デジタルがもたらす変化
デジタル化の進展がもたらした創造的破壊がこれまでのビジネスルールや社会の在り方を一変させようとしています。近年注目されたUberやAirbnbなどはその最たるもので、移動や宿泊の在り方を大きく変革しました。このようなデジタルイノベーションが急速に進んでいる背景には、あらゆる事象の状態がデータとして把握され、それらをコントロールすることが容易となったことが挙げられます。デジタル化は、既存の常識やビジネスの枠組みを新たな段階へと引き上げていきます。我々の社会やビジネスは、今まさに革命的な変化の只中にあると言えるでしょう。
主導権のシフト
デジタル革命が社会にもたらすインパクトの一つは、主導権のシフトです。これまで特定の業界やユーザに閉じられていた情報、人々のノウハウや感覚など可視化できていなかった事象が、テクノロジーにより誰もが活用することが容易になりつつあります。その結果、新たなプレーヤーの参入が容易となり、従来の産業構造の中心となっていた主導権を持つ主体のシフトをも引き起こすでしょう。
例えば、プラットフォーマーに転じることで、今後数十年間にわたるモビリティサービスの在り方を変えようとしている企業があります。運転の目的は、移動、輸送、余暇など多岐にわたりますが、新たなプラットフォーマーがめざす所はそこだけに留まりません。モビリティ内部の空間を目的に応じて柔軟に変えることで、移動可能な空間を提供することが狙いです。移動可能な空間にはショッピング用の店舗、映画館、レストランなど、人々の様々なニーズが搭載できます。従来自動車産業が主導してきた人が乗り移動するためのモビリティを、このプラットフォーマーは、あらゆるサービス、産業が活用可能なモビリティスペースへと変化させようとしています。その結果、モビリティの主導権は様々な産業へシフトしていくでしょう。
新たなプラットフォームの出現は、そこを起点としたビジネスを企図するプレーヤーの参入を促します。そこで形成される新たなエコシステムは、従来の価値観や慣習を越えて、新たな主導権を生み出していきます。デジタル化の進展によって生じる主導権のシフトは、あらゆる領域で発生し、既存の業界を変革させる力を持っているのです。
デジタルとフィジカルの融合
デジタル化は、物理空間の制御権をも人にシフトさせることを可能にしました。
従来は空間や時間に縛られていたことが、XR(※2)空間という助けを借りることにより、物理的な制約を越えて行動することや意思の疎通を図ることが可能となりました。XR空間の中では、遠く離れた場所にいる人々と協働したり、物理世界では再現が難しいシーンを再生することで能力開発やシミュレーションを行ったり、新たな体験の創出や物理的な距離・空間を越えた活動ができるようになります。デジタル化はあらゆるものの主導権をシフトさせる力を持っており、それは、産業のみならず、われわれ人間の身体的限界をも超越可能にしていくでしょう。
境界なきイノベーション
デジタル化が進展する社会では、物理的・空間的制約が弱まり、様々なモノや仕組みの制御が可能になりつつあります。そして、その制御の主導権のシフトが進むことによって、既存の産業構造に敷かれている境界まで無くなってしまう可能性をも秘めています。あらゆる垣根を越え、異なる価値観や慣習が衝突し融合することで、パワーバランスもが変化していきます。これからのデジタル時代では、境界なきイノベーションがこれらの変革を主導し、新たなビジネスや社会の仕組みを絶え間なく生み出していくでしょう。
http://www.nttdata.com/jp/ja/insights/foresight/sp/index.html
VR(Virtual Reality:仮想現実)、AR(Augmented Reality:拡張現実)、MR(Mixed Reality:複合現実)などの技術の総称。