「秘匿化実行・可搬実行技術」を確立し、高機密なデータの安全な連携を実現
~商用利用時に想定されるデータ量の増加にも柔軟に対応~
トピックス
2025年3月26日
株式会社NTTデータグループ
株式会社NTTデータグループ(以下:NTTデータグループ)は高機密データを安全に企業間連携するために必要となるデータおよびアルゴリズムの「秘匿化実行・可搬実行技術」を確立しました。
高機密データの企業間連携においては、データの所有者間で本来秘匿したい情報が見えてしまうリスクや、異なる所有者が分散管理するデータを即座に取得することが難しいなどの課題があります。今回確立した技術を用いることで、データやアルゴリズムを所有者以外に秘匿したまま安全に集約および処理し、計算結果のみを利用者へと返却することが可能となります。また、異なる所有者が分散管理するデータを仮想的に統合注1し、必要な時にのみ実データを鮮度高く転送することが可能となります。これにより、高機密データの企業間連携の障壁を取り払い、企業横断・業界横断のデータ連携の実現を加速させることができます。
なお、確立した技術は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下:NEDO)からの受託事業注2の中で開発および検証による有効性の確認を行ったものです。
今後、NTTデータグループは、確立した技術を用いて企業間データ連携を支えるサービス創出に取り組み、企業を横断したデータ活用の推進を加速させ、社会課題の解決に寄与します。
背景
近年、企業が保有するデータを他企業の相手と共有し、業界や社会としての課題解決や付加価値創出を目指す動きが活発化しており、複数の企業や組織が互いに信頼しながら自由かつ安全にデータを共有できる基盤としてデータスペースなどへの注目が高まっています。一方で企業が保有する顧客情報や企業秘密など高機密な情報は他社へ開示できないものも多く、データ連携の障害の一つとなっています。また、データ活用においては、所有者が異なるデータを連携して分析等を行う場合、対象データを複製して一か所に集めることが一般的ですが、データの管理コストや鮮度維持が難しいなどさまざまな課題があります。このような背景から、NTTデータグループは企業間データ連携の実現に向けて必要となる技術の開発に従前より継続して、取り組んでいます。
概要
NTTデータグループは、高機密データを安全に企業間で連携・活用できることを目指し、下記の先進技術を開発しました。本技術は、NEDOからの受託事業の中で開発および検証を行い、有効性の確認ができています。
- 秘匿化実行技術
秘匿領域と呼ばれる他者からのぞき見ることのできない隔離環境上に、所有者が異なるデータおよびアルゴリズムを集め計算処理した後、計算結果のみを利用者へと返却することで、データ提供から計算結果の受領まで一貫してデータの秘匿性が担保される秘匿化実行技術を開発しました。秘匿領域内外への通信は暗号化されるため、本技術を用いることにより、例えば精度の高い予測モデルを構築するために膨大な学習データを要するが、自社で保有するデータのみではサンプル数が十分ではない、一方で他社からデータ提供を受けようにも情報開示の観点で壁があるという場合であっても、安全なデータ連携ができるようになります。 - データ可搬技術
異なる所有者が分散管理するデータを仮想的に統合し、必要な時にのみデータの実体へのアクセスおよび処理を行うことができるデータ可搬技術を開発しました。本技術により、データの提供者および利用者間で事前に合意したポリシー(例えば「企業Aと企業Bのデータに対して企業Cのアルゴリズムを実行できる」というようなルール)の管理機能を具備しており、データへのアクセスから処理、データ保持・管理等のデータライフサイクル全体に対して、ポリシーへの準拠を強制します。これにより、さまざまな組織のデータを用いた分析を行いたいが、組織ごとに分散保持するデータが大量で、一か所に複製して管理するには手間とコストがかかることに加え、元データに合わせて複製したデータを常に最新化しておくのは難しいという場合においても、コストを抑えつつ即座に鮮度の高いデータへとアクセスすることができます。 - アルゴリズム可搬実行技術
アプリケーション提供者が機器構成やOS、フレームワーク等に依存しないJAR形式注3のアプリケーションロジック(アルゴリズム)を用意さえすれば、それをクラウド環境オンプレミス環境問わず、システム側で動的にビルド注4および実行可能にするアルゴリズム可搬実行技術を開発しました。本技術を用いることにより、例えば企業Aが運用する大量のシステムに対して監査を目的としたアプリケーションを実行したいが、システムごとに動作環境がオンプレミス環境やクラウド環境など異なり、アプリケーションの実装修正やビルドに時間がかかるという場合であっても、動作環境ごとの修正を必要とせず即座に動作させることができるようになります。
また、これらの技術はデータ量の増加が発生するユースケースでの実証実験において、柔軟にスケールアウトできることを確認できました。
実証実験について
2050年のカーボンニュートラル実現に向けたDER(分散型エネルギー源)注5の導入拡大により、小売電気事業者の需要予測が複雑化し、結果としてインバランス料金注6が増大する課題があります。これらの課題を解決するため、電力業界における複数小売電気事業者のデータ連携による需要予測精度向上をユースケースとした実証実験を行いました。本実証実験においては、総数が数千万個のDERに対し、毎時間数TBの大量のデータが流れ、データ量が増大する条件下においても、確立した技術がスケールアウトし有効に動作することを確認できました。

図:実証実験のターゲットユースケース(小売電気事業者間のデータ連携による需要予測精度向上)の概要
今後について
NTTデータグループが今回確立した技術は、弊社が提供するクラウドサービス「OpenCanvas®」上で動作することを確認しております。今後は動作可能な環境および取り扱い可能なデータ形式を拡充しながら、企業間データ連携やデータ活用が安全かつ活発に行われる社会の実現を目指し、2025年度中に確立した技術を用いた企業間データ連携を支えるサービス創出を進めます。
注釈
- 注1 データを物理的に移動もしくは複製せずに、複数の異なるデータソースを統一的、かつ、一貫性のあるビューとして提供することです。
- 注2 本開発は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」(JPNP20017)の委託事業によって実施しています。
- 注3 Javaプログラムで使用されるファイル形式であり、複数のJavaクラスファイルや関連リソースを1つの圧縮ファイルにまとめたものです。
- 注4 ソースコードをコンパイルし、実行可能な形式に変換することです。
- 注5 太陽光発電や蓄電池などエネルギー利用者である需要家が分散して保持するエネルギー源のことです。
- 注6 電気の実需給と計画値の差に応じて発電事業者や小売電気事業者が支払うペナルティのことです。
- 「OpenCanvas」は日本国内における株式会社NTTデータの登録商標です。
- その他の商品名、会社名、団体名は、各社の商標または登録商標です。
参考
関連するニュースリリース(2023年2月17日)
円滑・安全なデータ流通の実現に向けたデータ連携技術に関する研究開発を開始
~NEDO公募「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/ポスト5G情報通信システムの開発/高機密データ流通技術の開発」に採択~
https://www.nttdata.com/global/ja/news/information/2023/021700/
関連する記事(2024年4月5日)
企業間データ連携の安全性を高める秘匿処理技術
https://www.nttdata.com/jp/ja/trends/data-insight/2024/0405/
NTT DATAのデータスペースに関する取組み
https://www.nttdata.com/jp/ja/services/dataspace/
本件に関するお問い合わせ先
株式会社NTTデータグループ
技術革新統括本部
Innovation技術部
濱野、金子、葛西、十亀
株式会社NTTデータ
第一公共事業本部
パブリックサービスデザイン事業部
武田、西端