企業におけるAI活用の課題を解決する自動化・自律化技術を開発 ~AIを活用した分析・予測を業務プロセスに組み込み、予測の精度維持を実現~
2017年12月20日
株式会社NTTデータ
株式会社NTTデータ(以下:NTTデータ)は、企業におけるAIを活用した分析業務の自動化を実現する、分析オペレーション自動化フレームワーク「AICYCLE™」(読み:アイサイクル)を開発し、2018年1月から正式提供を開始します。
「AICYCLE」は、AIが予測を行う際の判断ロジックとなる「予測モデル」を、さまざまなビジネス関連データや、AIの予測結果・実績(予測と実績の良否)データを用いて自動的に評価・更新することにより、予測精度(予測モデルの品質)を維持する技術です。これまで、AIによる分析・予測精度を維持するために必要な予測モデルの更新は、データサイエンティストの手によって行われてきましたが、本技術によって自動化されることで、より高い頻度で人手をかけずに予測モデルを更新することが可能となります。これにより、ビジネス領域におけるAI活用が拡大していく中で課題とされている、データサイエンティスト不足や、予測モデルが周辺環境の変化に追随できないことによって生じる予測精度の低下問題の解決につながります。
なお今回、高度な品質管理を求められる三菱重工航空エンジン株式会社(以下:三菱重工航空エンジン)の航空エンジンブレード製造工程に本技術を試験導入し、不適合品の早期発見と工程改善の効果について実証実験を行いました。不適合製品の発生割合47%削減等、一定の効果を確認できたことから、実証実験結果のフィードバックを行ったのちに正式提供することとしました。
今後NTTデータは、自社で提供する各種ソリューションに対して、この「AICYCLE」を適用し、さまざまな業種・業界におけるビジネスのデジタル・トランスフォーメーションの実現に貢献していきます。
背景
昨今、さまざまな分野におけるAI活用に注目が集まっています。特にビジネス領域では、膨大なデータからビジネスに有用な特性や規則性を見出したり、過去データに基づいて将来を予測するなど、さまざまな活用方法が期待されています。しかしながら、多くの企業では、実験的なAI利用に留まり、業務プロセスに組み込み、ビジネスで継続的に活用することはできていないのが現状です。
AIによる分析・予測モデルの構築には、高度な知識を持ったデータサイエンティストが必要不可欠となります。ビジネスシーンでは予測モデルの作成時点から短期間で周辺環境が変化することも多く、当初作成した予測モデルを使い続けると、予測精度の低下(予測モデルの陳腐化)につながる問題があります。例えば、製造業における製造設備の故障検知、生産ラインにおける不適合製品の検知等のユースケースでは、日々の設備メンテナンス・改善活動が実施されることにより、生産ラインの状況が変化するため、当初構築した予測モデルのままでは徐々に検知率が下がってしまいます。また、金融業界での保険金の不正請求においても、手口は日々巧妙化するため、その新たな手口に対して、ある時点で構築した検知モデルで対応し続けることは難しく、結果として不正検知の精度は下がってしまいます。
これまで、この「予測モデルの陳腐化」を防ぐために、データサイエンティストは予測精度を犠牲にして長期間運用可能な予測モデルを構築したり、社会トレンドや法改正、ビジネスプロセス変更によって生じる変化を捉えることが可能なデータを収集し、それらデータを用いて予測モデルを更新してきました。しかしながら、データサイエンティストが社会的に不足するなか、予測モデルの更新を頻繁に行うことは非現実的であり、ビジネスにおけるAI活用が大きな課題となっていました。
そこでNTTデータは、予測結果と実績データを用いて予測モデルの精度をモニタリングし、精度低下を検知すると予測モデルを自動的に更新することで、予測精度を維持する技術を開発することとしました。
図:「AICYCLE」の全体像
AICYCLEの特長
「AICYCLE」(分析オペレーション自動化フレームワーク)は、以下の要素を特長として持つ、AIを活用した分析・予測の自動化・自律化技術です。
