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2024.7.26業界トレンド/展望

イノベーションの民主化による新規事業の成功再現性向上

イノベーションの成功確率を上げるための国際規格ISO56002が2019年7月に発行して以来、不確実性への挑戦そのものとも言える新規事業開発において、成功再現性とその底上げに関する議論と実践が進みつつある。ただ、未だ決定的な取り組みはなく試行錯誤、あるいはそもそもの認知不足の段階にある。
イノベーションの起こし方や新規事業開発の進め方はどうあるべきなのだろうか。NTTデータの新規事業開発およびイノベーション人材・組織・制度設計の第一人者で、イノベーションエコシステムデザイナーを務める西村祐哉が解説する。
目次

日本企業の経営者や管理職はイノベーションの起こし方が分からず悩んでいる

日本人には、文化的特質として不確実性や曖昧さを伴う挑戦を忌避する傾向が存在します。オランダの社会心理学者ヘールト・ホフステード博士による調査で導き出されている国民文化6次元モデルでは、“不確実性の回避”と“達成と成功に関する動機づけ”が高い指標を示しており、日本人は、「失敗してはならない」という強迫観念と、「不確実性の高いことはできるだけ避ける」という特質が顕著であるとされています。

[出典:Hofstede Insights COUNTRY COMPARISON TOOLより当社にて生成]

[出典:Hofstede Insights COUNTRY COMPARISON TOOLより当社にて生成]

また、世界知的所有機関が発行するWIPO Global Innovation Index2023では、日本のグローバルイノベーティブランクは13位。アジア各国においても、シンガポール、韓国、中国に次ぐ4位です。

[出典:WIPO(世界知的所有機関)発行のGlobal Innovation Index2023より当社にて生成]

[出典:WIPO(世界知的所有機関)発行のGlobal Innovation Index2023より当社にて生成]

イノベーションは「新結合」として定義されるように、不確実性そのものへの挑戦に外ならず、イノベーション創出は残念ながら多くの日本人にとり心地よいものごととは言い難いようです。

新規事業開発のメカニズムの理解が不十分なために、新規事業開発に既存事業のロジックをそのまま適用する傾向や、新規事業開発のメカニズムの不十分な理解に起因する、既存事業や定常業務における優れたリーダーの新規事業開発への割り当てなども起こりがちです。結果、「革新的アイデアを生み出せない」「新しいコンセプトを作成できても検証に苦労する」「新規事業として上市に到達できない」などの問題が発生します。

一方で、2019年7月にイノベーションマネジメントに関するベストプラクティスとしてISO56002が発行されたように、新規事業に一定の再現性を担保し、成功可能性の底上げを図ることへの注目が高まっています。分かりやすく言えば、コンサルティング会社などに事業開発を丸投げする従来型の手法ではなく、自社で思いを持つメンバーやチームに「実践の型」を身に付けさせるとともに、組織変革をもたらすことのできる「イノベーションの起こし方」が求められているのです。

メソッドベースのアプローチによる成功再現性;イノベーションの民主化

では、イノベーションの起こし方とは、いったいどのようなものなのでしょうか。

われわれは、「イノベーションの起こし方=メソッド」と定義しています。また、メソッドに基づく新規事業開発アプローチがもたらす確実性と再現性を「イノベーションの民主化」と呼んでいます。これは、イノベーションや新規事業開発を成功させられるのは一握りの天才やエース社員に限られるという前提の打破であり、社内に点在する潜在的なイノベーターが結果を出し、成功することができる状態が促進され続けることを意味します。

では、イノベーションの民主化を実現するためには、どのようなアプローチが必要なのでしょうか。

メソッドの構成要素として、「プロセス」「ツール」「マインドセット」の3つが具備されていることが重要です。しかし、単にプロセスが定義され、ツールが存在し、マインドセットに何か作用があったとしても、それらはイノベーション創出を十分にはもたらしません。個々の要素について、もう少し具体的にご説明します。

