大塚製薬の国内6工場に医薬品の出荷判定業務を支援するシステムを導入
~出荷判定に関する情報を一元管理し、業務効率化と信頼性向上をめざす~
報道発表
2023年4月11日
株式会社NTTデータ
株式会社NTTデータ(以下:NTTデータ)は、大塚製薬株式会社(以下:大塚製薬)の医薬品製造プロセスにおける出荷判定業務を支援するシステムを開発しました。2023年4月から国内6箇所全ての医薬品製造工場で本格運用を開始し、人的情報収集の作業時間削減を支援します。
本システムは、2021年8月に16年ぶりに改正された関連省令(GMP省令注1)の中で示される、医薬品製造における高い品質保証水準に対応するものです。統合型プラットフォーム「ServiceNow®」注2を活用して社内の複数ITシステムを連携し、出荷判定製品のロットにひもづく製造記録や品質試験記録の照査結果等、品質に影響する各種イベント情報を一元管理します。
これまで、大塚製薬の出荷判定を行う品質保証部門では、工場や製造管理部門など複数の組織が所掌するシステムや記録から90以上の情報を手作業で調査/確認する必要がありました。このたび、出荷判定に必要な情報が一つのシステムに集約されたため、煩雑な確認業務の負荷を軽減することで、人的なミスを防ぎ、信頼できる医薬品をより確実に出荷することが可能になります。
NTTデータは、今後も本システムの機能を拡充することで、製薬業界の業務効率化と信頼性向上に貢献していきます。
背景
製薬会社は、より良い医薬品を医療機関や患者さんへ提供するため、医薬品の品質や有効性および安全性を保証しています。そのため、品質保証部門は製造/試験に関する記録を照査し、これらの過程で発生した逸脱管理/変更管理等が適正に処理されたことを精査して、多方面から品質を保証した上で医薬の出荷可否を判定しています。
当該業務は、安全で信頼できる製品を市場に出荷する上で欠かせないプロセスであり、原薬製造所/製剤製造所からの出荷、および最終包装製品の市場出荷においてそれぞれの出荷可否判定が行われ、品質保証情報が受け継がれていきます。特に、製造過程での製造記録や品質試験の記録などは、結果のみならずデータの信頼性保証の観点から、数十のチェック項目に対して照査が行われています。また出荷する製品に対して、影響する逸脱管理/変更管理の有無を調査し、影響がある場合は適正に措置済であることの確認が必須となっているため、品目数が多くなれば、その管理は煩雑となります。
さらに、2021年8月にGMP省令が16年ぶりに改正され、経営陣の責務、品質保証部門の業務、製造所からの出荷の管理、データインテグリティ、変更管理/逸脱管理等について、より具体的に言及されています。その結果、医薬品の製造管理および品質管理を行うための「実行性のある医薬品品質システム」の構築が必要となりました。製薬業界における品質保証業務は、改正GMP省令やグローバル市場への拡大を契機とした海外規制への対応のため、これまでよりもさらに高い水準が求められています。
出荷判定業務支援システムの概要
こうした背景から、NTTデータは大塚製薬と共同で出荷判定の業務負荷を軽減し、より高い水準での品質保証が確実に実施できるように対応したコンピューター化システム注3を開発しました。
本システムは、社内の複数ITシステムを連携し、出荷判定製品のロットにひもづく製造記録や品質試験の照査結果、さらには逸脱管理/変更管理、OOS注4といった品質情報も含めて一元的に管理するプラットフォームです。本システムを導入することにより、出荷判定業務における確認作業の確実性を向上させ、一元管理による情報収集作業の効率化を実現しています。必要な情報をすぐに検索して閲覧できるだけでなく、出荷判定に関わる各業務の従事者が同じプラットフォームにアクセスできるため、部門を横断する業務でもプラットフォームを介して完了させることができます。さらに出荷判定製品の関連情報を集約し、一気通貫の業務が可能となるため、製造プロセスの透明性向上につながり、属人的な作業から脱却することでヒューマンエラーの抑止にも貢献します。
大塚製薬では本システムを国内6箇所全ての医薬品製造工場に導入し、2023年4月から製品に関わる出荷判定業務で本格運用を開始しています。
本システムはヘルスケア領域で多数の実績を持つServiceNowを活用し、医薬品の安全性を守るための規制注5を順守するためのユーザービリティやセキュリティーを考慮した設計となっているのが特長です。また、既存のシステムに大きく手を加えずに連携をしているため、現行業務への影響を最小限に留めています。加えて、ローコード/ノーコード注6での開発を実現しているため、今後の法改正やシステム改良へ柔軟に対応できる仕組みとなっています。
