能となり、患者の回復の短期化が図れると考えていました。

そこでNTTデータとエヴェリスは、従来のモニタリングに加え、蓄積したバイタルの時系列データから患者が合併症を発症するリスクを予測し、医師に通知できるよう、ICU入院患者にとって致命的かつ頻度の高い合併症である「1.敗血症ショック」、「2.急激な血圧低下のエピソード」、「3.低酸素血症」の3症例を対象とし、同症状を発症するリスクをAI(人工知能)技術によって発症2時間前に予測するモデルを開発しました。本AI予測モデルは、MIMIC II注2という「公開ICUデータ」と、2015年10月よりヴィルヘン・デル・ロシオ大学病院にて蓄積した「30億件以上の患者のバイタルデータ」、および「検査結果、投薬等の患者に関するデータ」を基に構築しています。

本AI予測モデルをICUのオペレーションで活用するため、従来は各医療機器で収集され、医療モニターや紙で確認をしていた情報を収集・統合し、予測の実施、医師・看護師へのリスク通知まで、ひとつのシステムで一貫して運用可能となるよう、「スマートアラートソリューション」を開発しました。本ソリューションは、NTTデータのOSSビッグデータ基盤上で患者のバイタルデータを分散ストリーム処理できるしくみになっており、合併症リスクの予測をリアルタイムに行います。本システムが合併症発症を予測すると、即時にベッドサイド端末やモバイル端末に通知し、医師や看護師が確認することができます。また通知の際に、症例の診断に必要なバイタルデータを同時に提供することで、医師がその場で迅速な診断をすることを可能にします。

ヴィルヘン・デル・ロシオ大学病院 ドクター・フランシスコ・モリーリョICU長のコメント

NTTデータとエヴェリスによるソリューションのアラートはリアルタイムに、早期かつ集中的な医療介入を行うにあたっての客観的な判断情報を、患者が深刻な状態に陥るリスクが高いバイタルの重要度に基づいて提供してくれます。この情報を活用することで、医療介入プロセスを改善できると期待しています。さらに、この予測を利用することで、若い医師や看護師の育成においても非常に役立つものになると考えています。

実証実験の計画

NTTデータとエヴェリスは、2017年1月30日からヴィルヘン・デル・ロシオ大学病院にて、スマートアラートソリューションを27ベッドに導入し、PoCを実施します。各ベッドにある医療モニターや輸液ポンプ等の175デバイスに接続され、常時合併症リスクの予測と医師・看護師への通知をICUのオペレーションの中で運用し、診断支援を行います。導入後、3症例の合併症発症率をモニタリングし、導入前と比較することで、本ソリューションの効果を検証します。

今後の展開計画

NTTデータとエヴェリスは、国による生活習慣などの違いからくる患者の傾向に関わらず、本ソリューションが活用できることを検証するため、ヴィルヘン・デル・ロシオ大学病院でのPoCに続き、スペイン以外の複数国での検証を計画しており、まずはチリの病院でPoCを今春から開始します。2社はICUデータを蓄積・参照可能なICU版拡張電子カルテシステムを「ehCOS(エコス)注3 SmartICU」として2016年11月より商用化し、スペインを中心に展開をしています。2件のPoCを経て、本ソリューションをehCOS SmartICUの新機能に加え、2017年内をめどに商用化し、スペイン、南米、北米から世界各国の病院へと展開を進めていきます。

エヴェリスについて

エヴェリスは、主にスペインや中南米6カ国において大手銀行、大手保険会社、大手通信事業者、政府機関やユーティリティー企業、大手グローバル製造会社等を主要顧客とし、コンサルティング、システムインテグレーション、アウトソーシングといった幅広いITサービスを提供しています。また、エヴェリス社はスペインと南米にCMMI Level 5認証を受けた6カ所のニアショア・オフショア拠点を有しており、高品質かつ低価格なサービスを提供する体制を整えています。

注釈

  • 注1PoCとは、Proof of Conceptのことであり、新しい概念や理論、原理などが実現可能であることを示すための前向きな試行のことを指します。
  • 注2MIMIC IIとは、アメリカのBeth Israel Deaconess Medical Centerで蓄積されたデータを匿名化し、さまざまな医学研究用にオープンデータとして提供しているICU患者の診療データベースです。
  • 注3ehCOSとは、エヴェリスが提供する、質が高く安全な患者ケアのサポートを目的とした医療機関向けソリューションです。次世代医療手順にフォーカスした電子カルテシステム「ehCOS CLINIC」、患者情報管理システム「ehCOS Patient」、病院ネットワーク間での患者情報の共有を可能にする「ehCOS Clinical Share」など、7つのパッケージから構成されています。ヨーロッパやラテンアメリカにおいて、1,100以上の医療機関に採用されています。
    http://www.ehcos.com/en/products/ehcos-smarticu/(外部リンク)(英語・スペイン語・ポルトガル語のみ)
  • 文中の商品名、会社名、団体名は、各社の商標または登録商標です。

本件に関するお問い合わせ先

報道関係のお問い合わせ先

株式会社NTTデータ
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風間、三宅
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製品・サービスに関するお問い合わせ先

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技術革新統括本部
技術開発本部
エボリューショナルITセンタ
渡辺、岡田、ダリア
TEL:050-5546-9741