Food&Wellness®「500人PoC環境サービス」で扱う遺伝子データの信頼性を確認
~健診等の経年データとの掛け合わせで、より精度の高いパーソナライズが可能に~
トピックス
2024年1月18日
株式会社NTTデータ
株式会社NTTデータ(以下、NTTデータ)は、食のパーソナライゼーションの実現に向けて現在提供中のFood&Wellness®「500人PoC環境サービス」注1において、NTTデータ社員(以下、社員)から収集した845名分の遺伝子データの信頼性を実証しました。株式会社ジーンクエスト(以下、ジーンクエスト)が保有する5万人以上のデータとの比較や、先行論文との再現性検証を実施した結果で、一般データとして取り扱えることを意味します。
NTTデータが提供する「Health Data Bank®」注2の経年の健康診断データと、個人の体質や性質等の生涯不変な遺伝子データと掛け合わせることで、より精度の高いパーソナライズが可能になります。今後、食や健康に関する、ひとりひとりに合ったパーナライズ・サービスを提供し、ヘルスケア関連事業において2030年までに、累計売り上げ300億円規模の事業を目指します。
NTTデータは、多角的な健康関連データの提供を通して、企業の健康データ活用によるウェルネスサービスの提供を促進し、生活者のウェルビーイングの実現に貢献していきます。
背景
昨今、健康に配慮した機能性食品や飲料のニーズが高まり、食品企業等の研究開発時において食にまつわる個別最適化されたデータ活用の重要性が高まっています。個人を把握する重要な因子の1つが遺伝子データです。研究では、食に対する行動と、行動結果に対する体格(BMI)との関連性など、食に関連する複数の研究が実施されています。しかし、遺伝子データと食品や食習慣の関連についてはいまだ不明な点が多く、特に日本人を母数とした研究が少ないことから、さらなる研究の必要性が求められています。注3
今回NTTデータは、Food&Wellnessプラットフォームの取り組みに参加する社員1,034名のうち、同意を得た社員に対してジーンクエストの遺伝子解析サービス「ジーンクエストALL」注4で検体採取・遺伝子解析を実施し、健康診断データとの連携ができる845人分の遺伝子データを有効データとして収集しました。
これらのデータの信頼性を検証するため、ジーンクエストが保有するデータとの比較および先行論文との再現性検証を実施しました。
検証概要
収集した遺伝子データを以下2つの観点で分析し、データの信頼性を検証しました。
- (1) ジーンクエストが保有する5万人以上の遺伝子型頻度注5の割合との同等性
- (2) 遺伝子型と健康診断データが関与する2つの先行論文との再現性
検証結果
遺伝子型頻度の割合
ジーンクエストが保有する5万人規模の遺伝子データと、NTTデータ社員845名の遺伝子データの独立性分析を実施したところ、39個の遺伝子多型のうち38個は双方のデータに差がなく、類似性が確認できました。
これにより、NTTデータが保有する遺伝子型頻度の割合について一般可能性、すなわち一般データとして取り扱えることが示されました。
データベース信頼性分析結果(1)(脂質代謝遺伝子型と健康診断の中性脂肪値の相関性分析)
公表されている先行研究注6における、脂質代謝遺伝子型と、健康診断結果のトリグリセリド(中性脂質)の関連性を再現する検証として、脂質代謝遺伝子(rs651821)型を以下3つに分け、健康診断結果におけるトリグリセリド値(中性脂肪値)との相関性分析を行いました。
NTTデータ社員における遺伝子型ごとの人数
- CC:肥満型に多く血中脂質濃度が特に高いタイプ(341人)注7
- CT:肥満型に多く血中脂質濃度が高いタイプ(368人)
- TT:標準型に多いタイプ(91人)
結果、血中脂質濃度が標準型の群(TT)と、血中脂質濃度が高い群(CC・CT)の間には、明確に差があることが示されました。
データベース信頼性分析結果(2)(アルコール代謝遺伝子と血糖値の関係)
公表されている先行研究注8を基に、アルコール代謝遺伝子と血糖値の関係について同等性評価分析を行いました。BMIが正常範囲内(21~25 kg/m2)の男性社員141人を抽出し、アルコールに強い遺伝子多型グループ(ALDH2 rs671G/G)とその他の遺伝子型のアルコールに弱いグループ(53名)に分けて代謝的特徴を比較しました。
結果、アルコールに強いグループではアルコールに弱いグループと比較して、飲酒量が多く、空腹時血糖値が有意に高い結果となり、先行研究と同等の結果が示されました。
今後について
今回の検証により、収集した社員845人の遺伝子データについて5万人以上のデータとの相関性を確認でき、一定の信頼性を実証しました。今後さらなる信頼性担保に向けて残りの遺伝子型についても分析を行います。
Food&Wellnessプラットフォームは、健康診断結果やバイタルデータ、睡眠データなどの多様な経年データと、一生涯不変な遺伝子データ掛け合わせることができる希少性の高いデータベースです。
今後、食品企業をはじめとする消費財メーカーや研究機関にデータを提供し、ヘルスケア関連事業全体で2030年までには300億円の売り上げを目指します。
NTTデータは今後、多角的な健康関連データの提供を通して、企業の健康データ活用によるウェルネスサービスの提供を促進し、生活者のウェルビーイングの実現に貢献していきます。
また、2024年7月にAREA品川にて開業予定であるスリープテックホテル注9において、遺伝子検査・解析サービスを体験できるプランなども構想をしています。睡眠データや遺伝子データ等、ご自身のウェルネスデータを知ることのできる新たな宿泊体験の提供を目指します。