今後について
今回の出荷判定業務支援システムを通して、品質保証の確実性向上および業務の効率化に加え、医薬品の製造過程の透明性を確保し、信頼できる医薬品を医療機関や患者へ届けることが可能になります。NTTデータは今後、製薬業界における出荷判定業務の支援に必要な基本機能を備えたサービスとして、クラウド経由で提供します。製薬企業の同様の課題解決を通じて、業界全体の業務効率化、より安心な医薬品の流通に貢献します。
NTTデータのServiceNowの取り組み
NTTデータはライフサイエンス・ヘルスケア領域を含む、国内最多のServiceNowの導入実績を有しています。また、2021年1月にServiceNowに関する専門事業組織を設置注7し、同年3月にServiceNowのCreator Workflow Awardを受賞注8しました。現在、ライフサイエンス・ヘルスケア領域のお客さまにおいてもServiceNowを活用した多数のシステム構築実績があります。
NTTデータが描く製薬業界の未来
NTTデータは、業界・技術のForesight起点で未来を構想し、共創パートナーとしてお客さまの成長とビジネス変革を実現していきます。医療・ヘルスケア業界では、行政・民間企業などが一体となって、患者中心の医療の実現に取り組んでいます。NTTデータは、製薬企業の事業全体のデジタル化を支援し、医薬品開発のスピード向上と、ヘルスケア分野のサービス創出という領域拡大を同時に実現することを通じて、患者中心の医療体験変革に貢献していきます。
業種別ソリューション ー 製薬・ライフサイエンス https://www.nttdata.com/jp/ja/industries/lifescience/
注釈
- 注1 正式名称は「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令」
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注2
ServiceNowとは、米ServiceNow社が提供する、従業員と企業双方に優れたエクスペリエンスを生み出し、生産性を高めるデジタルワークフローを提供するクラウド型プラットフォームとソリューションです。
ServiceNow Japan合同会社:https://www.servicenow.co.jp/ - 注3 「コンピューターシステム」と「業務プロセス」を統合したものとして、「コンピューター化システム」と定義しています。本コンピューター化システムは、GMP省令に基づいて、医薬品等の品質確保のためのコンピューター化システムバリデーション(CSV)を実施しています。
- 注4 「Out of Specification」の略で規格外試験検査結果のこと。
- 注5 医薬品の製造販売業者は、厚生労働省令である「GMP省令」や「医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療機器の品質管理の基準に関する省令(GQP省令)」等に基づいて、製薬や医療に関わるコンピューター化システムを対象としたバリデーションの実施が要求されます。
- 注6 プログラムコードを書かない、または少ないコードでアプリケーションを開発することです。従来のプログラミング言語に関する知識を開発者に求めるのではなく、ビジュアル開発アプローチを提供することで開発者だけではなく非開発者も効率的にアプリケーションを作成して生産性を向上させることを目的としています。
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注7
ServiceNowに関する専門事業組織の設置について
https://www.nttdata.com/jp/ja/news/release/2020/121400/ -
注8
NTTデータがServiceNowのCreator Workflow Awardを受賞
https://www.nttdata.com/jp/ja/news/information/2021/032500/
- その他の商品名、会社名、団体名は、各社の商標または登録商標です。
本件に関するお問い合わせ先
報道関係のお問い合わせ先
株式会社NTTデータ
広報部
田中
TEL:080-1724-5429
製品・サービスに関するお問い合わせ先
株式会社NTTデータ
インダストリ統括事業本部
製薬・化学事業部
大辻 惇史
TEL:080-1052-7180
E-mail:Atsushi.Otsuji@nttdata.com