プロセス

新規事業固有のさまざまな事象の理解に基づくシンプルで明瞭なプロセスが定義され、これらが新規事業開発をポジティブにサポートすることが重要です。

新規事業開発におけるプロセスとして、いわゆるステージゲートを想起される方も少なくないと思います。しかしこのステージゲートが不必要に重厚長大化してしまい、新規事業開発を後押しするためのプロセスがいつの間にか“イノベーション殺し”と化してしまうということもアンチパターンとして少なくないのではないでしょうか。

ツール

新規事業開発プロセスに適合したツールが、それらの利活用のための仕組みも含めて配備・実装されていることが重要です。

単にツールが定義され、上位下達で使用せよと言われても、新規事業開発スキルは向上しませんし、属人的活用や無手勝流な改造は他者への展開性や再現性において有益でありません。そのため、ツールに習熟するための教育も含めた提供体制が求められます。

マインドセット

新規事業開発者としてのマインドセットが醸成され、組織文化の形成に寄与しうることが重要です。

企業において、プロセスやツールの普及は、新規事業に限らず施策的におこなわれることが少なくありませんが、うまくいかない原因として活用に関する意味づけの不十分さが挙げられます。新規事業開発はそのすべてが成功するわけではありません。それゆえイノベーションメソッドの利活用とプロジェクト体験を通じて、イノベーティブなマインドセットを獲得・形成させることが非常に重要です。

ただし、マインドセットに関することばかりが強調されれば、単なる自己啓発セミナーになってしまいます。プロセス定義やツール活用とともに、マインドセットを醸成することが重要です。

そして、これらのすべてを自社内で完結させようとするのは現実的ではありません。適切なパートナーやコンテンツを頼るのも良いやり方です。

一例ですが、NTTデータでは、グローバルで多くの実績と成果を挙げているFORTH INNOVATION METHODに着目し、自社内の新規事業やお客さまとの共創案件などへの適用を進めています。

メソッドベースの新規事業開発を導入するための5つのヒント

新規事業開発を一握りの担当者の孤軍奮闘や出たとこ勝負の運任せによるものでなく、多くの社員に開かれたものとして民主化するうえでは、メソッドベースでの新規事業開発の推進と、そのためのメソッドの整備と導入・展開が不可欠です。

しかしこれらは導入しただけで終わりではなく、実践で得られたさまざまな気づきや成果、うまくいかなかった内容なども取り込んだブラッシュアップや、そもそもの守破離の蓄積による事業そのもの・人材、そして組織制度の変革と対になるものだと考えます。

イノベーションや新規事業開発は、個々のプロジェクトの成功や失敗のみに焦点が当たりがちです。また、携わるメンバーも、各々の成否に閉じてしまい、組織全体への知識の蓄積や還元について無頓着なことも少なくありません。新規事業開発に成功した担当者はさらなる事業発展のミッションに基づき現業部門に異動するため、新規事業部門でありながら、経験が浅く成功体験を持たないメンバーばかりが残りがちです。補充された要員もまた新規事業開発の未経験者である、そんな悪循環が起こりやすいのです。

新規事業開発におけるメソッド展開と、これを起点としたイノベーションエコシステム形成においては単独で疎結合化した個々の事業開発プロジェクトに閉じた支援や取り組みではなく、事業開発全体への包括的な支援と、これらを遂行する人材そのものの底上げが求められます。また、新規事業開発を進めるための組織や制度の変革にも取り組むことで、イノベーションエコシステム全体の強化が促進されると言えるでしょう。

最後に、イノベーションメソッドを組織に導入し、展開する上での5つのヒントを整理します。

  • 1.実績のあるメソッドを選ぶ
  • 2.明確なプロセス、実用的なツール、マインドセットの変革を重視する
  • 3.単独で遂行するのではなく、イノベーションエコシステム形成のパートナーと共創する
  • 4.過去の失敗から学ぶ
  • 5.成功再現性を蓄積する仕組み化についても取り組む

これらは、イノベーションの民主化を推進し、自社に価値あるイノベーションエコシステムの形成をもたらすでしょう。

新規事業創発支援についてはこちら
https://www.nttdata.com/jp/ja/lineup/ida-bizdev/

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