ウェアラブルデバイスの登場
身に付けるタイプのコンピューターであるウェアラブルデバイスが注目を集めています(図1、2)。メガネ型のコンピューター(スマートグラス)であるGoogle Glassは発売が始まっていないにも関わらずメディアを賑わしており、Samsung、SONYは腕時計型のコンピューター(スマートウォッチ)を多数発売しています。AppleもiPhoneと連携可能なApple Watchを来年発売する予定です。
図1:Vuzix社のスマートグラス M100
図2:Apple社のスマートウォッチ Apple Watch
さまざまな活用
スマートグラスは手を使わずに音声やジェスチャーによる操作が可能で、常に見ることができるディスプレイと目線と同じ向きのカメラがついていることから、街歩きにおけるナビゲーション、映画での同時通訳、遠隔地にいる作業者とのコミュニケーション、作業の記録などさまざまな用途が提案されています。スマートウォッチは常に身に付けることができるため、連携するスマートフォンへの着信・通知の確実な把握、タスクリストを簡便に確認するなどの利用が期待されています。
アイデンティティとしてのウェアラブル、ウェアラブルのアイデンティティ
活用が検討されているウェアラブルデバイスですが、一見関係が無さそうなアイデンティティとウェアラブルデバイスには実は大きな関係があるのです。
関係のひとつは、利用者を認証するためのデバイスとしてウェアラブルデバイスを用いる「アイデンティティとしてのウェアラブルデバイス」です。通常情報システムを利用する際の利用者認証にはID/パスワード、ICカード、指紋/静脈などが利用されてきましたが、ウェアラブルデバイスを身に付けていることで利用者を認証する技術が登場しています。Android 5.0に搭載された「スマートロック」では、ウェアラブルデバイスを身に付けていることでスマートフォンのロックを解除することが可能になります。スマートフォンを紛失、置き忘れた場合、ウェアラブルデバイスとの通信の断絶を検知して、ロックが行われます。
もうひとつの関係は、ウェアラブルデバイスの利用者をどう認証するか、という「ウェアラブルデバイスのアイデンティティ」です。ウェアラブルデバイスは身に付けており、紛失や盗難の可能性は少ないことから、スマートフォンが備えるロック画面が搭載されていません。ロック画面、ログイン画面を作る際にも入力手段がジェスチャー、音声など盗み見、盗み聞きが容易な手段に限られているため、暗証番号のような機密性を必要とする情報の入力には適していません。ウェアラブルデバイスの利用者をいかに認証するかはウェアラブルデバイスの業務活用を進める上で重要な課題です。
NTTデータの取り組み
NTTデータはウェアラブルデバイスとアイデンティティに関わる課題に取り組んでいます。取り組みのひとつとして、ウェアラブルデバイスを用いて仮想的な暗証番号を入力することで利用者を認証するソリューションを構築しました(図3)。このソリューションでは、利用者が身に付けているスマートグラスにキーパッドの配列が表示されます。利用者はこの配列に従い、何も記載されていないキーパッドを用いてATM、KIOSK端末などへ暗証番号を入力します。スマートグラスの画面は本人以外見ることができませんので、スマートグラスを持っている人のみ正しい暗証番号を入力することができ、仮にキーパッドへの入力を盗み見られても暗証番号が漏れる心配はありません。
図3:仮想PIN入力
また、ウェアラブルデバイス利用者の認証を行うAR認証技術を開発しました。スマートグラスに表示されたピンパッドに対して指をかざすことで暗証番号の入力が可能となります。この技術もピンパッドの配列は本人以外見ることができませんので安全に暗証番号を入力することが可能です。本技術はITpro EXPOに出展して大好評を博しました。
図4:AR認証
図5:ITpro EXPO 2014の様子
NTTデータでは、お客様業務におけるウェアラブルデバイスの活用方法の検討とともに、導入時に発生が予想されるセキュリティ課題の解決を目指しています。