NTTデータが描く食品業界の未来
NTTデータは、業界・技術のForesight起点で未来を構想し、共創パートナーとしてお客さまの成長とビジネス変革を実現していきます。
食品業界においては、消費者の健康意識への高まりを背景に、パーソナライズ化/デジタル化が進む生活者接点領域を中心に、国内のみならず世界の動向を調査することで食の未来を予見・創造し、「食✕テクノロジー」で食品メーカーとともにデジタル化を推進していきます。
栄養遺伝学(ニュートリジェネティクス)専門家のコメント
栄養科学研究所では、長年にわたり埼玉県坂戸市と共に遺伝子対応栄養指導を実践し、その健康効果を実証してまいりました。しかし、残念ながらわれわれのようなプレシジョン栄養学(個別化栄養学)の実践を行っている施設や自治体は、他にありません。NTTデータのプラットフォームは、食の健康への影響を経年的に解析可能であること、遺伝学的に一般的な日本人であることが確認されている点でとても有用です。さらに、対象者の平均年齢が若い点も魅力的で、探索的な関連解析から介入試験まで、自由度の高い画期的な研究が実施可能です。このプラットフォームを活用した研究成果は、プレシジョン栄養学の発展に貢献することが期待できます。
女子栄養大学 栄養科学研究所 客員研究員 五十嵐麻希氏
株式会社ジーンクエストについて
2014年に国内で初めて大規模遺伝子解析サービスを一般消費者向けに展開。生活習慣病など疾患のリスクや体質の特徴など350項目以上におよぶ遺伝子を調べ、病気や形質に関係する遺伝子をチェックできるサービスを提供しています。遺伝子の研究を推進し、正しい使い方を広め、人々の生活を豊かにすることをビジョンに掲げ、蓄積されたゲノムデータを活用し研究活動を積極的に行っています。今後も、共同研究パートナー企業、研究者とともに、サービスと研究のシナジーを創出し、新たな価値の創出を目指し実現してまいります。
企業サイト:https://genequest.jp/注釈
- 注1NTTデータは今後拡大するWellness市場×パーソナライゼーションの進展を見据え、生活者の健康情報を活用したFood & Wellnessの取り組みに注力しています。「Food & Wellnessプラットフォーム」サービスでは、NTTデータ社員約1200人(2022年7月時点)の健康データを活用することで、新規事業や新規マーケティング施策の有効性を確認するPoCを速やかに実施できます。(2021年11月より提供開始)
- 注2Health Data Bankは、NTTデータが提供する健康管理サービスです。2020年11月末時点において、現在約2,000団体400万人以上の健康管理に活用されています。産業保健の業務に必要な機能とともに、生活習慣病や休職等に関するリスクをAIで予測する機能、組織ごとの健康状態を可視化する健康経営ダッシュボード機能等を提供しています。
- 注3GWAS of 165,084 Japanese individuals identified nine loci associated with dietary habits
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31959922/ - 注4ジーンクエストが提供する、健康リスクや体質の遺伝的傾向、祖先のルーツを知ることができる遺伝子解析サービス。
- 注5「遺伝子型頻度」とは、特定の遺伝子型がある集団内でどのくらいの割合で存在するかを示す値です。遺伝子型頻度は人種によって大きく異なることが分かっており、例えばヨーロッパ集団、アフリカ集団、日本集団などで大きく異なることが知られています。
- 注6Triglyceride-raising APOA5 genetic variants are associated with obesity and non-HDL-C in Chinese children and adolescents
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24903888/ - 注7CCとCTの区分は下記論文を参考に規定しています。
Zhu WF et al.(2014)“Triglyceride-raising APOA5 genetic variants are associated with obesity and non-HDL-C in Chinese children and adolescents.” Lipids Health Dis. 13:93. - 注8アルコールに強い人が糖尿病になりやすいメカニズムを明らかに
https://www.juntendo.ac.jp/news/00163.html - 注9アレア品川に睡眠解析ができる最新鋭のスリープテックホテルを開業
https://www.nttdata.com/global/ja/news/topics/2023/120602/
- 「Food&Wellness」は日本国内における株式会社NTTデータの登録商標です。
- 「Health Data Bank」は日本国内における株式会社NTTデータの登録商標です。
- 文中に記載の商品名、会社名、団体名は、各社の商標または登録商標です。
本件に関するお問い合わせ先
株式会社NTTデータ
第二インダストリ統括事業本部
食品・飲料・CPG事業部
Food&Wellness担当
E-mail:fwsales@kits.nttdata.co.jp