NTT DATA Technology Foresight2021シリーズの第二回は、技術トレンドから進化を止めないAI・複雑化するIT基盤の2つをまとめています。
進化を止めないAI
AIの進化は巨大化による性能向上、学習方法といった基礎技術の革新、さらにその根本課題の解決にむけた取り組みが続き、より汎用的な知能を目指しています。
自然言語処理では、AIの構成部品であるパラメータの数を増加させることで、AIの性能を向上できることが証明されました。最新のAIであるGPT-3は1750億のパラメータを持ち、その文章力はAIが書いた文章だと人が判別できないほど向上しています。さらに、新たに学習せずに翻訳や要約といった多様な文章を生成し、すでにその成果は広く活用されているのです。巨大AIの開発競争は今後も激化することが予想されますが、その一方で、その開発ノウハウは一部の企業が独占する傾向が始まっています。
画像AIの分野では学習方法の進化によりAIの活用方法が変わりつつあります。従来、画像AIの学習では、人がお手本を示した「教師データ」が必要でした。新たな学習方法である「自己教師あり学習」では、「教師データ」を必要とせず、与えられた画像からAI自らが手掛かりを探し学習を行います。人手によって大量の教師データを用意することはAI活用の課題でしたが、自己教師あり学習によってこの課題が解決されるでしょう。
学習したデータ以上のことができないというAIの根本課題解決に向けた取り組みも成果を出し始めています。「自ら試行錯誤する」、「学習したこと以外にも対応できる」、「因果関係を推論する」、といった課題解決のアプローチが行われ、より人間らしい汎用的な知能を持つAIの実現を目指そうとしているのです。今後もAIはその進化を止めることはなく、あらゆる技術の基礎として革新を起こしていくでしょう。
TT02 複雑化するIT基盤
ITを支えるチップやネットワークといった基盤技術は、より複雑さを増しながらも、継続的に性能向上を続けます。近年はIT基盤における優位性確保が企業の競争力に直結する傾向がさらに強まり、クラウドベンダのみならずサービス提供企業もこうした技術の自前開発に参入しています。新たなサービスが実現する時期を占う意味でもこのITインフラ技術の主導権の変化と動向には注目すべきでしょう。
半導体チップの進化は止まりません。製造技術の微細化は5nmプロセスに達し、更なる性能と省電力がもたらされました。またムーアの法則3ページ目といわれるチップ重層化などの「後工程」技術、新材料の発見や活用をめぐり生き残った数社の製造企業が競争を続けます。一方、プロセッサ「設計」は製造と分離され、参入障壁が下がり、サービスやAIを専門とする企業が活躍しています。彼らは、独自のソフトウェアノウハウに加え、膨大なユーザから得たプロセッサの利用シーン=システム利用傾向をインプットに、最適なチップを設計し、世界を席巻しています。そしてネットワーク技術は、オープン化が進む5Gの展開のみならず、衛星インターネット、低出力なメッシュネットワークなどが次々と実用化され、用途毎に組み合わされ、複合的に利用する形態に移りつつあります。こうした複雑なネットワーク構成がパッケージ化され、クラウドの一部としてサービス提供される日も近いでしょう。
このようにIT基盤は、サービスとインフラの垂直統合のさらなる進展が進みます。果てしない技術の高度化に必要な資金力を支えるのは、巨大なユーザベースを持つサービス提供企業です。そしてその膨大なユーザから収集されるベストプラクティスが、最適な設計や運用ノウハウにフィードバックされる好循環は当面続いていくでしょう。