まちあるきワークショップとは
私の所属するCLEチームでは、今年6月にまちを歩きながらまちの魅力を発見する1dayワークショップ“PhotoWalk”を大丸有エリア(※1)で実施しました。
大丸有エリアを自由に歩きながら、参加者各自の心が動かされた瞬間を写真に収め、最後に写真となぜ心が動かされたのかを全員で共有します。
これにより、そのまちの魅力を参加者の主観で紐解いていくワークショップです。
大丸有エリア:大手町・丸の内・有楽町エリア
データ分析アプローチとの違い
データ分析の弱点
私はこれまでのまちづくり案件において、AIカメラやヒートマップを用いた人流分析を行い、データ分析結果をもとに課題示唆を出し、施策を検討する、といった取り組みを行ってきました。
例えば、
- 施設の前面道路の人流・滞留を測定し、周辺のイベント情報や天気、什器の設置有無との相関関係を分析することで、施設への人流・滞留を増やすための有効な施策を検討する
- 施設前の歩行者の歩行速度の分散分析を行い、施設への興味関心の度合いを図る
などの取り組みです。
AIカメラ等で測定したデータ分析結果から、明確な指標をもとに課題や施策を訴求できる一方で、このようなデータ分析の弱点も感じていました。
それは人の詳細な属性や感情は測ることが難しいということです。
AIカメラを用いた人流分析では、人数をカウントすることはできても、すべての人の属性(年齢・性別など)を正確に測ることはまだ技術的に困難な部分があります。さらに、居住地・職業・所得などの詳細な個人情報や、人の感情はAIカメラから分析することは難しいです。
そのため、イベントを実施して人流が増えたとしても、どんな年代・居住地・趣味嗜好の人が、どんなことに魅力を感じて来訪してくれたのかまでは、データからは知ることができないモヤモヤを感じていました。
まちに住む人、訪れる人のいとなみをより良いものにしていくための取り組みなのに、そういった方々の声ではなく、データ分析結果だけをみて検討していて効果や継続性があるのだろうか?
そういった疑問を抱くようになりました。
まちを主観で見る
これまではデータなど客観的な指標でまちを分析してきましたが、今回のまちあるきワークショップでは、まちの魅力を参加者の主観で紐解いていきました。
ワークショップ参加者の性別・年代は様々で、まちのポテンシャルに魅力を感じる人や、時間に追われている自分とまちを重ね合わせる人、子供の目線でまちを捉える人、過去にその場所にあったであろう建造物に想いを馳せる人など、そのまちの魅力の捉え方は人によって千差万別であることを実感しました。
実際にまちを歩いて、どんなところに心を動かされるのかを主観的に見ていくことで、データ分析からはわからなかったまちの魅力に気づくことができるのだと学びました。
まちを主観と客観で見る
まちを主観的に見ること、客観的に見ることにはそれぞれの良さがあり、両者を掛け合わせて活用していくことが重要であると考えています。
例えば、
- データ上では整備され人流が多くなっている道を、視覚障害者、高齢者の方、子連れの親、車椅子の方が通行した時にどう感じるのかを、それぞれの目線で分析する。
- ヒートマップによって人流・滞留の多いスポットを絞り込み、多様な年代・属性の人がそこを歩いてみて、どんなところに魅力を感じるのかを分析する。
などが考えられます。
現在のまちづくりにおいては、関係者との合意形成等において、人流や売り上げの増加などの定量的なデータが重視されているように感じます。
合意形成がされないとプロジェクトが前進しないため、そういった数値的根拠で関係者間の利害関係を一致させていくことが重要であることは認識しています。
しかし、最終的なゴールはまちに住む人・訪れる人のいとなみをより良くすることであるということを常に意識し、まちづくりの各フェーズ検討において彼らの声を取り入れていくことが、利用者の満足度が高い持続可能なまちを実現するために大切ではないでしょうか。
そのために、今回のまちあるきワークショップのような試みをまちの運営者が実施し、まちの魅力や課題をユーザーの主観ベースで定性的に捉えて、データと掛け合わせながら活用していくような試みが重要になってくるのではないかと考えています。
こういった取り組みに興味のあるまちの運営者の皆様、ぜひ一緒に取り組みましょう!
まちづくりコンサルティング
https://www.nttdata.com/jp/ja/lineup/city-design-consulting/
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