我々が顧客として利用するサービスのUIがより洗練されるにつれ、家庭で使うサービスと会社で使うシステムとの間に乖離が拡大しています。
特に、BtoCサービスのモバイルネイティブなアプリやユーザーエクスペリエンス(UX)を重視したWebサイトと、一般的な社内ITシステムの差は大きく、そのギャップは従業員体験(※1)に負の影響を与える要素に成りえます。
従業員体験とは、従業員が企業や仕事の中で得る体験を意味する言葉です。従業員体験を向上させることにより、優秀な人材の惹きつけや定着が実現できるのではないかと言われています。
従業員体験は制度設計や福利厚生など、仕事にまつわる全ての要素が関わりますが、本稿では社内ITシステムにおける従業員体験を向上させる要素を中心に紹介します。
社内ITのクラウドサービス化
モバイル対応や優れたUXを備えた社内システムを自力で構築・運用することはコスト面で難があるため、クラウドサービスを選択する企業が多くなっています。
これらのサービスは場所を選ばない利便性に加え、継続的な機能追加が行われる点やIT基盤の管理が不要になる点が従来型の社内システムと比べて優れています。
また、従来社内システムとして整備できていなかったものや、新しいサービスを安価に導入できることも強みです。
統合されたプラットフォームの必要性
クラウドサービス化を進めていくと様々な機能を持つ複数のクラウドサービスが乱立することになる上、既存の社内サービスも存在するため、エンドユーザにとってはクラウド導入意図に反し、かえって複雑化することもあります。
そのため、これら社内ITサービスが1つのプラットフォームから利用できることは優れたUXにつながります。
これは、ただ同じポータルサイトからそれぞれのサービスにアクセスできるようにするだけではありません。業務情報や認証情報をシステム間で連携したり、統一されたUIで様々な社内ITシステムにアクセスできるようにすることで、UXを向上できます。
このように、バラバラに導入された社内ITシステムを繋げるといった役割をもつクラウドサービスも出てきており、筆者が導入支援を行っているServiceNowはこのプラットフォームとしての機能が注目されています。
社内ITシステムの統合プラットフォームの一例
クラウドサービス化における課題
社内システムのクラウド化に際しては、特有の課題も生じます。
まず挙げられるのが、セキュリティの問題です。クラウドに業務情報をアップロードするにあたって、適切な管理とセキュリティを担保する仕組みを考える必要があります。
例えば、CASB製品等でクラウドサービスとの通信を制御したり、多要素認証によって不正ログインを防ぐといった仕組みも有効です。
また、様々なクラウドサービスを利用することによって各サービスの契約やコストを管理する必要もあります。
社内ITのクラウドサービス化によって、優れた従業員体験を、限られたコストで実現できます。
労働時間の管理による量的な働き方改革から、社内ITの改善による質的な働き方改革を目指してみませんか?