- 1.予測モデル構築に必要なデータの前処理(ETL)・蓄積
- 2.予測モデルの精度低下を検知・再構築することで、予測精度を維持
- 3.予測の結果、実績データに加えて、過去運用した予測モデルを保存・管理
- 4.機械学習フレームワークは、顧客の要件・インフラ制約等に合わせて選択可能
また、最新のデータを用いて予測モデルを再構築したとしても、予測精度が低く、ビジネスルールを満たすことができない場合、「AICYCLE」は予測を停止(=予測モデルの運用を停止)します。この際、過去に利用したデータや構築した予測モデル・予測結果・実績等保存・管理しているため、それらを基にデータサイエンティストが解析を行い、新たな予測モデル構築を行うことが可能となっています。
なおこの技術については、NTTデータの技術開発本部に加え、高度なデータサイエンティストを多数擁している、株式会社NTTデータ数理システムと連携して開発を行っています。
三菱重工航空エンジンとの実証実験について
NTTデータは、三菱重工航空エンジンにおける航空エンジンブレード製造工程に、「AICYCLE」を導入し、不適合品の早期発見と工程改善の実現に向けた実証実験を行いました。
実証実験における検証内容
- 品質データに基づく不適合製品の予測
- 予測された不適合製品の原因となる設備や品質異常箇所の推定
- 設備や品質異常箇所に対する推奨対策案の提示
- メンテナンス時の工場停止時間や不適合製品率の削減効果検証
実証実験で確認した効果
- 不適合製品発生割合を47%削減
- メンテナンスにかかる工場の停止時間を25%削減
- 今まで2か月かかっていた予測モデル更新の所要時間を2分に短縮
なお、三菱重工航空エンジンでは、IoTやAI活用によるSCM高度化とスマートファクトリー化の実現のため、当社と協業し、「AICYCLE」の適用拡大を検討していく予定です。
- *今回の実証実験では、「AICYCLE」のAIエンジン部分に、DataRobot社が提供する機械学習プラットフォームである「DataRobot」を採用しています。
今後について
NTTデータは、本技術を正式提供する2018年1月以降、NTTデータが提供する各種ソリューションに「AICYCLE」を適用していきます。これらのソリューションと、当社AIインテグレーションサービスを組み合わせることで、ビジネスシーンでのAI技術活用を促進し、お客さまビジネスのデジタル・トランスフォーメーションを支援していきます。
製造業向けのさらなる展開に加えて、金融や流通、マーケティング等の他領域での導入も推進していきます。これら取り組みを通じ、2020年までにAI・アナリティクス領域において、500億円規模の売り上げを目指します。
参考
DataRobotについて
実証実験のAIエンジンとして採用した「DataRobot」は、世界トップレベルのデータサイエンティストの知識、経験、ベストプラクティスを組み込んだ機械学習プラットフォームです。ユーザーは非常に正確な機械学習モデルを短期間で構築し、即座にシステムへ展開することができます。
DataRobot, Inc.について
社名:DataRobot, Inc.
所在地:One International Place, 5th floor, Boston, MA 02110
DataRobotはあらゆるスキルレベルのデータサイエンティストが、正確な予測モデルを構築し、配備するための機械学習プラットフォームを提供しています。
NTTデータの関連サイト
NTT DATA Enterprise AI ~NTTデータが考える企業におけるAI活用とは~
注釈
- DataRobot®は、日本国内におけるDataRobot, Inc.の登録商標です。
- その他の商品名、会社名、団体名は、各社の商標または登録商標です。
本件に関するお問い合わせ先
報道関係のお問い合わせ先
株式会社NTTデータ
広報部
戸田
TEL:03-5546-8051
製品に関するお問い合わせ先
株式会社NTTデータ
ビジネスソリューション事業本部
AI&IoTビジネス部ソリューションセンタ
重 彰記、野村 哲郎
TEL:050-5546-7939