知的活動に進出するAI
画像認識で頭角を現した第三世代のAIは、言語処理を中心にさらに強化を続ける一方で、人の知的活動を真に支援するといった次の段階にも向かい始めています。
AIは、より知的な作業である自然言語処理においても目覚ましい進化を遂げています。インターネット上の膨大な言説をそのまま取り込み、言語のルールを学習し、一部では人を超えるレベルで言葉を扱う様々な処理を実現するAIが2018年末に登場しました。この成果に刺激を受け、より多くの学習データ・より強力な計算力・より効率的なアルゴリズムが日々生み出され世界的な開発競争が続いています。
しかし、人に近づいたとされるAIには課題も多く存在しています。汎用性が無く利用目的毎につくるしかない。毎回一から学ぶため効率が悪い。学習データの量と質に依存するため、少数のデータしかない未知の領域では使えない、といった課題です。
そこで現代のAIが持つ限界を超え、人のように考える、ゆえに人の思考を真に支援できるAIを生み出す挑戦が続いています。人間の子供が世界を学ぶように、知識を積み重ね、会得した知識を他の領域で援用し、仮説と検証を繰り返して新たな法則を見いだすようなAIです。脳が持つ柔軟性を学び、援用する技術開発は今後さらに拡大していくでしょう。
AI共存社会の加速と課題
AIという「判断する機械」を活用する場面の拡大を目指し、その利用をより容易にする様々な技術が提供される一方で、身近になるAIがもたらす課題もまた広く認識されはじめ、その対応の具体化が求められています。
手軽にAIを活用できるツールの充実が著しい昨今、簡易にAIを知り、使い、本格的に学べる無償のツールが、インターネットに接続するだけで利用できます。特殊な装置やソフトウェアはクラウドが吸収し、ノウハウや知識は実践的に提供され、専門的で複雑な試行錯誤は自動化が進んでいます。人々が日々の仕事や生活で蓄えた知識や判断をAIに教え込み活用する未来に向けた技術進化は着々と進んでいます。
しかしその先にある人とAIの共存社会、機械に人の判断を一部代替させる世界では、AIの特性から生じる様々な課題もまた拡大します。その一例に、想定外の差別を生む、判断根拠を説明できない、ある種の攻撃で判断を誤るといった課題への対応があげられます。
急速な技術発展と普及に反して、AIそのものの善し悪しを判断する基準や、利用に当たって注意すべき観点は、具体的に定まっていません。ようやく出揃ったAI利用の原則を、さらに現実的な対処の基準、具体的な行動指針に落とし込む作業が、喫緊の課題となるでしょう。
- (※1)NTT DATA Technology Foresight」公式サイト
- http://www.nttdata.com/jp/ja/insights/foresight/sp/index.html