杏林大学とNTTデータ、顔面神経麻痺の診察における共同研究を開始 ~AI表情認識技術による臨床経過の定量評価を実現~

サービスインフォメーション

2020年12月4日

株式会社NTTデータ

学校法人杏林学園(学園長・理事長:松田 博青、以下:「杏林大学」)と株式会社NTTデータ(本社:東京都江東区、代表取締役社長:本間 洋、以下:「NTTデータ」)は、顔面神経麻痺患者の定量的な臨床経過評価を目的に、12月4日から共同研究を開始します。

本共同研究では、NTTデータがAI表情認識技術を活用した、顔面神経麻痺の臨床経過を評価するアプリケーションを開発し、杏林大学医学部付属病院(以下:「付属病院」)の患者データを利用して、検証評価を行います。

本共同研究を通し、杏林大学とNTTデータは、顔面神経麻痺の新たな評価法の確立と、実際の診断・治療業務におけるAI活用を広めることを目指します。

背景

顔面神経麻痺を診察する際の主な手法である柳原法では、患者の表情運動を医師が視診で評価をしています。この評価法は特殊な機材が不要であるため、簡易に臨床現場で使用できる点において優れています。しかし、医師の主観的な評価に基づいているため、再現性の低さや医師による個人差が問題となっています。したがって、臨床現場では顔面神経麻痺を客観的に定量評価する手法が必要とされています。

この問題に対し現在、電気生理学的検査による手法や、患者の顔動画像を撮影し画像処理を利用した手法など、様々な客観的な評価手法が研究されています。しかし、それらの手法には特殊な機材が必要である点や、患者の複数パターンの表情運動を撮影する間、顔を固定する必要があるため、患者の負担が大きく、また顔がこわばることで表情が出にくくなるといった課題がありました。

概要

そこで、本共同研究では患者の顔を固定することなく撮影し、AI表情認識技術により動画から顔の各部位の位置を認識します。その結果を利用して左右非対称性を算出することで、顔面神経麻痺の客観的な評価の実現を目指します。
本共同研究での杏林大学とNTTデータの役割は以下です。

杏林大学

  • 「臨床経過評価アプリケーション」の検証評価に必要な診察動画の提供
  • 「臨床経過評価アプリケーション」の病院医師による、実診断業務における活用の評価

NTTデータ

  • AI表情認識技術を利用した「臨床経過評価アプリケーション」の開発
  • 付属病院で蓄積された顔面神経麻痺患者の診察動画を使用して検証評価

アプリケーションの検証評価では、算出された麻痺スコアによる定量評価に加え、付属病院の顔面神経麻痺専門の医師らによる診断での活用の観点からの評価によって、医師の診断の定量化をサポートする、「臨床経過評価アプリケーション」の開発を目指します。

NTTデータの臨床経過評価アプリケーションについて

「臨床経過評価アプリケーション」は、患者の表情を撮影した動画に対し、AI技術を利用して、顔の目や鼻などの各部位の特徴点(ランドマーク)を自動で検出します。検出したランドマークを利用して、顔の部位ごとに左右非対称性を算出することで、顔面神経麻痺を評価します。このアプリケーションの特徴は、(1)画像処理により、顔の向きを自動で正面に向くように補正することで、患者の顔を固定させずに撮影可能である、(2)一般的なRGBカメラでの撮影に対応しているため、簡易に臨床現場に導入可能であることです。

図:アプリケーションイメージ

今後について

顔面神経麻痺は脳そのものに障害がおきる中枢性顔面神経麻痺や、外傷によって顔面神経に障害がおきる末梢性顔面神経麻痺など様々な原因によって引き起こされます。そのため診断の際には、形成外科、耳鼻咽喉科、あるいは神経内科といった多方面からの観点が必要となります。

杏林大学とNTTデータは、本研究を形成外科の領域から展開し、その結果を踏まえ、形成外科、耳鼻咽喉科、神経内科の幅広い領域において顔面神経麻痺の実臨床に直結した新しい評価法の確立を目指します。

また、顔面神経麻痺以外の疾病にも、AI表情認識技術を応用した、医師の判断の定量化をサポートするアプリケーションの評価と検証を実施予定です。

今後も杏林大学とNTTデータは、医療分野においてAI導入を通したデジタル化を推進し、医療における診断をITで支援していきます。

本件に関するお問い合わせ先

製品・サービスに関するお問い合わせ先

株式会社NTTデータ
技術開発本部
ヘルスケアAIセンタ
岡田、伊藤、小山田
E-mail:healthcare-ai@kits.nttdata.co.jp

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